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ある日、小学校の帰り道で子犬を拾って帰った僕は、お母さんに酷く怒られた。
この家に犬なんか入れるんじゃない、とそれは凄い剣幕だった。
確かにこれ迄、直接触れ合える様な動物園にも母とは行った事はなく、一緒に動物番組を見ては目を細めていた母しか知らなかった僕は、面食らってしまった。僕と同じ様に動物好きだと、勝手に思っていたのに。見るのは好きでも、実際に触れるのは嫌なのだろうか?
テレビや写真集での動物の可愛さに釣られて、いざ飼ってはみたものの意外に世話が大変で困ったという話も、聞いた事はある。実際に飼ってみれば、写真には無い臭いもあるし、それぞれの個性もある。子犬が最初から訓練された警察犬の様な聞き分けの良さを発揮してくれる訳もない。
だからって無責任に捨てるのは論外だけど。
ともあれ、お母さんに犬を飼う事を禁止――と言うより寧ろ拒否――された僕は、仕方なく飼ってくれそうな人を探して、友達や知り合いに電話を掛け捲る事となった。
そして行き着いたのは、母方の叔父――詰まりはお母さんの弟だった。
近くに住む叔父は、直ぐに迎えに来た。
僕が電話で訳を話したら、そりゃあ大変だろう、と苦笑していたから、お母さんの犬嫌いはきっと以前からだったんだろう。そしてそれを知っているから、早めに引き取りに来てくれた訳だ。
僕としては、一晩位は子犬と過ごしたかった気持ちもあるんだけど……。でも、お母さんのあの剣幕じゃあ、本当に家に入れて貰えそうにない。やはり早く引き取って貰った方がいいんだろう。叔父の家ならいつでも遊びに行けるし。
そして子犬を連れての帰り際、叔父は母がどうしてあんなに犬を拒否したのか、こっそり教えてくれた。
「姉さんはね、昔、この家で犬を飼ってたんだよ」
「え? いつ?」僕は目を丸くした。少なくとも物心付いて以降、動物が家に居た記憶はない。「僕が生まれる前の事?」
「君が生まれる三、四年前から飼っていて――君が生まれた年に、居なくなった」
「僕と入れ替わりに? だから僕は知らなかったのか……。でも、それならどうしてお母さんはあんなに犬が嫌いなの?」
「姉さんは犬嫌いなんかじゃないよ。動物は大好きな人だよ」
「え……? じゃあ、どうして……」
「……君が二箇月位の時だったかな。犬が君の脚を噛んだ――と言っても傷にもならない様な甘噛みで、気付いた姉さんが声を上げたら直ぐに放した。その時、僕も丁度遊びに来ていたんだけど、赤ちゃんだった君だって、怖がる様子もなく無邪気に笑っていた。でも、やはりその場を見ていた義兄さんは……直ぐに犬を処分するよう、姉さんに言った」
「……」
「動物好きの姉さんも、義兄さんに『実の子より犬が大事なのか?』と迄言われては……犬を保健所に引き渡さない訳には行かなかったんだ」
保健所に引き渡された犬がどうなるか――それは僕だって知っている。
四年も飼った犬なら、尚更情も移っていただろう。それを、僕の為とは言え処分するなんて……。寿命という自然なお別れとはまた違う、より重いものだったに違いない。
母は二度と、そんな悲しい思いをしたくなかったのだろう。勿論、僕の事を心配してくれてもいるんだろう。
だから、僕は早く大人になろう――叔父の車を見送りながら、僕は思った――母がまた、安心して犬でも猫でも、飼えるように。
二度と悲しい別れをしなくて済むように。
―了―
遅くなった遅くなった★
猫は「犯人を追え!」とか言われても、言った本人に「あんた行っといて」とか尻尾でぱたぱた返事するだけで行かなさそうだし、安全な道を行こうとしたら、塀の上とか、盲人と言うより人間全般にとって過酷な道程になっちゃいそうだし(笑)
結論……猫には向かないでしょう(笑)