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「いつ迄も綺麗な街にしたいわ」
緑豊かに、しかし美しく整えられた箱庭を見下ろして、一団は会話を交わしていた。
「この白い壁も、石畳の道も、汚れ一つなく保とうと言うのかい? 永久に?」
「ええ、そうよ。勿論、緑の森林も、青い海もよ。笑わないで頂戴、おじ様。だってこんなに綺麗なのよ? この儘で置きたいと思うのは当然じゃないの」
「確かにねぇ。でも、難しい事よ? 私も前はそう思って、頑張ってみたけれど……。結局手に負えなくなって、捨ててしまったわ」
「おば様が諦めてしまわれるなんて……。やはり難しいのかしらね。でも、時間はたっぷりあるもの。私も挑戦してみるわ」
「そう? 頑張ってね」
「有難う、おば様。実は一つ、考えがあるの。この完成された街に、あれを配置しなければいいのよ」
「あれ……を?」老齢の女性は目を瞬かせた。「でも、それは完成と言えるのかしら?」
「……私にとっては、これが完成だわ。あれに汚され、朽ちて行く事を思えば……」若い女性は俯き、自らの美しい箱庭を見詰めた。「前に他の庭を見たの。街には得体の知れない物から出来たごみが放置され、薄汚れ……生臭い匂いがしていた。ああはしたくないわ」
「そう……」優しく頷く老女。「それもいいでしょう。好きにやってみるといいわ」
手を取り合う二人の女性の傍らで、年配の男性が独りごちていた。
それでも生命があるのなら、意思はやがて現れる……と。
* * *
どれだけの時が経ったか。
緑を育てる為に数も名前も知れぬ程の微生物や虫が、そして時にはそれらを捕食する鳥や小動物が、更にはそれらを捕食し、バランスを保つ肉食動物、そして死後、それらを土に還す微生物が、絶妙なバランスで管理されていた。
管理は巧く行っている――女性はそう、満足げに頷いた。
生き物が居れば当然汚れはする。けれどもそれは土台となる微生物が分解してしまえる。
あれが作り出す、化学物質や産業廃棄物とやらに比べれば、造作もなく。
「あれが作り出す造形物は時に美しいけれど……時に醜悪だわ。然も醜悪な物程、長く朽ちないなんてね」女性は呟き、新しく作った石造りの搭を配置した。彼女が美しいと認める物の一つだった。
ところで最近、数種の雑食動物が妙な知恵を付けてきている様な――と、彼女は眉を顰めた――気の所為よね?
* * *
更に数知れぬ時が流れ……結局、彼女の箱庭は放置された。
気になっていた雑食動物の中からあれが発生し、彼女の街を汚し出したのだ。
彼女は腹立ち紛れに海の水を掻き回し、地表の森林、建築物は全て水に飲み込まれた。
それを見た彼女は立ち去り、それきり関心を失った。
だが、更なる年月の後、残された種は水の退いた地表に現れ、再び自らの生きる場所を獲得し始め……循環の輪は機能し始めた。
そして再度現れた「あれ」は……。
「この有史以前の遺跡は非常に不思議だ。建物としての進化の跡がない。普通、村から街へ、更に大きな街へと拡大した跡が残るものだが……此処は元から完成された街として、配置された様だ。余程優れた計算の元、形作られたのだろうか」
「先生、こちらの石造りの搭の造作も見事なものですよ。痕跡が残されている大洪水さえなければ、此処にはどんな古代人達が培った一大文明が広がっていたのでしょうね」
彼女が残して行った遺物を、目を輝かせて研究しているのだった。
―了―
あれ=人間という事で……(--;)
ハコニワって言うと、ネジ巻きしないと雑草も生えない気がします(爆)
マチュピチュ辺りを思い返してしまいました。
あれ=人間だなとは気づいたけど、私も[あれ]の仲間なんだよね。日々、環境の事とか考えて行かなきゃな~って思うよ(^-^;
本当、昔の石造りの遺跡とか、剃刀の刃も通らない程の整合性で組み上げられていたり、不思議ですよね~。
その不思議さに惹かれるにゃ♪
と思ってしまいました。
宇宙人の箱庭が地球なのかもねぇ~!
確かに人類が登場しなかったら地球って、
宇宙人さんにとっては公園みたいな感じ
だったかも知れないね!
整えられた箱庭にはそれを鑑賞し褒め称える者の存在も必要だという事を。
動物では流石にそれはない……かと(^^;)
しかしあきらめるのはまだ早い。
人がワニになる、ワニが花になる~と大東京音頭で三波春夫が進化を予言していたようですぞ! つまりやがて平和な花になるのです、期待できます(笑)
あれが箱庭ぶっ壊す前に是非是非進化を!(笑)
実際、環境問題がどうの、絶滅危惧動物がどうの、と喚きたてているけど、人間が絶滅するのが1番の解決法だろうなぁと思うわ。(笑)
実際、地球箱庭説ってあるんだよね。
過去に彗星が近付く度に、新しい伝染病が発生しているらしくって、彗星に様々な種を内在させて、壮大なる実験をしているのではないかって。
でも、微生物といった根源の生命は彗星から来たという説もありますし、強ち……?
森等は適度な伐採などの手を加えないと、陽の届かない下生えが育たず、地表の保水力や栄養分も落ちてくるのだとか。森ごと壊しちゃ元も子もありませんが(--;)
程度問題……かな?