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「お義父様があんな遺言を残さなければよかったのよ」
「その台詞は聞き飽きたよ。嫌なら……」
「嫌なら別れて出て行け、でしょう? その台詞も聞き飽きたわ。もう止めましょう、この話は」
言い出したのはそっちだぞ、という言葉は飲み込む。これ以上、恒例と化した言い争いを続けても仕方ない。
それよりも、早く支度に取り掛からなければ。
この広大な館を私に残した父は、少し――少しではないと妻は言うが――変わり者だった。
神秘主義者にして、超常現象、奇現象の研究家。そして恐ろしく頑固だった。
私達には全くその研究の有用性が解らないが、霊の存在を証明する事をライフワークとし、果ては齢八十にして癌を患い死期が迫ったと知ると、とある遺言を残した。
曰く――自らの身と魂を持って、霊の存在を証明する、と。
詰まりは死後、化けて出ると言っている訳だ。
そして館に住んでその証人を務める事を条件として、私と妻にこの館を残す、と。
冗談じゃあない、と妻は言った。
だが、条件を満たさない場合、遺留分を残して父の遺産は全て処分され、研究団体に寄付される事になっていると告げると、散々唸った挙句、彼女は了承した。信じていなかった所為もあるのだろう。
因みにもし父が化けて出るような事がなかったらどうするのかという問いには、証明が成される迄館を所有すべしという答が残されていた。有難いのか有難くないのか……。
ともあれ、父の死後、私達はこの館に移り住み、その霊の存在証明を検める事となった。
何、もし霊が存在したとしても、一度見てその存在を認めてやったら満足して成仏するさ――勿論信じていなかった事もあり、私達はそう、軽く考えていた面もあった。
だが――。
「真逆定期的に出て来るなんて思わなかったわよ」テーブルを力任せに拭き清めながら、妻は愚痴る。
「それに関しては私もだ」椅子を並べ、半ばうんざりしながらも私は応じる。
「その癖話が通じる訳でもないし、一体いつ迄私達に証人を勤めさせる心算よ」
「まぁ、今は私達だけじゃあないがね」
「そうね」深い溜息をついて、妻は肩を竦めた。「それに、お陰で私達も食べるに困らないし……。感謝すべきなのかしら?」
どうだろう、と私も肩を竦めて苦笑した。
それより、支度を急がないと夜にはお客様がおいでだ。
本日の客は五組十三名様。
父が見える人、見えない人、様々だろうが、まぁ、楽しんで帰ってくれ。
此処は多分国内では唯一営業中の、本物の幽霊屋敷を転用した「幽霊ホテル」なのだから。
―了―
4月15日――語呂合わせで「遺言の日」だそうな(--)
微妙に苦しい気もするけど……何でも記念日があるもんだねぇ。
怨念つきの幽霊ホテルは嫌だけど、
こんな幽霊ホテルなら、お客様も楽しめる(?)かもしれないですね☆
本人の希望だし♪
あ、でも私はどっちにしても出ないホテルがいいですw
しかし、幽霊が売りのホテルって一体(^^;)
支払いは現金は無理そうだから、たぶんカードですね。ビリビリと通信回線に電気が走って決済完了。
しかし、それではせっかくの当主夫妻がのんびりできないよ~!
きっと宿泊者は先代の類友(笑)