〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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何の音だろう?――どこからか断続的に聞こえる音に、私は眠い目を擦りながら半身を起こした。
深夜二時。すっかり照明を落としたワンルームの中、間延びしたメトロノームの様に定期的な音が続いている。
ピッ……ピッ……ピッ……電子音の様だ。
どこからだろう? 私は苛々と音源を探した。大して大きな音でもないけれど、妙に耳について、眠りを妨げてくれる。
旅行中、留守を任された友人の部屋だから、ある程度の勝手は知っているけれど、完全に把握している訳じゃあない。
ベッドサイドの小さなテーブル上の目覚まし時計を取り上げてみる。アラームのスイッチは入っているが、設定した時刻は午前七時。第一、こんな断続的な音ではない筈だ。故障したのだろうか?
ピッ――また鳴った。だが、手にした時計からではない様だ。
私は時計をテーブルに戻し、他に電子音を発生させそうな物を探した。
小型の冷蔵庫。やはり小型の炊飯器。電子レンジ。エアコン――それらは正常に稼動していたし、近くで耳を澄ませてみても、例の音を発してはいなかった。
テレビ。パソコン。プリンター。それらは既に電源を落とされ、沈黙している。他には――取り敢えず目に付く所には――電子音を出しそうな物は見当たらない。
幾度耳を澄ませてみても、音源は特定出来ず、また、音は止まない。
ピッ……ピッ……ピッ……一体何なんだ。さっさとこの音を消して、眠りたいと言うのに!
私は些か乱暴に、携帯電話を手に取った。
この時間では仕方ないとは思うものの、コール時間の長さと、その間にも続く音に更に苛立ちを募らせながら、私は相手が出るのを待った。
やがて出たのは如何にも眠たそうな、若い女の声。
「もしもし……? 何かあったの? こんな夜中に」最後の一文に非難の響きを乗せながら、彼女は言った。
「何か、ずっと変な音がするんだけど」
「変な音?」
「ピッ……ピッ……って、電子音みたいなのが、この夜中にずっと鳴ってるのよ」
「え? あれ、聞こえるの?」意外そうな声音。
「聞こえるのって、ずっと鳴ってるんだもん。眠れやしない。何の音なの?」
折よく、またピッと鳴ったから電話を通して聞こえたかと思い、ほら、と念を押した。
が――。
「あ、ごめん、私には聞こえないんだ、それ」返ってきたのは些か申し訳なさそうな苦笑。
「は? あ、周波数の関係で電話通して聞こえないのかな」
「いや、そうじゃなくて……。実はそのマンション、家賃安いんだよね」意味ありげにそんな事を言う。
「……家賃が安い理由は?」騒音に悩まされない程度の近くには駅やコンビニもあり、便利なマンション。それが安い理由となると……。
「実はその土地、昔は病院があったそうで、ある程度霊感のある人だと何か色々見聞きしちゃうらしくて……。いやぁ、あんたが霊感持ちだとは思いも寄らなかったわ。ごめんごめん。あ、でも、電子音ならもう直止むと思うよ? 前に泊まった、やっぱり霊感持ちの子が言ってたから」
「え?」何で、と訊こうとした私の耳に、例の音が聞こえた。
ピッ……ピッ……ピッ……ピ――――。
この音って……。脳裏に波型を描く電子機器が浮かび、私は流石に蒼褪めた。今しも、波型は平坦な直線へと変わり――やがて音は唐突に途切れた。
「そろそろ止んだでしょ?」そう、能天気に訊いてくる友人に、一言「鈍感!」と怒鳴ると、私は電話を切った。
勿論、私は翌日以降の留守番を断った。
―了―
昨夜、火災報知器が電池切れらしく、真夜中にピッピピッピ鳴ってやがったのさ(--;)
深夜二時。すっかり照明を落としたワンルームの中、間延びしたメトロノームの様に定期的な音が続いている。
ピッ……ピッ……ピッ……電子音の様だ。
どこからだろう? 私は苛々と音源を探した。大して大きな音でもないけれど、妙に耳について、眠りを妨げてくれる。
旅行中、留守を任された友人の部屋だから、ある程度の勝手は知っているけれど、完全に把握している訳じゃあない。
ベッドサイドの小さなテーブル上の目覚まし時計を取り上げてみる。アラームのスイッチは入っているが、設定した時刻は午前七時。第一、こんな断続的な音ではない筈だ。故障したのだろうか?
ピッ――また鳴った。だが、手にした時計からではない様だ。
私は時計をテーブルに戻し、他に電子音を発生させそうな物を探した。
小型の冷蔵庫。やはり小型の炊飯器。電子レンジ。エアコン――それらは正常に稼動していたし、近くで耳を澄ませてみても、例の音を発してはいなかった。
テレビ。パソコン。プリンター。それらは既に電源を落とされ、沈黙している。他には――取り敢えず目に付く所には――電子音を出しそうな物は見当たらない。
幾度耳を澄ませてみても、音源は特定出来ず、また、音は止まない。
ピッ……ピッ……ピッ……一体何なんだ。さっさとこの音を消して、眠りたいと言うのに!
私は些か乱暴に、携帯電話を手に取った。
この時間では仕方ないとは思うものの、コール時間の長さと、その間にも続く音に更に苛立ちを募らせながら、私は相手が出るのを待った。
やがて出たのは如何にも眠たそうな、若い女の声。
「もしもし……? 何かあったの? こんな夜中に」最後の一文に非難の響きを乗せながら、彼女は言った。
「何か、ずっと変な音がするんだけど」
「変な音?」
「ピッ……ピッ……って、電子音みたいなのが、この夜中にずっと鳴ってるのよ」
「え? あれ、聞こえるの?」意外そうな声音。
「聞こえるのって、ずっと鳴ってるんだもん。眠れやしない。何の音なの?」
折よく、またピッと鳴ったから電話を通して聞こえたかと思い、ほら、と念を押した。
が――。
「あ、ごめん、私には聞こえないんだ、それ」返ってきたのは些か申し訳なさそうな苦笑。
「は? あ、周波数の関係で電話通して聞こえないのかな」
「いや、そうじゃなくて……。実はそのマンション、家賃安いんだよね」意味ありげにそんな事を言う。
「……家賃が安い理由は?」騒音に悩まされない程度の近くには駅やコンビニもあり、便利なマンション。それが安い理由となると……。
「実はその土地、昔は病院があったそうで、ある程度霊感のある人だと何か色々見聞きしちゃうらしくて……。いやぁ、あんたが霊感持ちだとは思いも寄らなかったわ。ごめんごめん。あ、でも、電子音ならもう直止むと思うよ? 前に泊まった、やっぱり霊感持ちの子が言ってたから」
「え?」何で、と訊こうとした私の耳に、例の音が聞こえた。
ピッ……ピッ……ピッ……ピ――――。
この音って……。脳裏に波型を描く電子機器が浮かび、私は流石に蒼褪めた。今しも、波型は平坦な直線へと変わり――やがて音は唐突に途切れた。
「そろそろ止んだでしょ?」そう、能天気に訊いてくる友人に、一言「鈍感!」と怒鳴ると、私は電話を切った。
勿論、私は翌日以降の留守番を断った。
―了―
昨夜、火災報知器が電池切れらしく、真夜中にピッピピッピ鳴ってやがったのさ(--;)
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Re:ええ〜
然も、本人は霊感0で影響無し(爆)
だから友達も大丈夫だろうと思ってるんだけどね(^^;)
何にしても、鈍感な奴(笑)
だから友達も大丈夫だろうと思ってるんだけどね(^^;)
何にしても、鈍感な奴(笑)
Re:こんばんは
にゃははは(^^;)
現住所の来歴調査なんてすると、大抵、何かしら怪しい結果が出そう(笑)
現住所の来歴調査なんてすると、大抵、何かしら怪しい結果が出そう(笑)
無題
健康を気遣う幽霊さんたちが電子体温計で体温を計ってるのかもね。
高音の電子音は方向がわからないんですよね。
混雑しているフロアなんかでピーと鳴ると、気づいたひとが自分のこちらだと思う方角を振り返るけど、正解は少ない。
高音の電子音は方向がわからないんですよね。
混雑しているフロアなんかでピーと鳴ると、気づいたひとが自分のこちらだと思う方角を振り返るけど、正解は少ない。
Re:無題
>健康を気遣う幽霊さんたちが電子体温計で体温を計ってるのかもね。
(爆)
と言うか、体温ないんじゃあ(^▽^;)
そうそう、昨夜も音の出所が判らなくて、実際あちこち捜しましたよ~。夜中に(汗)
(爆)
と言うか、体温ないんじゃあ(^▽^;)
そうそう、昨夜も音の出所が判らなくて、実際あちこち捜しましたよ~。夜中に(汗)