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夜中に連絡もなしに訪ねて来る友人程、迷惑なものはない。
況して、その理由がはっきりしないとなると。
「どうしたって言うんだよ? いきなり訪ねて来て。そりゃ、俺は一人暮らしだから、文句を言う家族もないけど」
理由位は聞かせてくれよと、ワンルームに座り込むなり妙に浮かない顔で俯いている、件の友人に詰め寄った。
因みに現在の時刻は午前一時半。明日は久し振りの休日と、夜更かしを決め込んでいたので、就寝時に起こされる不快感を味わわなかったのは幸いだが。
「家族と喧嘩でもして飛び出て来たのか?」俺は冗談交じりに言う。友人は家族――両親と二人の妹と共に――同居しており、概ね仲がよかったが、それでも時折は親しさ故の言い過ぎから喧嘩に発展する事もある様だ。
喧嘩、という言葉に彼は反応した様だった。僅かに顔を上げ、何か言いたげに口を開き掛けては閉じてを繰り返している。言いたい事が頭の中で纏まらない、そんな感じだろうか。
やがて一つ、唾を飲み下して、彼は話し始めた。
「喧嘩……うん、確かに最初は些細な喧嘩だったんだ。原因は何だったろう? ああ、そうだ、肩が触れたのどうだのって事だった。俺は全く自覚なかったから、言い掛かりだと、最初は相手にしなかったんだ。そしたら、馬鹿にしてんのかと食って掛かって来て……。ずるいよな、向こうは仲間が三人も居たんだぜ?」
「おい、誰と喧嘩したんだ?」俺は眉根を寄せた。どうやら家族間ではないらしい。
「誰? 解らない。街で擦れ違っただけなんだから。それなのに言い掛かり付けられて、四人掛かりで殴られて……」
俺はそれとなく彼を観察する。冬物の衣服から覗いている手や、首から上には傷らしきものは見当たらない。殴られたとしたら衣服に隠れている部分なのか?
「それが本当なら傷害事件だよ。警察には行ったのか? 病院は?」
どちらも行っていない、と彼は首を振った。
「何で? やられっ放しでいいのかよ?」妙に淡々としている彼に成り代わり、俺は憤る。
「よかないよ」彼は微苦笑した。「でも、無理なんだ」
「何で? 相手の身元が判らないからか? それを調べるのがお巡りの仕事じゃないか。お前は兎に角、病院で診断書書いて貰って、被害届けを出せばいいんだよ。泣き寝入りなんて馬鹿馬鹿しいじゃないか」
「無理なんだって」
更に「何で?」と訊くよりも前に、彼の姿が崩れ始めた。
驚愕に目を瞠る俺の前で、顔が崩れ、身体が崩れ、どろりとその場に蟠る。丸で海藻の塊で出来た化け物の様なその様相に、俺は情けない悲鳴を上げた。逃げ出さなかったのはそれを未だ友人と認識していたからか、腰が抜けていたからか……。それとも……。
やがてそれも蒸発する様に消えて行き、後には湿った絨毯の上に一握り程の、海藻の束が残されていた。
翌日、俺は警察に出向き、馬鹿にされるのを覚悟の上で事の次第を告げた。
幸い、遺体そのものが俺の告げた場所の付近から上がった為、無視される事はなかった。とは言え、一度は俺の事件への関与が疑われたけれど、幸いな事に奴の死亡推定時刻には俺には確固としたアリバイがあり、また遺体からは犯人に繋がる痕跡が発見された為、無罪放免となった。
そう、言い掛かりを付けてお前を嬲り殺しにした奴等は捕まった。
だからゆっくり、眠ってくれ。
俺は分布場所がこの近辺では極めて限られるが故に、その場所を教えてくれた例の海藻に感謝しつつ、友人の遺体が遺棄された海へと、弔いの花束を投げた。
―了―
今日は疲れ気味~(--;)
理不尽な話ですねぇ。
唐突な死を迎えると、自分が死んでいることに気付かず彷徨うことになるという説がありますが(多くは自縛霊として残るらしいですけど)、彼の場合はどうだったんでしょうね?
それとも冷静でいられるのは、言葉通り『執念』からでしょうか。。
面白かったです^^
有難うございます(^^)
突然の死に加えて遺体も遺棄され、見付けて貰えるかどうかという状態で、友人を頼ってみたり。
それも考えたんだけど、今回はパス(笑)
私も最初は彼が殺人事件を起こしてしまったのか?と一瞬思ってしまいました。
仲間が3人もいたというところで、む!じゃ幽霊
なのか!と気が付きました。
お友達、すぐ警察に行ってくれて更に犯人も
分かって良かったね♪
ううむ、パターンが読まれてきたぞ(笑)
遺体も遺棄されて、この儘では行方不明者扱いになりそうだったので。
海藻とか植物でも、物によっては分布場所がかなり限定されるかと。