〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
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最近、気になって仕方ない事があると、琴子は言った。
友人の務めとして、私は「何なの?」と尋ねた。
「私の部屋の天井にね、手の跡があるの」と、琴子は言った。「こう……ペタって、両手を開いて並べて突いたみたいなのが。然も何だかね、サイズや形から言って、女の人の手みたいなの。丁度私位の」
「琴子んちの天井って、結構高いよね?」よく知っている室内を思い出しつつ、私は首を傾げた。「でも、倉庫にある脚立を使えば届くし……。蛍光灯でも交換しようとした時に、手を突いたんじゃないの?」
「もう長い事、切れてないわよ」琴子は頭を振った。「手の跡が表れたのはほんの二週間程前。ずっと前からあったのなら、家をリフォームした時とか、業者の人がうっかり付けたのかなって思うけど……。それにしたって女性の手形なんて……」
「本当に手形なの? 只の染みがそう見えてるだけかもよ?」彼女を安心させ、納得させるべく、私は言った。「ほら、気味が悪いって思ってると段々木の節跡だって目鼻に見えてくるし……」
「そんな事無いわ。はっきりと残ってるもの。調べれば指紋だって出るんじゃないかって位」
「それは止めた方がいいわよ!」思わず早口に私は言い、慌てて取り繕う様に言葉を続ける。「ほ、ほら、本当に業者さんとかだったら、その人にも迷惑だし……。何より、どこで指紋とか調べて貰うのよ? 何か事件があったとかいう訳でもないんだし……」
「それはまぁ……そうよね」渋々と、琴子は頷いた。
「きっと前からあったのに気付かなかったのよ。気にする程の事じゃないし、気にしたって仕方ないって」私はそう言って、この話にけりをつけた。
「……それと、もう一つ気になる事があるんだけど……」
「なぁに?」友人の勤めとして、私は訊いてあげる。
「何で、脚立が倉庫にあるって知ってるの?」
「え?」私は言葉に詰まった。
「何で、私が知らない事を――私の『空想の友達』の貴女が知ってるの?」
私は黙るしかなかった。
二週間前、切れた蛍光灯を交換したのは貴女のお陰で自我を持った私だって――それ以外にも時々、琴子の身体を乗っ取っているなんて、言える訳ないじゃない。
―了―
この頃どうも遅くなりがちですな(--;)
その分、短くなる~。
友人の務めとして、私は「何なの?」と尋ねた。
「私の部屋の天井にね、手の跡があるの」と、琴子は言った。「こう……ペタって、両手を開いて並べて突いたみたいなのが。然も何だかね、サイズや形から言って、女の人の手みたいなの。丁度私位の」
「琴子んちの天井って、結構高いよね?」よく知っている室内を思い出しつつ、私は首を傾げた。「でも、倉庫にある脚立を使えば届くし……。蛍光灯でも交換しようとした時に、手を突いたんじゃないの?」
「もう長い事、切れてないわよ」琴子は頭を振った。「手の跡が表れたのはほんの二週間程前。ずっと前からあったのなら、家をリフォームした時とか、業者の人がうっかり付けたのかなって思うけど……。それにしたって女性の手形なんて……」
「本当に手形なの? 只の染みがそう見えてるだけかもよ?」彼女を安心させ、納得させるべく、私は言った。「ほら、気味が悪いって思ってると段々木の節跡だって目鼻に見えてくるし……」
「そんな事無いわ。はっきりと残ってるもの。調べれば指紋だって出るんじゃないかって位」
「それは止めた方がいいわよ!」思わず早口に私は言い、慌てて取り繕う様に言葉を続ける。「ほ、ほら、本当に業者さんとかだったら、その人にも迷惑だし……。何より、どこで指紋とか調べて貰うのよ? 何か事件があったとかいう訳でもないんだし……」
「それはまぁ……そうよね」渋々と、琴子は頷いた。
「きっと前からあったのに気付かなかったのよ。気にする程の事じゃないし、気にしたって仕方ないって」私はそう言って、この話にけりをつけた。
「……それと、もう一つ気になる事があるんだけど……」
「なぁに?」友人の勤めとして、私は訊いてあげる。
「何で、脚立が倉庫にあるって知ってるの?」
「え?」私は言葉に詰まった。
「何で、私が知らない事を――私の『空想の友達』の貴女が知ってるの?」
私は黙るしかなかった。
二週間前、切れた蛍光灯を交換したのは貴女のお陰で自我を持った私だって――それ以外にも時々、琴子の身体を乗っ取っているなんて、言える訳ないじゃない。
―了―
この頃どうも遅くなりがちですな(--;)
その分、短くなる~。
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Re:無題
全く覚えの無い所から自分の指紋が出てきたら……吃驚ですよね(^^;)
これもある意味二重人格かな。
これもある意味二重人格かな。
こんばんわ
おぉ、ホラーですね(なのかな?^^;
でも蛍光灯の交換なんて、自分から率先してやろうとしたのは偉いんじゃないかとも思ったりしました。。
いや、それでも乗っ取るのはどうかと思いますけどね^^;
でも蛍光灯の交換なんて、自分から率先してやろうとしたのは偉いんじゃないかとも思ったりしました。。
いや、それでも乗っ取るのはどうかと思いますけどね^^;
Re:こんばんわ
蛍光灯の交換……私は嫌です(笑)
でも、それをやってくれるからと言って乗っ取られるのも嫌~(苦笑)
でも、それをやってくれるからと言って乗っ取られるのも嫌~(苦笑)
Re:こんばんは
オチです(笑)
木目とか見てて目鼻の形に点が並んでると……やっぱりそう見えてきちゃいますよね~
木目とか見てて目鼻の形に点が並んでると……やっぱりそう見えてきちゃいますよね~
天井のシミねぇ!
子供の頃なら、あったなぁ!
人の横顔に見えたり、怪物に見えたり、
あぁいうのって一度、これだと思ってしまうと、
なかなか別のものには見えなくなってしまうね、
怖かったなぁ・・・・
二重人格ですか?!
これもゾッとするよねぇ!
人の横顔に見えたり、怪物に見えたり、
あぁいうのって一度、これだと思ってしまうと、
なかなか別のものには見えなくなってしまうね、
怖かったなぁ・・・・
二重人格ですか?!
これもゾッとするよねぇ!
Re:天井のシミねぇ!
脳には『顔』なんかの特定のものを認識する細胞があるとか。
それが丁度いい具合に木の節なんかが並んでると顔と誤認識してしまうんだとか。
でも、やっぱり気になるよねぇ。
それが丁度いい具合に木の節なんかが並んでると顔と誤認識してしまうんだとか。
でも、やっぱり気になるよねぇ。
Re:無題
ちっ。
二重人格ネタもダブってきたからか、騙されてくれないか(笑)
二重人格ネタもダブってきたからか、騙されてくれないか(笑)
Re:こんばんは
切れない蛍光灯……あったらいいなぁ。
Re:あらぁ~
そそ、蛍光灯替える位ならいいけど(笑)
Re:空想が
実際には二重人格と言うより「空想上のお友達」なので……。
症例としての多重人格では互いに会話する様な事は無いと思うけど、まだ定義さえ怪しいからねぇ。
症例としての多重人格では互いに会話する様な事は無いと思うけど、まだ定義さえ怪しいからねぇ。
Re:こんにちはっ
うちでは幽霊より怖いかも(笑)
取り敢えず蛍光灯替えてくれるだけなら……や、それもヤバイか(^^;)
取り敢えず蛍光灯替えてくれるだけなら……や、それもヤバイか(^^;)