〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
Admin
Link
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
突然の破壊音に、屋敷の者達は一瞬、身を竦め、不安げに周囲を見回した後、またそれぞれの仕事に戻って行った。
只一人、屋敷の主を除いて。
彼は溜息をつくと部屋を出、音のした部屋へと向かった。ノックし、返答がある事に安堵の吐息を漏らすと、ドアを開けた。
「どうしたんだ? さっきの音は」可能な限り、心配を声に滲ませて、彼は尋ねた。
「ああ、あなた」部屋に居た、彼の妻が振り返り、涙を滲ませる。「戸棚がいきなり倒れたの! それも隆志に向かって!」
見れば部屋の壁際に据えられていた大人の胸程の高さの木製の戸棚が、前に向かって倒れている。先程の音はそれだったのかと、主は納得しながら、近付いて戸棚と周囲を検める。決して倒れ易い物ではないが、装飾性重視のデザインの為、底が高くなっており、足元には空間がある。それだけ重心が高い場所にあるという訳だ。
「それで? 隆志は無事なんだろう?」
「それは勿論よ」妻は深く頷いて答えた。「私が近くに居てよかったわ。危ないと思って直ぐに引き寄せたの。本当に、危ない所だったわ」
「それは何よりだ」
「ええ、本当に。ねぇ、あなた……こんな事言いたくはないけれど、本当に誰か、この子の命を狙っているのじゃないのかしら? この子は貴方の只一人の子供。それに先代――お祖父様の遺産の相続人でもあるわ。もしこの子が居なくなればって、この屋敷に出入りする親族の誰かが……。ああ! ごめんなさい、こんな事を……! 身内だと言うのに、疑ってしまうなんて!」妻はさも恐ろしい事を言ってしまったとばかりに顔を両の掌で覆い、顔を伏せてしまった。「でも……これ迄だって、何度も隆志は危ない目に……」
「大丈夫だ」妻の肩を優しく叩き、彼は言った。「隆志は大丈夫。例えそんな不心得者が居たとしても、危険な事などない。ここは私の……私達の家だ。好きにはさせんよ」
もう何度、このやり取りを繰り返したろう――そんな事はおくびにも出さず、彼は妻を宥める。
「ええ、そうね。私達で隆志を護りましょう」妻がそう言って、顔を上げる迄。
もう十年も前に事故で亡くなった子供を護れる筈もない――とは、ほんの束の間、愛息子から目を離した事を、記憶の混乱の中に逃避し、仮想の敵から子供を護る母を演じ続ける妻には言えなかった。
―了―
風邪ひいた~(--;)
只一人、屋敷の主を除いて。
彼は溜息をつくと部屋を出、音のした部屋へと向かった。ノックし、返答がある事に安堵の吐息を漏らすと、ドアを開けた。
「どうしたんだ? さっきの音は」可能な限り、心配を声に滲ませて、彼は尋ねた。
「ああ、あなた」部屋に居た、彼の妻が振り返り、涙を滲ませる。「戸棚がいきなり倒れたの! それも隆志に向かって!」
見れば部屋の壁際に据えられていた大人の胸程の高さの木製の戸棚が、前に向かって倒れている。先程の音はそれだったのかと、主は納得しながら、近付いて戸棚と周囲を検める。決して倒れ易い物ではないが、装飾性重視のデザインの為、底が高くなっており、足元には空間がある。それだけ重心が高い場所にあるという訳だ。
「それで? 隆志は無事なんだろう?」
「それは勿論よ」妻は深く頷いて答えた。「私が近くに居てよかったわ。危ないと思って直ぐに引き寄せたの。本当に、危ない所だったわ」
「それは何よりだ」
「ええ、本当に。ねぇ、あなた……こんな事言いたくはないけれど、本当に誰か、この子の命を狙っているのじゃないのかしら? この子は貴方の只一人の子供。それに先代――お祖父様の遺産の相続人でもあるわ。もしこの子が居なくなればって、この屋敷に出入りする親族の誰かが……。ああ! ごめんなさい、こんな事を……! 身内だと言うのに、疑ってしまうなんて!」妻はさも恐ろしい事を言ってしまったとばかりに顔を両の掌で覆い、顔を伏せてしまった。「でも……これ迄だって、何度も隆志は危ない目に……」
「大丈夫だ」妻の肩を優しく叩き、彼は言った。「隆志は大丈夫。例えそんな不心得者が居たとしても、危険な事などない。ここは私の……私達の家だ。好きにはさせんよ」
もう何度、このやり取りを繰り返したろう――そんな事はおくびにも出さず、彼は妻を宥める。
「ええ、そうね。私達で隆志を護りましょう」妻がそう言って、顔を上げる迄。
もう十年も前に事故で亡くなった子供を護れる筈もない――とは、ほんの束の間、愛息子から目を離した事を、記憶の混乱の中に逃避し、仮想の敵から子供を護る母を演じ続ける妻には言えなかった。
―了―
風邪ひいた~(--;)
PR
この記事にコメントする
Re:きょう、記憶した
!!∑( ̄◇ ̄;)
こんばんわ~
母親は自分が目を離してしまった事を
悔やんでも悔やみきれないんでしょうね…。
明けましておめでとうございます!
って、遅いですね^^;
私も風邪引いてるんですよ…。
巽さんも早く治るといいですね。
悔やんでも悔やみきれないんでしょうね…。
明けましておめでとうございます!
って、遅いですね^^;
私も風邪引いてるんですよ…。
巽さんも早く治るといいですね。
Re:こんばんわ~
有難うございます。
ふわりぃさんも風邪ですか(--;)
お互い早くよくなりますように☆
ふわりぃさんも風邪ですか(--;)
お互い早くよくなりますように☆
Re:こんばんは☆
思い込んでも息子が帰って来る訳でもないし、かなり虚しいかと……(^^;)
それでも人は逃げ場を求めてしまう……のかな?
それでも人は逃げ場を求めてしまう……のかな?
こんばんは♪
自分を責めた結果なんでしょうねぇ哀れですね、
子供を猫に置き換えて我が身に当てはめてみると
その切なさや後悔、やりきれない思いがよく分かります。
私も発狂しちゃうかと・・・・
風邪大丈夫ですか?
お大事にネ♪
子供を猫に置き換えて我が身に当てはめてみると
その切なさや後悔、やりきれない思いがよく分かります。
私も発狂しちゃうかと・・・・
風邪大丈夫ですか?
お大事にネ♪
Re:こんばんは♪
有難うございますm(_ _)m
風邪、もろに喉に来た感じです(--;)
子供にせよペットにせよ、愛し、保護する対象が消えてしまうと、人間弱いかも知れん……。
風邪、もろに喉に来た感じです(--;)
子供にせよペットにせよ、愛し、保護する対象が消えてしまうと、人間弱いかも知れん……。
Re:無題
有難うございますm(_ _)m
栄養は有り余る程摂ってるかも(苦笑)
栄養は有り余る程摂ってるかも(苦笑)