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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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 久し振りに鉄道を利用したのは、ちょっとしたイベントに興味を持ち、覗いてみようと思ったからだった。会場は街中の競技場だったが、駐車場を確保出来るかどうか心許なかったのだ。公共機関をご利用下さい、とも案内されていたし、偶にはハンドルを握る緊張感から解放された外出もいいだろう。
 車窓からは本当にのんびりと、景色を眺められるし。
 と、四人掛けのボックス席の窓側を陣取って、外を見ていた私は、奇妙な事に気付いた。
 駅に着く度に、ベンチの一つに猫が、座っているのだ。綺麗に姿勢を正し、じっと電車を見詰めて。然も、模様からして同じ猫が。

 最初は置物か思った。この路線では駅に同じ猫の置物を飾る事で、共通のイメージを作り出そうとでもしているのかと。
 だが、それは動いた。
 ごく自然な、何気ない動きで顔を洗い、欠伸したのだ。
 駅毎に同じ猫が一匹ずつ、ベンチに座っている?――そんな偶然が起こる確率はどんなものかと、私は首を捻った。
 これ迄通過した駅は五つ。そのどれにも、猫は居たのだ。もしかしたら、この先にも……?
「どうかされましたか?」対面に座っていた紳士が、私の様子を怪訝に思ったか、尋ねてきた。
「ああ、いえ……」確か四つ前の駅から乗ってきた人だな、ぼんやりとそう考えつつ、私は返事をする。「猫が……」
「猫?」
「気が付かれませんでしたか? 前の駅にも、その前の駅にも同じ模様の猫が居て……」
「ああ」紳士は破顔した。「あれは私を待っておるのですよ」
「え?」私は眉を顰めた。「えっと……貴方の飼い猫なのですか? 全部?」
「全部? いやいや、一匹ですよ。何処に居ようとも、同じたった一匹の猫ですからな」
「……」からかわれているのか、それともこの紳士、見掛けによらずボケ掛かっているのか?
「いやいや、ボケてなどおりませんよ?」私の考えを読んだ様に、彼は言った。「事実ですからな。あれは昔飼っていた猫で……今はああして私の行く先々で、待っておるのですよ」
「その……何の為に?」
 行く先々、それも電車での移動にさえも付いて来る猫――普通ではない。彼は昔飼っていたと言った。それは一体どれ程前の事なのか? あの猫は恐らく既に……。私の背筋を、冷気が駆け上った。
「捨てた私を恨んでおるのですよ。だから……私を待っておるのです。復讐する為に」
「はあ……」相槌を打ったものの、私にはあの猫がそんな事を企んでいる様には思えなかった。確かに電車をじっと見詰めてはいたが、その表情に険しさも恨みがましさもなかったのだ。
 その紳士は次の駅で降りて行き、私は怪訝な面持ちでそれを見送った。

 そして次の駅でも、猫はベンチに座っていた。
 さっきの紳士は何だったんだ……?
 そう思う私の耳に、くすくすと忍び笑いが聞こえてきた。そっと視線を巡らせれば、斜め向かいに座る、若い女性。彼女は私の視線に気付くと、小さく会釈した。
「さっきのお爺さん、ちょっと変な人でしたね」彼女は言った。確か、三つ前の駅から乗り合わせた人だ。「あの猫が復讐の為に自分を待っているだなんて。だったら、降りた後迄猫が居る訳ないじゃないですか。ねぇ?」
「そう言えば、あの猫、あの人が乗って来る前の駅から居ましたよ」私も曖昧に、苦笑を返す。
 くすくす……彼女は笑う。
「可笑しなお爺さん。あの猫は……私を待っているのに」
「は……?」思わず、呆けた様な声が出た。彼女が乗って来たのは三つ前。先の論法で言えば、乗る前の駅に迄、猫が居る訳ないではないか?
 それでも私は訊いた。何の為に、と。
「あの子は私が飼う筈だった猫なんです。小さい頃、公園に捨てられていたのを拾って帰って……でも、親に許して貰えなくて、泣く泣く手放した子……。今度こそ、私に飼って欲しいんだわ」
「……」私は思わず黙って、視線を逸らした。
 次の駅で彼女は降りて行き、猫は――その次の駅にも現れた。

 あの二人は一体、何だったのだろう?
 どちらもあの猫は自分を待っているのだと言い、しかしタイミングから言っても――もし本当に猫が誰かを待っているのだとしても――彼等の主張はおかしいのだ。
 あるいは、あの二人は誰かに、あるいは何かに待っていて貰いたかったのかも知れない。
 孤独からか、他に理由があるのか、私には解らないが。
 それが例え、妖しげな猫であっても。
「そうだな……」私は呟いた。「あんな猫が待っていてくれたら……」
 こんな天気のいい週末に、たった独りでイベントに出向いて時間を潰そうなんて思わなくても済むのかも知れない。
 私は、前の駅で女性と入れ替わりに乗って来て、猫に気付いて怪訝そうな顔をしている老婦人に言った。
「ああ、あの猫ですか……。あれはきっと……私が待っているんですよ」
 彼女が更に戸惑い顔になったのも構わず、私は窓外に視線を送り、ベンチに座る猫に目を細める。

 そう、私を、ではなく、私が――自分を待っていてくれる、何かを。

                      ―了―
 眠い……(--;)

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こんにちは♪
α~ (ー.ー") ンーーーーー!
猫は寂しい人にだけ見えるの?

しかし、各駅に猫がいるってのは良いかもネ♪
猫好きな人にとっては!嫌いな人には迷惑な
話だろうけどねぇ~(笑)
クーピー URL 2010/02/21(Sun)13:39:15 編集
Re:こんにちは♪
各駅猫!
普通の猫とか猫駅長なら、猫好きには嬉しいよね~♪
巽(たつみ)【2010/02/21 21:44】
こんにちは(^^)
幻でなければ
心(脳?)に直接見える猫?(笑)
実はみんな違う猫を見ていたりするんだろうね(^^)
つきみぃ URL 2010/02/21(Sun)13:44:13 編集
Re:こんにちは(^^)
ああ、そうかも知れません。
ある人には黒猫、ある人には白猫、更に白黒猫……。
人それぞれに求める何かが違う様に……。
巽(たつみ)【2010/02/21 21:46】
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