〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
Admin
Link
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
東南の方角へと向かっていた筈の航路がいつしか狂い、天候は状態を回復しなかった。
それでも、私は準備へ向かう為に指定した海域へ到達したかった。
でも、機能を狂わされたレーダーでは東南へと、私がポイントだけを支持した、あれらが生息する筈の場所へと向かうのは困難だったみたいだ。だから、これ以上は無理だ、港に帰ると船長は言い出した。
私はその船長を人質に船員達を脅し、この小型の船を乗っ取った。もう後戻りは出来ない……。
船のレーダーが狂ったのはきっと私の連れ、いや、連れ達の所為だろう。ここ迄の影響力があるとは、正直私にも予想外だったが。
それでも、私はその連れ達を見捨てる事は出来なかった。
例えそれらが集団化すると磁気を発し――それは互いの意思疎通の手段なのではないかとも推測された――機械類を狂わせるとしても。然も数の管理が難しく、直ぐに大量繁殖してしまうとしても。
それ故に研究対象としても疎まれ、理解されないものだとしても。
それらの本来棲む深海底から引き上げて置いて、手に負えないから処分する、その人間の身勝手さに、同じ人間ながら私は憤りを覚えていた。これ迄にもどれ程の種を、自分達の身勝手で本来の生息域――故郷から運び出し、自然のバランスを崩し、種を滅ぼしてきた事か。
恐らくは我々などよりもずっと長く、この地球に暮らしてきた先輩達であろう、それらを……。
だからこそ、私は大学の研究室から処分予定のそれらを盗み出した。殖えたとは言ってもシャーレに二、三枚程。それでもかなりの数が、そこには犇いていた。顕微鏡を通してしか、その姿は目に出来ないが。
そう。それらは細菌と呼ばれる、微細ながらも我々人間を含めた生命、更には地球環境にさえも影響を及ぼすものの一種だった。
この航海はそれらを元居た海域に戻す為のもの。船を一隻借りるのは只の研究員たる私の薄給には堪えたが、それも決心を揺るがす事は出来なかった。
例え天候が荒れようと、最早引き返す事は出来ない。幸いにも対象となる海域は広い。例え計器が狂おうと、どうにか辿り着けるだろう。
そして、船を激しく揺らす波が治まった頃、月明かりを照り返す海域に、船は進み入った。
私はシャーレを収納した鞄を手に、甲板に向かった。
脅されながらも船を難破させない為に船員達に精一杯の指示を出していた船長は、私が解放した直後、気が抜けたのか床に座り込んだが、船員達が私に手を出そうとするのは止めてくれた。最早呆れ果てたのかも知れない。あるいは今更押さえる価値も無いと察したのか。
彼には、そして船員達には悪いと思っている。シャーレからあれらを解放しながらも、私は瞑目した。
何しろ此処はあれらが大量に生息し、狂った磁場が船の脱出を妨げる――船の墓場なのだから。
勿論、この私も……最早引き返す気も、無い。
―了―
息してます(笑)
因みに巽の方角=東南という事で(く、苦しい ^^;)
それでも、私は準備へ向かう為に指定した海域へ到達したかった。
でも、機能を狂わされたレーダーでは東南へと、私がポイントだけを支持した、あれらが生息する筈の場所へと向かうのは困難だったみたいだ。だから、これ以上は無理だ、港に帰ると船長は言い出した。
私はその船長を人質に船員達を脅し、この小型の船を乗っ取った。もう後戻りは出来ない……。
船のレーダーが狂ったのはきっと私の連れ、いや、連れ達の所為だろう。ここ迄の影響力があるとは、正直私にも予想外だったが。
それでも、私はその連れ達を見捨てる事は出来なかった。
例えそれらが集団化すると磁気を発し――それは互いの意思疎通の手段なのではないかとも推測された――機械類を狂わせるとしても。然も数の管理が難しく、直ぐに大量繁殖してしまうとしても。
それ故に研究対象としても疎まれ、理解されないものだとしても。
それらの本来棲む深海底から引き上げて置いて、手に負えないから処分する、その人間の身勝手さに、同じ人間ながら私は憤りを覚えていた。これ迄にもどれ程の種を、自分達の身勝手で本来の生息域――故郷から運び出し、自然のバランスを崩し、種を滅ぼしてきた事か。
恐らくは我々などよりもずっと長く、この地球に暮らしてきた先輩達であろう、それらを……。
だからこそ、私は大学の研究室から処分予定のそれらを盗み出した。殖えたとは言ってもシャーレに二、三枚程。それでもかなりの数が、そこには犇いていた。顕微鏡を通してしか、その姿は目に出来ないが。
そう。それらは細菌と呼ばれる、微細ながらも我々人間を含めた生命、更には地球環境にさえも影響を及ぼすものの一種だった。
この航海はそれらを元居た海域に戻す為のもの。船を一隻借りるのは只の研究員たる私の薄給には堪えたが、それも決心を揺るがす事は出来なかった。
例え天候が荒れようと、最早引き返す事は出来ない。幸いにも対象となる海域は広い。例え計器が狂おうと、どうにか辿り着けるだろう。
そして、船を激しく揺らす波が治まった頃、月明かりを照り返す海域に、船は進み入った。
私はシャーレを収納した鞄を手に、甲板に向かった。
脅されながらも船を難破させない為に船員達に精一杯の指示を出していた船長は、私が解放した直後、気が抜けたのか床に座り込んだが、船員達が私に手を出そうとするのは止めてくれた。最早呆れ果てたのかも知れない。あるいは今更押さえる価値も無いと察したのか。
彼には、そして船員達には悪いと思っている。シャーレからあれらを解放しながらも、私は瞑目した。
何しろ此処はあれらが大量に生息し、狂った磁場が船の脱出を妨げる――船の墓場なのだから。
勿論、この私も……最早引き返す気も、無い。
―了―
息してます(笑)
因みに巽の方角=東南という事で(く、苦しい ^^;)
PR
この記事にコメントする
こんばんは
確かに種をいじくるのは人間のエゴだけど、だからといって悪いコトしてない船員さんを巻き込むのもエゴじゃないのかな?
『船員が可哀相だよー』
と、辰巳の方角に叫ぶかな?巽さん家は家からだと西南だから未申(あってる?)なんだけどね(笑)
『船員が可哀相だよー』
と、辰巳の方角に叫ぶかな?巽さん家は家からだと西南だから未申(あってる?)なんだけどね(笑)
Re:こんばんは
うん、『私』がやってるのは所詮自己満足のエゴ。
船は運がよければどこかの海域に出られるでしょう(^^;)
磁器は狂ってるけど、月は出てるからね。方角の当たりを付けられれば……。
『私』が無事かは保証の限りじゃないけどね。
未申……裏鬼門ですな。
船は運がよければどこかの海域に出られるでしょう(^^;)
磁器は狂ってるけど、月は出てるからね。方角の当たりを付けられれば……。
『私』が無事かは保証の限りじゃないけどね。
未申……裏鬼門ですな。
Re:こんにちは
や、いっそレーダーに頼らずに天体図から方角を割り出すとかすれば、脱出は可能かも。
Re:それは…
今こそ船員さん達の船乗りとしての経験が試される時!(なのか?)
何とかトライアングル通っても無事に帰還する船もあるし。
何とかトライアングル通っても無事に帰還する船もあるし。
Re:こんにちは♪
磁場は狂いまくってるのでレーダーは使えなさそうだけど、月明かりがある――雲は晴れたので、以下同文。
うんうん、正しいと思い込んでる人程、手に負えない事が多いやね。
うんうん、正しいと思い込んでる人程、手に負えない事が多いやね。
無題
どもども!
あの夜霧の投稿が、こうなりましたか!(笑)
そっか~、バミューダトライアングルの原因は微生物が発する磁力だったんですね!
これで一つの謎を解明したし…、またノーベル賞に近づいたんじゃないっすか?(笑)
あの夜霧の投稿が、こうなりましたか!(笑)
そっか~、バミューダトライアングルの原因は微生物が発する磁力だったんですね!
これで一つの謎を解明したし…、またノーベル賞に近づいたんじゃないっすか?(笑)
Re:無題
はい、こうなりました!(^^;)
バミューダトライアングル、磁場発生微生物説、行けますかね!?(笑)
メタンハイドレード説じゃ飛行機が納得行かないしな~。
バミューダトライアングル、磁場発生微生物説、行けますかね!?(笑)
メタンハイドレード説じゃ飛行機が納得行かないしな~。
Re:こんばんは
うん、所詮は自己満足(笑)
研究の為に住処から引き離しといて手に負えなくなったら廃棄しようとする研究者と大差ない。所詮人間のやる事★
研究の為に住処から引き離しといて手に負えなくなったら廃棄しようとする研究者と大差ない。所詮人間のやる事★