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雨の日は嫌いだ。
あちらこちらに水が溜まり、光を反射しては鏡と化す。
舗装の仕方が悪いのか、学校帰りのでこぼこ道にはいつも無数の水溜まりが出来る。
私はそれらを見ないように、雲に覆われた空を――厳密にはそれを遮る傘の端を――見上げて歩く。それで水溜まりに踏み込んで足元をびしょ濡れにし、同じ道を帰る幼馴染に笑われる。
それでも、私は鏡と化した路面を見たくない。
勿論、普通の鏡だって極力、見ない。
だって、そこには私とそっくりの顔が映る。
当然だろうって?
自分の姿が映っているのだから?
でも、違う。
確かに鏡に映った顔は私にそっくりなのだけれど、私と同じ右目の横に、泣き黒子があるのだ。
私の鏡像なら、当然黒子は左にある筈――ならば、あれは、誰?
あれは誰?――小学校に上がった位の頃からだろうか、鏡や鏡面になった水溜まりや硝子を見ては、怯える幼馴染。自分にそっくりだけれど自分ではない、誰かが映るのだ、と。
けれども、僕が見るとそれは只の鏡像にしか見えない。
彼女の特徴である右目の横の泣き黒子も、ちゃんと左側に移動して見える。
でも、冗談を言っている様にも思えない……。それ程、彼女は鏡を嫌っている。
おろし立ての靴を水に濡らして迄も、空を見上げて歩くなんて……。余りに真剣な顔だから笑い飛ばそうとしたけれど、無駄だった。
一体、彼女は鏡の中に、何を見ているんだ?
それが解った時、彼女は目に触れる限りの鏡、鏡面を狂った様に壊して回った。
波紋に揺れ、たゆたうものの直に戻ってしまう水溜まりに幾度も幾度も、両手で抱えた石を叩き付ける彼女をどうにか抑え、僕は理由を質した。
「繋がっちゃったら大変なの!」彼女は喚いた。「鏡の向こうとこっちと……私、あっちの私にはなりたくない……! あっちの世界はもう駄目なの!」
鏡の向こうに見えていたのは、そっくりだけれど何かが違った事で枝分かれした世界――平行世界の彼女だったそうだ。
だが、その世界は彼女が目を背けている間にも疲弊し、枯渇し……滅びの道を歩んでいた。
うっかり見てしまった水溜まりに、目だけをぎらぎらとさせて痩せ細った姿を見て、彼女は悟ったのだと言う。そして、鏡を通してその滅びがこちらに浸潤してくる、と。だからその入り口である鏡を壊さねばならないのだと。
結局、彼女は保護観察処分となった。カウンセリングにも通わされている様だ。
けれども――何かが違った事で枝分かれした世界の枝が、再び交差する事はないのだろうか?
ちょっとした違いが滅びを運んだのなら、再びのちょっとした違いが、こちらの世界をも滅ぼすのでは……?
最近、僕は鏡を見るのが怖い。
僕の目、あんなに鋭かったっけ……? それに口元の黒子は……右? 左?
ああ、今日も雨で憂鬱だ。
―了―
雨ばっかりだよ~(--;)
鏡ってのは写るから仕方ないけど、水溜まりもだと少し縛りがきつくないかな?
水洗トイレの水面の影とかどうするのー?とか、サランラップに明かり次第では写る影は?とか、いろいろ気になったりしたよ(笑)
鏡面になるとやっぱりアウトですな(←おい)
鏡は洗面所とか、ある程度ある所が決まっているから予め心構え出来るけれど、突然の雨での水溜りは……その方が怖くなりません?( ̄ー ̄)
太陽(=神)の移し身でもあり、重要な物だったかと。
後ろが暗い方が映る(^^;)