〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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あの場所では事故が多い――そんな話を聞き付けては出かけて行く。そんな暇人が、友人の中に約一名、居た。
尤もそれにつき合わされている辺り、僕も暇人なのかも知れないが。
今日出掛けたのは、そんな場所の一つ。通称「魔の交差点」だった。
苦笑が漏れる程在り来たりの通称で呼ばれるそこは、周囲に空き地も多い為一見只の見通しのいい直線道路の交わりだった。商店街の外れに位置し、幹線道路への連絡道路でもある所為か、通行量は結構多い。
「何も無いよなぁ」歩道から交差点の東西南北を見渡し、僕は言った。「信号が無いとは言え、道路幅も充分、見通しも良好、これでどうして事故が起きるんだろ?」
「それが不思議なんじゃないか」何を今更、という顔で応じたのは問題の暇人だった。潮勇人。
「じゃ、勇人は原因は何だと思うんだ?」
「それが解らないから不思議なんじゃないか」
毎度の会話だった。勇人はいつも自信満々にこれは不思議現象だと説く。僕は流石に、もっと現実的な理由を探そうとするんだけど……見付けるのは残念ながら僕じゃない。
「あー、またこんな所に居る」僕等の背後から掛かった声は、同級生の女子のものだった。
尤もそれにつき合わされている辺り、僕も暇人なのかも知れないが。
今日出掛けたのは、そんな場所の一つ。通称「魔の交差点」だった。
苦笑が漏れる程在り来たりの通称で呼ばれるそこは、周囲に空き地も多い為一見只の見通しのいい直線道路の交わりだった。商店街の外れに位置し、幹線道路への連絡道路でもある所為か、通行量は結構多い。
「何も無いよなぁ」歩道から交差点の東西南北を見渡し、僕は言った。「信号が無いとは言え、道路幅も充分、見通しも良好、これでどうして事故が起きるんだろ?」
「それが不思議なんじゃないか」何を今更、という顔で応じたのは問題の暇人だった。潮勇人。
「じゃ、勇人は原因は何だと思うんだ?」
「それが解らないから不思議なんじゃないか」
毎度の会話だった。勇人はいつも自信満々にこれは不思議現象だと説く。僕は流石に、もっと現実的な理由を探そうとするんだけど……見付けるのは残念ながら僕じゃない。
「あー、またこんな所に居る」僕等の背後から掛かった声は、同級生の女子のものだった。
「お前こそ何でいつもこういう所で出くわすんだよ、幸野」勇人が面倒臭そうに応じた。「また俺の楽しみを潰しに来たのか?」
「何が楽しみなんだか」肩を竦める幸野――幸野美幸。「事故で亡くなる人が居る様な所で不謹慎じゃない?」
それは僕もそう思う、と思わず頷く。
しかし、聞いてないのがこの男。
「今回は邪魔はさせんぞ。これだけ見通しのいい交差点で相次ぐ事故、奇妙だとは思わないのか?」
僕はそれにも頷かざるを得なかった。
「守野ってどっちつかずよね」そんな僕に幸野の一睨み。
そしてやはり周囲を見回して、一つ、頷いた。
「此処での事故ってさ、西側からの直進車と南側からの直進車の衝突事故が多かったわよね」
そう言って彼女が指し示したのは周りを空き地に挟まれた、見通しの良過ぎる道路。どちらから進んでいたとしても、互いの位置は丸見えだと思うんだけど、何故か彼女の言った様な事故が多い。
「こんなお互いの姿が確認出来る所で事故なんておかしい、って思ってるでしょ。特に潮」
勇人は自信満々に頷いた。
「錯覚と死角って解るわよね?」不意にそんな事を言い出す幸野。
「錯覚と……死角?」馬鹿みたいにそれを繰り返す僕。「こんな道の何処に死角があるんだよ?」
「道にじゃないわ。車内よ。どれだけウインドウやミラーで確認しても、運転席からは死角になる場所が出来てしまうものよ。ドアのフレームとか……自分の車体自体が死角を作り出してしまうの」
なるほど確かに見え難い位置というのはある。
「錯覚っていうのは?」
「こういうほぼ直角に交わった道路でね、ほぼ同じスピードで互いに同じ地点――詰まりこの交差点ね――を目指すと……一方からは相手が止まっている様に見えるそうよ。勿論、逆も然り」
「そんな事って……」僕は流石に抗議し掛けたが、幸野が嘘を言う理由も無い。それに適当な事を言う彼女でもない
「ま、これは以前テレビでやってた実験の受け売りだけどね。けれど、この錯覚の為に相手が止まっているものとスピードを落とす事もなく進み、そしていざ近付いた時には死角に入ったとしたら……気付いた時にはもう避けられない事もあり得るわよね」
「詰まり、この立地条件が問題だったと……?」
「そうなるわね」幸野は頷いた。「後は見通しが良過ぎる為にお互いのドライバーの注意が散漫になっていた事もあるでしょうね。見通しが悪ければもしかしたら車が出て来るかも……って、警戒もするでしょうけど」
「なるほどー」納得する僕に反し、勇人はわなわなと身震いしていた。
「やっぱり俺の楽しみを潰しに来たんじゃないか!」そう喚き、勇人はその場に座り込んだ。
あ。拗ねた。
「こうなったら俺が不思議現象だと証明する迄、此処で張り込んでやる!」
毎度の展開だった。
だから、何だかんだ言っても夜になれば帰る事も知っているし、翌日になればけろりとしている事も、僕達は知っていた。
「帰り、買い物するから荷物持ってくれる?」
「ええ? またかよ」
「いいじゃない、近いんだし」
俺と幸野は勇人を置いて、歩き出していた。そう、僕達は潮勇人程、暇人じゃあない――多分。
因みに、翌日やっぱりけろりとして勇人が持って来たネタは事件の多発するビル、だった。
懲りない奴だ。
―了―
何か車ネタ多い?(^^;)
あ、実際こういう錯覚はあるそうなので、皆様、見通しのいい道でもご注意を。
「何が楽しみなんだか」肩を竦める幸野――幸野美幸。「事故で亡くなる人が居る様な所で不謹慎じゃない?」
それは僕もそう思う、と思わず頷く。
しかし、聞いてないのがこの男。
「今回は邪魔はさせんぞ。これだけ見通しのいい交差点で相次ぐ事故、奇妙だとは思わないのか?」
僕はそれにも頷かざるを得なかった。
「守野ってどっちつかずよね」そんな僕に幸野の一睨み。
そしてやはり周囲を見回して、一つ、頷いた。
「此処での事故ってさ、西側からの直進車と南側からの直進車の衝突事故が多かったわよね」
そう言って彼女が指し示したのは周りを空き地に挟まれた、見通しの良過ぎる道路。どちらから進んでいたとしても、互いの位置は丸見えだと思うんだけど、何故か彼女の言った様な事故が多い。
「こんなお互いの姿が確認出来る所で事故なんておかしい、って思ってるでしょ。特に潮」
勇人は自信満々に頷いた。
「錯覚と死角って解るわよね?」不意にそんな事を言い出す幸野。
「錯覚と……死角?」馬鹿みたいにそれを繰り返す僕。「こんな道の何処に死角があるんだよ?」
「道にじゃないわ。車内よ。どれだけウインドウやミラーで確認しても、運転席からは死角になる場所が出来てしまうものよ。ドアのフレームとか……自分の車体自体が死角を作り出してしまうの」
なるほど確かに見え難い位置というのはある。
「錯覚っていうのは?」
「こういうほぼ直角に交わった道路でね、ほぼ同じスピードで互いに同じ地点――詰まりこの交差点ね――を目指すと……一方からは相手が止まっている様に見えるそうよ。勿論、逆も然り」
「そんな事って……」僕は流石に抗議し掛けたが、幸野が嘘を言う理由も無い。それに適当な事を言う彼女でもない
「ま、これは以前テレビでやってた実験の受け売りだけどね。けれど、この錯覚の為に相手が止まっているものとスピードを落とす事もなく進み、そしていざ近付いた時には死角に入ったとしたら……気付いた時にはもう避けられない事もあり得るわよね」
「詰まり、この立地条件が問題だったと……?」
「そうなるわね」幸野は頷いた。「後は見通しが良過ぎる為にお互いのドライバーの注意が散漫になっていた事もあるでしょうね。見通しが悪ければもしかしたら車が出て来るかも……って、警戒もするでしょうけど」
「なるほどー」納得する僕に反し、勇人はわなわなと身震いしていた。
「やっぱり俺の楽しみを潰しに来たんじゃないか!」そう喚き、勇人はその場に座り込んだ。
あ。拗ねた。
「こうなったら俺が不思議現象だと証明する迄、此処で張り込んでやる!」
毎度の展開だった。
だから、何だかんだ言っても夜になれば帰る事も知っているし、翌日になればけろりとしている事も、僕達は知っていた。
「帰り、買い物するから荷物持ってくれる?」
「ええ? またかよ」
「いいじゃない、近いんだし」
俺と幸野は勇人を置いて、歩き出していた。そう、僕達は潮勇人程、暇人じゃあない――多分。
因みに、翌日やっぱりけろりとして勇人が持って来たネタは事件の多発するビル、だった。
懲りない奴だ。
―了―
何か車ネタ多い?(^^;)
あ、実際こういう錯覚はあるそうなので、皆様、見通しのいい道でもご注意を。
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Re:こんばんは~
はーい、安全運転で参ります(^-^)ノ
Re:無題
大槻教授の女性版!(爆)
暇人に付き合わされるご近所さんを救出に来たのかも(笑)
不思議現象は不思議現象で置いといてもいいのにね(笑)
暇人に付き合わされるご近所さんを救出に来たのかも(笑)
不思議現象は不思議現象で置いといてもいいのにね(笑)
Re:こんばんは♪
ウケますよね、大槻教授の女性版(笑)
そうそう、開けた道でも油断禁物ですよ~☆
そうそう、開けた道でも油断禁物ですよ~☆
無題
ほほ~、そういうこともあるんですか。
そう言えば、電車に乗っている時、駅で自分の車両が動き出しそうな時に、反対車線に車両が来ると、どっちが動いているのか分からない時あるよねぇ。
あれに似てるのかな?
ところで、大槻教授は悪くない。(笑)
だってさぁ、宇宙人はもう既に地球に住んでいるとか、見てきたようなことを、断定的に言うんだもん。
そりゃ、反論したくなるじゃん。(笑)
そう言えば、電車に乗っている時、駅で自分の車両が動き出しそうな時に、反対車線に車両が来ると、どっちが動いているのか分からない時あるよねぇ。
あれに似てるのかな?
ところで、大槻教授は悪くない。(笑)
だってさぁ、宇宙人はもう既に地球に住んでいるとか、見てきたようなことを、断定的に言うんだもん。
そりゃ、反論したくなるじゃん。(笑)
Re:無題
あ~、あの電車もどっちが動いてるのか、錯覚起こしますよね。
大槻教授(笑)
うん、本当に居るんなら連れて来てみなさいよ! って言いたくはなりますよね(笑)
自称宇宙人、とか言って出て来るのは大概どう見てもその辺のおっちゃんだし(笑)
大槻教授(笑)
うん、本当に居るんなら連れて来てみなさいよ! って言いたくはなりますよね(笑)
自称宇宙人、とか言って出て来るのは大概どう見てもその辺のおっちゃんだし(笑)
Re:こんばんは♪
大槻教授女性版、ウケますよね(笑)
何にしても……安全運転!
何にしても……安全運転!
Re:錯覚・・・
あー、ありますね、お化け坂とか。ボール転がしたら登って行く(様に見える)の^^
そういう錯覚位なら楽しいなぁ。
後、錯覚を利用したトリックアートとかは楽しいですよね♪
そういう錯覚位なら楽しいなぁ。
後、錯覚を利用したトリックアートとかは楽しいですよね♪