〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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昨日はまた、私への罪滅ぼしに、さっさと帰宅したの?
それで――平素もやってるの見た事ないけど――始業式のお約束みたいな、教室の清掃もしなかったのね。
本当に困った子だ事。
そう言いながら、母は笑う。本当に困っているのか、僕が彼女を優先した事を嬉しがっているのか、判らない顔で。
きっと、どっちも本当なんだろう、と僕は思う。
それに例え利己心が透けて見える笑顔でも、笑っているならそれでいい。
笑っていてくれるなら。
三年前、僕は弟を殺してしまった。
実際にはそれは単なる不運と不注意が重なった事故で、僕が法的な意味で罪に問われる事もなかった。二階に居た僕を食事だからと呼びに来た弟と、その足音に気付いて用件を察し、到着を待たずに部屋を出た僕とが階段の最上段でぶつかってしまったのだ。駆け上がって来た勢いの儘、弟は転がり落ちて行った。
打ち所が悪かった。運が悪かった。タイミングが悪かった。
きっとそれだけの事だった――それだけの事で人は死ぬのだと、僕はその時初めて思い知り、暫くの間は不抜けた様になっていた。
やがて通夜が済み、葬儀が済み、遽しさから解放された母が、何かが切れた様に半狂乱になる迄。
父と二人でどうにか宥め、僕は母に誓った。
弟の分迄、母を大事にするから、と。
寂しがり家の母が決して独りにならないように、続けて来た部活も辞め、友人との遊びも断って帰宅した。
弟が好きだった母の得意料理――これが実は僕は苦手だった――も美味そうに食べた。
母が大好きだった弟がやりそうな手伝いは全てやった。
それ位しか、罪滅ぼしの方法が思い付かなかった。
それでも、母は時折辛そうな顔をした。そしてそんな母の顔を見るのが、僕には辛かった。
だから、笑っていてくれるならいい。
弟の死など予想も望みもしていなかったけれど、駆け上がって来るのを驚かしてやろうと、態と足音を忍ばせて部屋を出たのだとは言い出せない、そんな僕の罪悪感からは結局、逃れられないけれど。
―了―
く、苦しい……(^^;)
それで――平素もやってるの見た事ないけど――始業式のお約束みたいな、教室の清掃もしなかったのね。
本当に困った子だ事。
そう言いながら、母は笑う。本当に困っているのか、僕が彼女を優先した事を嬉しがっているのか、判らない顔で。
きっと、どっちも本当なんだろう、と僕は思う。
それに例え利己心が透けて見える笑顔でも、笑っているならそれでいい。
笑っていてくれるなら。
三年前、僕は弟を殺してしまった。
実際にはそれは単なる不運と不注意が重なった事故で、僕が法的な意味で罪に問われる事もなかった。二階に居た僕を食事だからと呼びに来た弟と、その足音に気付いて用件を察し、到着を待たずに部屋を出た僕とが階段の最上段でぶつかってしまったのだ。駆け上がって来た勢いの儘、弟は転がり落ちて行った。
打ち所が悪かった。運が悪かった。タイミングが悪かった。
きっとそれだけの事だった――それだけの事で人は死ぬのだと、僕はその時初めて思い知り、暫くの間は不抜けた様になっていた。
やがて通夜が済み、葬儀が済み、遽しさから解放された母が、何かが切れた様に半狂乱になる迄。
父と二人でどうにか宥め、僕は母に誓った。
弟の分迄、母を大事にするから、と。
寂しがり家の母が決して独りにならないように、続けて来た部活も辞め、友人との遊びも断って帰宅した。
弟が好きだった母の得意料理――これが実は僕は苦手だった――も美味そうに食べた。
母が大好きだった弟がやりそうな手伝いは全てやった。
それ位しか、罪滅ぼしの方法が思い付かなかった。
それでも、母は時折辛そうな顔をした。そしてそんな母の顔を見るのが、僕には辛かった。
だから、笑っていてくれるならいい。
弟の死など予想も望みもしていなかったけれど、駆け上がって来るのを驚かしてやろうと、態と足音を忍ばせて部屋を出たのだとは言い出せない、そんな僕の罪悪感からは結局、逃れられないけれど。
―了―
く、苦しい……(^^;)
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お察しします;;
使いにくかろう「ペソ美」がどうなるのだろうかと思っていたら、こうなったんですね^^;
記憶があるので3歳前後だと思いますが。
ワタクシ自宅の階段のほぼ最上段から転がり落ちたことありますよ~。
それ以前にも何度か落っこちてたんで、いつものことだから大したことないだろうと思って放置してたら、うんともすんとも言わないんで慌てた、とのんびり者の母が言ってましたが(マテ)。
いやいや、それにしても、ちょっとした悪戯心があって引き起こしてしまった事故だから、余計に罪の意識が強いんでしょうかねぇ。
記憶があるので3歳前後だと思いますが。
ワタクシ自宅の階段のほぼ最上段から転がり落ちたことありますよ~。
それ以前にも何度か落っこちてたんで、いつものことだから大したことないだろうと思って放置してたら、うんともすんとも言わないんで慌てた、とのんびり者の母が言ってましたが(マテ)。
いやいや、それにしても、ちょっとした悪戯心があって引き起こしてしまった事故だから、余計に罪の意識が強いんでしょうかねぇ。
Re:お察しします;;
ペソ美ちゃん、こうなりました(^^;)
階段落ち! お母様、慌てて下さい(汗)
怪我とか大丈夫でした?
悪戯心……時に取り返しの付かない事に……。
階段落ち! お母様、慌てて下さい(汗)
怪我とか大丈夫でした?
悪戯心……時に取り返しの付かない事に……。
Re:こんばんは
ある意味一番厄介ですな。
何処にも逃れ様が無い。
何処にも逃れ様が無い。
無題
辛いですよね。。。
私も子供の時、わざとじゃないけど妹をけがさせてしまって、顔に傷をつけてしまいました。
その時、「この子が結婚できなかったらあなたのせいよ」と母親に責められ・・・
顔を合わせるたびに、傷がまだあるのか、いまだにこっそり確認してしまう。
そんな彼女も先月お嫁に行きました。
よかった。。。
私も子供の時、わざとじゃないけど妹をけがさせてしまって、顔に傷をつけてしまいました。
その時、「この子が結婚できなかったらあなたのせいよ」と母親に責められ・・・
顔を合わせるたびに、傷がまだあるのか、いまだにこっそり確認してしまう。
そんな彼女も先月お嫁に行きました。
よかった。。。
Re:無題
妹さん、ご結婚おめでとうございます(^^)
女の子の顔に傷……ううっ、それも罪悪感が……(--;)
「あなたの所為」と迄言われると辛いなぁ……。
女の子の顔に傷……ううっ、それも罪悪感が……(--;)
「あなたの所為」と迄言われると辛いなぁ……。
Re:こんばんは☆
母には笑っていて貰いたいものなのですよ……きっと。
完全に代わりになれる筈もないのだけれど。
完全に代わりになれる筈もないのだけれど。