〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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夜霧は、天文学に詳しい知り合いが欲しいな、と呟いた。
巽の方角――東南の空を見上げながら、望遠鏡も欲しいかな、と。
「先生、唐突にどうされたんですか?」いつも真っ直ぐの京が尋ねた。「星に興味とかおありでしたっけ?」
「なかったわよ」と、夜霧。「なかったからこれ迄詳しく調べた事もなかったし、その手合いの知り合いも居ないんじゃない」
なるほど。お天気屋で気紛れな夜霧だが、興味を持った事には寝食、序でに仕事も忘れて没頭する面があるのだ。尤も、気紛れな夜霧らしく、興味がなくなると途端に放置状態になるんだけれど。
それにしても唐突だ。
僕と京が揃って首を捻っていると、夜霧は一応の説明らしきものを始めた。
「変光星って知ってる? 恒星が周期的に光度を変えるの」
聞いた事はある、と僕達は頷いた。
「代表的なのは鯨座の『ミラ』ですかね」と、京。「凡そ332日周期で2.0等級から10.1等級迄光度が変化する赤色巨星。白色矮星を伴った連星でもあるそうですが」
「真田、詳しいの?」夜霧は目を丸くしている。
「いえ、これ位は雑誌や図鑑で仕入れられる知識ですから」京は苦笑する。「それでその変光星が何か?」
「その『ミラ』をね、絵のモチーフにしたいと思ったのよ。冬の夜空を描くのに、オリオン座とかじゃ当たり前過ぎかと思って」
敢えてマイナーなものを描きたいとは、夜霧らしいと言うべきか。
「けど、オリオンなら直ぐに判るけど、それ以外となると……」お手上げ、と夜霧は掌を天に向ける。「せめてどの辺のどの星って判ればと思ったんだけど。星図とか見てもさっぱりだしねぇ」
専門的な星図なんて、星の表記は名前じゃなくて略された記号が殆どだものなぁ。況してや夜空は天候状態で見えない星があったりして、肉眼で見えるのは星図その儘じゃあない。更に目標が変光星となると、現在が何等級だかを知っていないと尚更判別付かないだろう。
それにしても、よりによって何でそんな判別付き難い星を……。
学園があるのは山の中。此処からの夜空の眺めは――多発気味の夜霧さえなければ――澄んだ空気と余計な灯の少なさのお陰で、見事なものではあるが。
「ミラの属する鯨座って、要するに化け鯨なのよね」
僕は余程不思議そうな顔をしていたのだろうか、夜霧が説明してくれた。尤も、化け鯨、では更に混乱するだけだったけれど。
「ギリシャ神話でお姫様を食べようとしてて、通り掛かったペルセウスにメデューサの首で石にされた話、知らない?」
そう言われて思い出した。娘自慢の王妃カシオペアが海の神の怒りを買い、娘アンドロメダを生贄に差し出さねばならなくなった話。姫に迫る化け鯨。そこを助けたのがメデューサ退治後の英雄ペルセウスだった。
「その神話をね、なるべく実際の夜空に即して描いてみたいなって思ったのよ。けど、位置関係がよく判らなくて。だから詳しい人が知り合いに居たらなぁって思ったんだけど」
「天文部の顧問の先生は?」挙手して、京が訊く。「天文部なら望遠鏡も勿論ありますし」
「天文部の顧問……教頭よ? 何か面倒臭いじゃない」
『…………』僕達は顔を見合わせた。何となく、どちらからともなく頷く。
先日揉めていた事もあるけれど、教頭は自分の得意分野に関して話し出したら止まらないのだ。要点だけを訊きたい夜霧としては、確かに面倒臭いのだろう。
「それなら、そこそこ詳しそうな奴が居ますよ」と、京が何かを思い出した様に言った。「生徒ですけど。望遠鏡も持ってますし」
「誰? 話付けてくれる?」夜霧は笑顔で言った。
そんなの京の交際範囲に居たっけ、と思ったけれど、話を聞く内に僕も思い出していた。星座特集の雑誌をくるくる巻いて望遠鏡代わりにしていた生徒を。懸命の成績アップは成功した様で、念願の望遠鏡を買って貰っていた生徒を。
しかし京、夜霧の天体観測を手伝わせると言うのは……公共物である図書室の雑誌を傷めた彼に対する罰則かい?
けれど、望みの絵を描く為の足掛かりが出来そうだと喜ぶ夜霧を見ていると、彼には気の毒だけれど、まぁいいか、とも思えてきた。
まぁ、周期的に光度を変える変光星以上に、ころころ気分の変わる夜霧の相手は大変だろうけれど。
―了―
生徒なら既に知り合いだけどね~(--;)
趣味迄は知らなかったのさ~☆
聞いた事はある、と僕達は頷いた。
「代表的なのは鯨座の『ミラ』ですかね」と、京。「凡そ332日周期で2.0等級から10.1等級迄光度が変化する赤色巨星。白色矮星を伴った連星でもあるそうですが」
「真田、詳しいの?」夜霧は目を丸くしている。
「いえ、これ位は雑誌や図鑑で仕入れられる知識ですから」京は苦笑する。「それでその変光星が何か?」
「その『ミラ』をね、絵のモチーフにしたいと思ったのよ。冬の夜空を描くのに、オリオン座とかじゃ当たり前過ぎかと思って」
敢えてマイナーなものを描きたいとは、夜霧らしいと言うべきか。
「けど、オリオンなら直ぐに判るけど、それ以外となると……」お手上げ、と夜霧は掌を天に向ける。「せめてどの辺のどの星って判ればと思ったんだけど。星図とか見てもさっぱりだしねぇ」
専門的な星図なんて、星の表記は名前じゃなくて略された記号が殆どだものなぁ。況してや夜空は天候状態で見えない星があったりして、肉眼で見えるのは星図その儘じゃあない。更に目標が変光星となると、現在が何等級だかを知っていないと尚更判別付かないだろう。
それにしても、よりによって何でそんな判別付き難い星を……。
学園があるのは山の中。此処からの夜空の眺めは――多発気味の夜霧さえなければ――澄んだ空気と余計な灯の少なさのお陰で、見事なものではあるが。
「ミラの属する鯨座って、要するに化け鯨なのよね」
僕は余程不思議そうな顔をしていたのだろうか、夜霧が説明してくれた。尤も、化け鯨、では更に混乱するだけだったけれど。
「ギリシャ神話でお姫様を食べようとしてて、通り掛かったペルセウスにメデューサの首で石にされた話、知らない?」
そう言われて思い出した。娘自慢の王妃カシオペアが海の神の怒りを買い、娘アンドロメダを生贄に差し出さねばならなくなった話。姫に迫る化け鯨。そこを助けたのがメデューサ退治後の英雄ペルセウスだった。
「その神話をね、なるべく実際の夜空に即して描いてみたいなって思ったのよ。けど、位置関係がよく判らなくて。だから詳しい人が知り合いに居たらなぁって思ったんだけど」
「天文部の顧問の先生は?」挙手して、京が訊く。「天文部なら望遠鏡も勿論ありますし」
「天文部の顧問……教頭よ? 何か面倒臭いじゃない」
『…………』僕達は顔を見合わせた。何となく、どちらからともなく頷く。
先日揉めていた事もあるけれど、教頭は自分の得意分野に関して話し出したら止まらないのだ。要点だけを訊きたい夜霧としては、確かに面倒臭いのだろう。
「それなら、そこそこ詳しそうな奴が居ますよ」と、京が何かを思い出した様に言った。「生徒ですけど。望遠鏡も持ってますし」
「誰? 話付けてくれる?」夜霧は笑顔で言った。
そんなの京の交際範囲に居たっけ、と思ったけれど、話を聞く内に僕も思い出していた。星座特集の雑誌をくるくる巻いて望遠鏡代わりにしていた生徒を。懸命の成績アップは成功した様で、念願の望遠鏡を買って貰っていた生徒を。
しかし京、夜霧の天体観測を手伝わせると言うのは……公共物である図書室の雑誌を傷めた彼に対する罰則かい?
けれど、望みの絵を描く為の足掛かりが出来そうだと喜ぶ夜霧を見ていると、彼には気の毒だけれど、まぁいいか、とも思えてきた。
まぁ、周期的に光度を変える変光星以上に、ころころ気分の変わる夜霧の相手は大変だろうけれど。
―了―
生徒なら既に知り合いだけどね~(--;)
趣味迄は知らなかったのさ~☆
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こんばんは☆
どこかで読んだことがあると思い
過去記事をあさってきました(爆)
彼には名前無かったっけ?
夜霧先生の今後に注目しておきます☆
ところで、オリオン座のベテルギウスが超新星爆発の
可能性があるらしいね
新聞読んでびっくりしちゃったよσ(^◇^;)
過去記事をあさってきました(爆)
彼には名前無かったっけ?
夜霧先生の今後に注目しておきます☆
ところで、オリオン座のベテルギウスが超新星爆発の
可能性があるらしいね
新聞読んでびっくりしちゃったよσ(^◇^;)
Re:こんばんは☆
そうそう、過去記事の彼です。名前は未だない(笑)
星空はいつも変わらない……様でいて、実はダイナミックに変動しているのよね~☆
星空はいつも変わらない……様でいて、実はダイナミックに変動しているのよね~☆
Re:こんばんは
逃げたね(笑)
ミラの名前は知ってても変動する光度の幅なんて調べた事なきゃ解らんて(^^;)
ミラの名前は知ってても変動する光度の幅なんて調べた事なきゃ解らんて(^^;)
Re:こんにちは♪
回避でしょう(笑)
オリオン座位なら私でも直ぐに判るんだけどね~(^^;)
オリオン座位なら私でも直ぐに判るんだけどね~(^^;)
Re:無題
転校生かい!(← 一応、ツッコミ入れてみる)
変光星にも幾つか種類があるそうです。
定期的に周囲のガスの量が増えて光度を増すものとか。星も面白そうですが、星図を見てもさっぱり(^^;)
変光星にも幾つか種類があるそうです。
定期的に周囲のガスの量が増えて光度を増すものとか。星も面白そうですが、星図を見てもさっぱり(^^;)