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「随分、遅かったんだな」
待ち合わせ場所の時計台に凭れ掛かる背の高い見慣れた姿を発見してほっと息をつく薫に、相手はそう言って手を上げた。
「ごめんなさい。なかなか会議が抜けられなくて……」
どれ程待たせてしまっただろうか? 思わず時計を見る。
「嘘……」我知らず、声が漏れた。約束の時間は午後七時。時計の針が指す現在時刻はと言えば――午後十時。その差、三時間。
会議が長引きそうな気配を見せた時、既に連絡は入れてあった。後は終わる迄、連絡も出来ないだろうから、待てない様なら先に帰っていい、とも。
短気な彼の事だから、きっと疾うに帰っているだろう、そう思いながらも終わり次第、取りも直さずこうして駆けて来たのだが……真逆、こんな時間迄、待っていてくれた?
薫の胸に、嬉しさよりも、何かしら不安が込み上げてくる。
何か……変。
何か違和感を感じる。そしてそれは薫自身にも。
「私……何でこんな時間に、来ちゃったんだろう?」その場に脚を止めて、彼女は呟いた。「帰っちゃったかも……ううん、きっと帰っちゃったと思ってたのに、携帯で確かめもせずに……。携帯……そうだ、携帯にメールが……」
慌てていて、禄に確認しなかったけれど――薫は携帯を取り出し、フラップを開いた。
メール着信、二件。差出人はどちらも今、彼女に向かって手を振っている、彼だった。
先着メールを開けて見れば、そこには短く「先に帰る」の一言。時刻は七時十五分。
では……あそこに居るのは……?
不審に思いつつ、一通目の直後、七時十七分に着信した二通目のメールを開ける。
やはり短く一言だけ――「先に行く」
携帯から顔を上げた時、夜の街にはもう、背の高い見慣れた姿はなかった。
只、その背に隠されていた時計台の一部破壊された土台と、辺りを行き交う車のライトに照らし出された、周囲を囲う黄色いテープが、そこで何かがあったのを、教えてくれていた。
「待ってて……くれたんだね」
急ぎ、彼の自宅に連絡し、突っ込んで来た暴走車により彼が命を落としたのだと知り、薫は涙した。
事故が起こったのは七時十六分。もう少し早く、この場を離れていてくれたら……。
「待っててね……」薫は呟いた。「いつになるか解らないけれど」
きっと彼は待っていてくれる、と薫は信じた。
彼は「先に行く」と言ったのだから。
―了―
今日のメンテは長かった~(--;)
予定時間終わってもなかなか入れないんだもん。回線トラブってったらしいけど。
本当、、交通事故には注意!
男女が出て来ると哀しい結末になる確率高い気がする(^^;)
何でだ、私☆
あの世では……待つならのんびりじっくりで(笑)
一番安全な場所って、何処だろう?