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「翠く~ん、ほら、おやつ食べない?」
文字通りの猫撫で声が、僕を誘ってくる。同時におやつの入った袋を揺すってもいるのだろう、かさかさという音も、僕の聴覚を刺激する。でも、食欲を刺激されるには至らなかった。今の僕はそれ所じゃないんだ。
僕はおばさんの誘いを無視して、家の見回りを続けた。
「翠ー、屋敷の探検中か? おじさんが遊んで上げようか?」にこやかな笑顔を作って、僕の行く手を遮ったのはさっきのおばさんの旦那さんだった。僕が通るのを待ち構えていたのか、ご丁寧に片手には既に玩具が用意されている。でも、それは僕のお気に入りじゃあない。
挨拶だけを残して、するり、と僕はその横を通り抜けた。
「全く懐きやしない……。可愛くない奴だ」
「本当に。でも、どうにか懐かせないと……」
見回りを終えて居間に戻ってみると、二人は低めた声で何やら話し合っていた。家には他にも何人か人が居るから、聞かれたくないらしい。尤も、僕が戻って来たのを見ても、困った奴だって顔をして話を続けていたけれど。
「そうだ。何とか懐かせなければ、父の遺言によって私達はこの屋敷の相続権を失う。そして次は弟達が来て……。ああ、奴が翠に気に入られでもすれば、そこで終わりだ!」
「全く、お義父様も酔狂な事を……。翠の面倒を見て、翠に気に入られた者にこの屋敷の相続権を与える、だなんて。普通に財産分与して下さればいいのに……。猫可愛がりにも程がありますよ」
「こいつはこいつでおやつにも玩具にも反応しないし」おじさんは僕の前にしゃがみ込んで、唸った。
「ねぇ、いっその事よく似たのをどこかで調達して、それを懐かせて見せるっていうのはどうかしら?」
「駄目だ。弁護士の元にはこいつの生体データも預けられている。そんなインチキがばれたら……」おじさんは頭を振った。「第一、そうそう見付からんよ。綺麗な翠の眼をした――雄の三毛猫なんて」
数週間後、おじさん達は屋敷を去って行った。
そしてその弟さん夫婦がやって来た。
「翠く~ん。ほら、美味しいご飯よ」
「翠ー、新しい玩具だぞ」
またこのパターンだ。僕は思いっ切り欠伸と伸びをしてからベッドに丸くなり、狸寝入りを決め込む事にした。
自分の死後も僕が困らないようにと思ったんだろうけれど……お爺さん、僕は遺産目当てなのが余りに明白なお爺さんの子供の誰にも、きっと懐かないよ。
だってそうしている間は、誰もこの屋敷の主にはなれず、屋敷の為に働いてる人達の入れ替えも出来ない。
勿論、遺産目当てじゃなく僕の面倒を見てくれている、おじさんやお姉さん達も。
クビになんてしたら……噛み付いちゃうよ?
―了―
にゃあ~(=^・×・^=)
猫が先に死んだ場合……自然死なら普通の財産分与に変更、とか出来るんだろうか? 勿論、それを狙って猫を殺したりすれば、相続人全員権利剥奪で。
かもしれないねぇ!
外国では、こういう話けっこうありますよネ!
猫や犬に全財産を残してお世話係も指定でね、
可愛がってる犬や猫を残して先に死ぬのは心配
だものねぇ~!
やっぱり自分が死んだ後が心配だものねぇ。
そうですよね~。残して行く事を考えたら……。
その儘面倒見てくれる様な相続人ばかりだったら、こんな遺言残さなくても済んだかと(--;)