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電気を消しては駄目、と幼い娘は言った。
いつもの様にパジャマ姿の娘をベッドに寝かせ、短い御伽噺を読み聞かせ、うとうとし始めた娘におやすみの挨拶をして、電灯のスイッチに手を掛けた時だった。
「なぁに? 未だ暗いのが怖いのかな? 麻紀は」態と、少しからかう様に私はそう言ってやる。我が子ながら負けず嫌いの麻紀は、その意地を刺激してやると、大概、容易に言う事を聞いてくれる。
けれど、今夜はそれでも駄目だった。
「怖くなんかないよ……。麻紀、怖くなんかないんだよ?」そう言いながらも、小さな手は布団の端を落ち着かない仕草で握っている。
「じゃあ、どうして? それにいつもは電気消して寝てるじゃない」私は首を傾げた。「今夜はどうしたの?」
何か怖い話でも聞いたか、怖いテレビでも見たのだろうか?
麻紀は未だ六歳。子供は成長したと思っても、何かの刺激で突然、一時的にその言動が幼児期に戻ってしまう事がある。大抵は、親や周囲の大人に甘えたい時だけれど。
「麻紀はね、怖くなんかないんだよ?」麻紀はそう、繰り返した。「怖がってるのはケイちゃんなの」
「ケイちゃん?」私は尚更、首を捻った。「誰の事?」
麻紀は一人娘。当然、この部屋にも麻紀一人。それに友達の名前は大体把握しているけれど、ケイちゃんと呼ばれる子供は居なかった筈だ。
さては自分が怖がっているのだとは言えずに、誰かの所為だと言い張っているのだろうか。きっとケイちゃんというのはベッドの周りにある人形やぬいぐるみのどれかに、麻紀が付けた名前に違いない。
馬鹿な事を言わないの――そう諌めるのは簡単だけど、それは娘との対話の機会を逸する事にもなる。やはりコミュニケーションは幼い頃からの積み重ねが大事、そう自分に言い聞かせて、私は麻紀の横に屈んで目線を合わせ、話を続けた。
「麻紀? 麻紀は暗いの平気でしょ? だから麻紀がケイちゃんにも教えてあげて? 夜、電気を消しても怖くなんかないんだよって。ね?」
「……うん……」納得は行っていないのか、にこりともせずに、それでも麻紀は頷いた。
私は娘の頭を撫でてから立ち上がり、もう一度おやすみを言うとドアの横のスイッチに手を掛けた。灯の点いた廊下へのドアを少し開けてから、電気を消す。
と――。
「いやあぁぁっ!!」
娘のものではない、けれどやはり幼い子供の声が部屋に響き渡り、窓の戸締りを確認したにも拘らず、室内を突風が吹き抜けた。
明るい、廊下へと向かって。
「な、何……?」突風に煽られ、尻餅を突きながらも私は見た。継接ぎだらけの古い着物を着た、麻紀と同い年位のおかっぱ頭の女の子が、飛ぶ様に階段を駆け下りて行くのを。その姿は半透明で……足音は一切、しなかった。
茫然としていると、ベッドから降りて来た麻紀が溜息をついて言った。
「だから言ったのに。ケイちゃんはずーっと『ぼーくーごー』っていう、暗い所に居てとっても怖い思いをしたから、暗いの怖いんだって」
ぼーくーごー?――私は昼間、社会見学で近くの『防空壕』に行ったと、麻紀が言っていたのを思い出した。買い物の途中で忙しくて、話を半分も聞いてはいなかったけれど。
そこから付いて来たのか……。
幽霊なのに闇を恐れるなんて、余程怖くて、心細い思いをしたに違いない。
無理もない。麻紀と同じ位の、幼い子供なのだもの。
私の胸で、娘について来た幽霊を恐れる気持ちと、ケイちゃんを哀れに思う気持ちが交錯した。
「麻紀……。明日、お坊さんと一緒にその防空壕にもう一度、行ってみようね」それが一番な様に思えた。もし、娘に取り憑いているのなら放置は出来ないし、ケイちゃん自身にとっても、あんな暗い場所にこれからもずっと居るなんて、それこそ浮かばれない。供養する事で先に進めるのなら――明るい場所に出られるのなら、私はそれを手助けしてあげたいと、そう思った。
不思議そうな顔をしながらも、麻紀は頷いた。
「それと……これからも一杯、お話しようね」どんな小さなサインも、見落とさないように。
「うん!」麻紀は笑って、力強く頷いた。
―了―
皆様、寝る時は真っ暗にして寝ますか? 豆球点けた儘、寝ますか?(゜_゜)
豆球だけでも点けてると大分違いますよね。
最近ホラーっぽくなかったんで、油断してました(T_T) ウルウル
まずは、階段駆け下りたケイちゃんを探し出して、頭を「なでなで」してあげましょう^^v
で、お母さんが一緒に寝てあげるとケイちゃんも安心してくれるはず(*^o^*) テレテレ
しかし、戦争を体験した心の傷はそう簡単に癒えないもの(T_T) ウルウル
だからこそ、しっかり抱きしめてあげてください><v
これからの新しい家族だ^^/
幽霊になってても、この世に居れるんだから、これから、楽しいことをどんどんしないとね^^v
戦争の傷跡・・・忘れることなく、平和への実質的な努力をしなくっちゃ(((((((((((((( ><;)ヌォォォー!
ではではー^^/
暗い中で、外の状況もよく解らず、ともすれば身近な人の安否さえも判らずに只々、息を潜めているというのは大人でも精神的にかなりきつい状況ですよね(ノ_;)
況してや小さな子供なら……。
やはり戦争は繰り返してはいかんです。
果たして普通の職業坊主に、浄霊が出来る程の徳があるのか否か?――無いか★
やっぱり豆球は点けますか。真っ暗も落ち着けませんよね(^^;)