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一緒に来たらお菓子を上げるよ、と老人は言った。
「知らない人に付いて行っちゃ、駄目なんだからね」背中のランドセルがとても大きく見える、小さな女の子が言い返した。
知らない人じゃないよ、としゃがみ込んで小さな女の子に目線を合わせつつ、老人。
「嘘。私はお爺さんを知らないもの」
私は知っているよ、綾ちゃん……そう言って、老人は笑った。
女の子は途惑う。確かに彼女の名前は「綾」だった。けれど、彼女の記憶に、この老人の姿はない。
「お爺さん、誰?」首を傾げて、綾は訊いた。「パパかママの知り合いの人? それとも、真逆、お兄ちゃんの……?」
鷹揚に頷き、教えてあげるから一緒においで、と老人は微笑む。
好々爺然とした表情と好奇心に、綾の足は一歩、踏み出し掛けた。
駄目だよ、と背後から声が掛かった。
「お兄ちゃん!?」振り向いて、綾は目を丸くした。
知らない人に付いて行っちゃ駄目だ、と先程綾自身が言った事を、兄は繰り返した。
「でも、あのお爺さん、綾の名前知ってたよ?」
その綾の胸を、兄は指差した。
学校帰り、当然背中にはランドセル、そして胸には名札が付いていた。
一年二組、佐竹綾、と記された名札が。
「!」はっとして、綾は慌てて老人から距離を取った。兄の背後に回り、頭越しに老人を窺い見る。
老人は打って変わった厳しい顔で、二人の子供を見下ろしていた。
小さな兄は、しかし精一杯妹を守らんとして、毅然と二人の間に立ちはだかった。
「あら、綾ちゃん、今帰り?」不意に掛けられた隣のおばさんの声は、酷く場にそぐわない、和やかなものだった。「こんにちは」
「あ、はい……。こんにちは」反射的に綾は振り向いて、挨拶を返した。
そして再び視線を巡らせた時、その場には老人の姿も、兄の姿も、なかった。
「何だったの……?」呟く綾に、隣のおばさんはにこやかに話し掛ける。
「一緒に帰りましょうか。最近は物騒になったものねぇ。綾ちゃんのお兄ちゃんも未だ……あ」慌てて、彼女は自分の口を押さえた。「ご免なさい。ついついお喋りが過ぎちゃうのよね。悪い癖だわ」
一つ上の兄が皆の前から姿を消して約二年。誘拐されたのではないかという説が有力だった。両親は未だ、どこかで無事に生きていると信じていた――あるいは信じたがっていた――が……。
「……お兄ちゃん……」二年前の背比べでは全く届かなかった兄の頭が、自分の目線より低い位置にあった意味を感じ取り、綾は思わず涙を浮かべた。彼は成長していなかったのだ。
その涙を自らの失言の所為かと慌てて宥めるおばさんに気丈な笑みを見せて、綾は彼女と手を繋いで家路に着いた。
例え何者であれ、知らない人には付いて行っちゃ駄目なんだ、と再度頭に刻みながら。
―了―
幽霊の誘拐犯なんて嫌だー(--;)
早く成仏しやがれ☆
見付からないのって家族にとっても一番きついかも(汗)
ニュースの犯人……どのニュース? って訊く程事件が多いのも嫌だなぁ。
幽霊のくれる物は食べない方がいいかと(^^;)
……帰れなくなるから。
のかな?可哀そうだなぁ・・・お兄ちゃん!
早く見つけてあげたいよねぇ~!
綾ちゃんは良かったネ!
お兄ちゃんが助けてくれて(T_T) ウルウル
肉親の情に思わずジーーン!
自分と同じ目に、また他の危険な目にも遭わないように。