〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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夜の道を歩くのは気楽なものだ。
特にこんな田舎道では、人に出合う事も殆ど無い。況してや苦手な子供に会う事なんて、先ず無い。
その筈だったのだが……。
「ねえねえ、どこ行くの?」さっきからちょこちょこと後ろをついて来る子供に、俺は辟易していた。「日が暮れたらお家に帰らなきゃ駄目なんだよ?」
その言葉、そっくりその儘お前に返すからさっさと俺から離れろ――そんな目付きで一睨みしたものの、相手にどの程度伝わったかものか。
それ迄只管無視して歩いていた俺が振り返ったのが嬉しかったのか、尚更親しげに話し掛けてくる始末。
「名前は? どこのうちの子? 僕はお祖母ちゃんの家に遊びに来たんだよ」
本当に子供というのは喧しい。声も高くて大きいし、何よりこの質問攻めと、じっと見詰めてくる視線が、どうにも苦手だ。然もそれだけ見ている癖に、こちらが態と作った鬱陶しそうな表情は読み取らない。いや、未だそこ迄の感情が育っていないのかも知れないが。
兎も角、気楽な筈の夜の散歩の、この小さな連れにうんざりして、俺は道を外れて林に入り、手近な木に駆け上がった。
そして――その樹の上に小さな亡骸を見付けて流石に息を飲んだ。乾燥して曲がり、絡まった蔓植物に巻かれる様に蹲っている為、直ぐにはそうと解らなかったが。よく見ればその蔓が喉に食い込んでいて、恐らく慣れない木登りの最中に蔓に絡まり、足掻く間に運悪く首を締めてしまったのだろう。
振り返ると、さっきの子供は消えていた。
そう言えば――と、俺は二箇月程前のこの静かな町での騒ぎを思い出す。
どこかの家に里帰りしていた夫婦の一人息子が姿を消し、その捜索が行われたのだ。無論、俺は知った事ではないと、無関心を決め込んでいたが。
散々山狩りが行なわれた筈だったが、この一見蔓草の塊にしか見えないものを、彼等は見逃していた様だった。
全く……面倒臭い話だ。
そう毒づきながらも、俺は蔓に巻かれた子供の亡骸から、靴の片方を失敬した。
確かあの時、悲嘆に暮れた顔で町の消防団員達に頭を下げていた老婆の家は……此処から程遠くない、一軒家。
庭に忍び入ってみれば障子に明かりが差している。俺は態と物音を立て、障子が開くのを待った。
「おや、お前はどこの子?」きょとんとした顔で、老婆は俺を見詰めた。
しかし、その手前にぽとりと落とした小さな靴を見遣ると、見る見るその顔の驚愕の色が広がる。
「これを何処で……! あの子は何処に居るの!?」
その問いに、俺は身を翻しつつ、老婆がもどかしそうに履物を履くのを待ってやった。
そうして時折振り返りつつ、ついて来るのを確認し、やがて俺はあの木に再び駆け上がった。暗闇に途惑う老婆に解るように、蔓草の塊からもう一方の靴を、ぽとりと落としてやる。
「ああぁ……!」老婆はそれで悟ったか、狂った様な悲嘆の声を上げた。
そして彼を降ろす人手を集める為だろう、町の方に駆け戻って行く後ろ姿を見下ろして、俺は一声、声を掛けた。
にゃあぅ――ちゃんと弔ってやれよ、と。
俺達猫は兎も角、人間の子供はちゃんと家に帰らなきゃ駄目なんだから。
―了―
疲れたので短めに!
特にこんな田舎道では、人に出合う事も殆ど無い。況してや苦手な子供に会う事なんて、先ず無い。
その筈だったのだが……。
「ねえねえ、どこ行くの?」さっきからちょこちょこと後ろをついて来る子供に、俺は辟易していた。「日が暮れたらお家に帰らなきゃ駄目なんだよ?」
その言葉、そっくりその儘お前に返すからさっさと俺から離れろ――そんな目付きで一睨みしたものの、相手にどの程度伝わったかものか。
それ迄只管無視して歩いていた俺が振り返ったのが嬉しかったのか、尚更親しげに話し掛けてくる始末。
「名前は? どこのうちの子? 僕はお祖母ちゃんの家に遊びに来たんだよ」
本当に子供というのは喧しい。声も高くて大きいし、何よりこの質問攻めと、じっと見詰めてくる視線が、どうにも苦手だ。然もそれだけ見ている癖に、こちらが態と作った鬱陶しそうな表情は読み取らない。いや、未だそこ迄の感情が育っていないのかも知れないが。
兎も角、気楽な筈の夜の散歩の、この小さな連れにうんざりして、俺は道を外れて林に入り、手近な木に駆け上がった。
そして――その樹の上に小さな亡骸を見付けて流石に息を飲んだ。乾燥して曲がり、絡まった蔓植物に巻かれる様に蹲っている為、直ぐにはそうと解らなかったが。よく見ればその蔓が喉に食い込んでいて、恐らく慣れない木登りの最中に蔓に絡まり、足掻く間に運悪く首を締めてしまったのだろう。
振り返ると、さっきの子供は消えていた。
そう言えば――と、俺は二箇月程前のこの静かな町での騒ぎを思い出す。
どこかの家に里帰りしていた夫婦の一人息子が姿を消し、その捜索が行われたのだ。無論、俺は知った事ではないと、無関心を決め込んでいたが。
散々山狩りが行なわれた筈だったが、この一見蔓草の塊にしか見えないものを、彼等は見逃していた様だった。
全く……面倒臭い話だ。
そう毒づきながらも、俺は蔓に巻かれた子供の亡骸から、靴の片方を失敬した。
確かあの時、悲嘆に暮れた顔で町の消防団員達に頭を下げていた老婆の家は……此処から程遠くない、一軒家。
庭に忍び入ってみれば障子に明かりが差している。俺は態と物音を立て、障子が開くのを待った。
「おや、お前はどこの子?」きょとんとした顔で、老婆は俺を見詰めた。
しかし、その手前にぽとりと落とした小さな靴を見遣ると、見る見るその顔の驚愕の色が広がる。
「これを何処で……! あの子は何処に居るの!?」
その問いに、俺は身を翻しつつ、老婆がもどかしそうに履物を履くのを待ってやった。
そうして時折振り返りつつ、ついて来るのを確認し、やがて俺はあの木に再び駆け上がった。暗闇に途惑う老婆に解るように、蔓草の塊からもう一方の靴を、ぽとりと落としてやる。
「ああぁ……!」老婆はそれで悟ったか、狂った様な悲嘆の声を上げた。
そして彼を降ろす人手を集める為だろう、町の方に駆け戻って行く後ろ姿を見下ろして、俺は一声、声を掛けた。
にゃあぅ――ちゃんと弔ってやれよ、と。
俺達猫は兎も角、人間の子供はちゃんと家に帰らなきゃ駄目なんだから。
―了―
疲れたので短めに!
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Re:無題
招き猫にゃ☆
猫って幽霊とか見えてそーな気がする……。
じーっと部屋の片隅を見詰めてたり……。
猫って幽霊とか見えてそーな気がする……。
じーっと部屋の片隅を見詰めてたり……。
Re:こんばんは
降りるの苦手な子も居るけどね(=^・×・^=)
にゃん♪
にゃん♪
Re:こんにちはっ
有難うございます(^-^)
暖かくなりましたね~(汗)
本当、車内なんて暑いですよね!
それでも朝晩はそこそこ冷えるから要注意ですよ!
暖かくなりましたね~(汗)
本当、車内なんて暑いですよね!
それでも朝晩はそこそこ冷えるから要注意ですよ!
Re:こんにちは
にゃん♪(笑)
ちぃっ、読まれてるな(^^;)
流石読み慣れてらっしゃる(笑)
ちぃっ、読まれてるな(^^;)
流石読み慣れてらっしゃる(笑)
Re:おぉ~
はい、またにゃんです(笑)
にゃんと子供(霊)の取り合わせ、何か多い様な気がしてきた……。
精進せねば!
にゃんと子供(霊)の取り合わせ、何か多い様な気がしてきた……。
精進せねば!
Re:こんにちは〜♪
小さい子供は遠慮ないですからね(^^;)
あの高い声とか、私でも吃驚する(笑)
あの高い声とか、私でも吃驚する(笑)
Re:こんにちは♪
にゃにゃん♪
怪しいと思ったら大概、猫(笑)
怪しいと思ったら大概、猫(笑)