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「いきなりの引退宣言なんて、どういう心算だ? 坊や?」
控え室に戻ると、どこか耳障りな声が早速とばかりにそう問い質した。
「坊やは止めてくれないか?」大きな花束をテーブルの上に置きながら、少年は言った。「言った通りさ。僕は止める。もう舞台には上がらない」
「勝手な事を……!」苦々しげに、相手は唸る。「舞台で発表しちまっちゃあ、今更取り消しは利かねぇぞ。子供だからとか、冗談でしたじゃ済まねぇんだぞ?」
「冗談の心算は毛頭無いし、子供なりによくよく考えた末だよ」舞台用の白い上着を脱ぎ、普段着に着替えながらも彼は言う。「もう舞台に立つのは……君に手を貸すのは嫌になった。いや、元々嫌だった。これ以上は我慢したくない」
「何が嫌だって言うんだ? お前は舞台でスポットライトを浴び、人々の歓声を浴びる。俺はそのお前の活躍から糧を得る。ちょっとした演出の代償にな。それで今迄巧くやってきたじゃないか」
「でも、その演出で誤魔化すのももう限界だし、何より……」少年はひたと、壁のほぼ一面を占める鏡を見詰めた。「君が得ている『糧』って何なんだい? 悪魔よ」
天使の歌声と称され、然もその美しいボーイソプラノを――不思議な事に――変声期を終える筈の十代半ばを過ぎても保ってきた少年は、しかしその夜以来、その奇跡の声を失った。
それでいい、と劇場の裏口から出ながら、彼は上機嫌でその年齢に相応しい声でハミングした。
悪魔の力で彩られた天使の歌声など、もう必要ない、と。
「ちっ、あのガキの歌声に夢中になっている人間は隙だらけで生命力も奪い易かったのに……。仕方ない、次を探すか」一方、耳障りな声はそう呟き、笑うと――どこかへと消えて行った。
次の「天使」を探して。
―了―
悪魔は天使を偽る(--;)
天使の歌声に聴き惚れているうちに悪魔に生命力を奪われて、ふらふらでコンサート会場からやっとの思いで出たところ、待ち受けた夜霧に余力を奪われて、ぞぞぞッ、こわいですね(笑)
それは恐ろしいですね(爆)
それにしても悪魔が天使の歌声を授けてくれるなんて皮肉だよねぇ~!
悪魔を崇拝する人の気持も分からなくはないかな?でも落とし穴が怖いよねぇ~!
まぁ、素敵な歌声♪ なんて聞き惚れていると……★
みょ~にテンション上がって、翌日ぐったりしてたら……もしかして……?