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降り積もった雪の中にぽつり、石のお地蔵様が立っていた。
祠も何も無い、只の道端。辺りは雪に覆われていて、他に目に付くものは無い。
家を出て、特にあてもなく歩いていた忠良は、自然とそちらへと向かった。手はかじかんでいたし、足元からは冷気が這い上がってくる。どれだけきつくコートを身体に巻き付けても、寒さから逃れる事は出来なかった。
小学二年生の、小さな身には厳し過ぎる寒さだった。
なのに家に戻ろうとしないのは、幼い子供なりの意地だろうか。
忠良は父方の祖父の家に、家族揃って帰省していた――渋々ながら。
もっと幼い頃は、祖父宅への帰省を楽しみにしていた覚えはある。都内のマンションなどよりずっと広い家、素朴ながらも庭があり、飼い犬のポチとは友達だった。正月の頃になると雪に覆われる庭でポチと追いかけっこをするのが、楽しかった。
だが、小学校に上がり、忠良なりの付き合いや趣味がはっきりと形を成す毎に、帰省は面倒臭く感じられる様になっていた。
山間部にある祖父宅ではテレビの受信可能局が少ない。ゲームをしていると外で遊べと言われ、寒風の中に誘い出される。小学校の友達はお正月休みに何処そこに旅行したと、自慢気に語りながらお土産を持って来るのに、此処では買って帰る様な土産物も無い。
ポチだって最近は犬小屋の中で寝てばかりだ。それはもう、歳なのだろうけれど。
もう来年からは此処には来ないんだ――赤くなった頬を膨らませ、忠良は思った――そうだ、何と言われたって来るもんか。パパ達だけで来ればいいんだ。お正月休みなんて直ぐ終わっちゃうし、その間僕はカップラーメンでも食べてるから、ママが居なくても大丈夫だもん。
実際にやれと言われたら、かなりの確立で泣き出しそうな事を、しかしきっと出来ると自分に言い聞かせる。道理などない。最早只の意地だ。
やがて雪を掻き分けながらの鈍い足取りながら、忠良は石の地蔵の前に辿り着いた。
台座の上に立っている地蔵は忠良より少し、背が高く、彼は上目遣いにその顔を見上げた。
そして――。
「わっ!」声を上げて、その場に尻餅をついた。
石地蔵の顔が、犬の顔に見えたのだ。それも生きている犬――ポチの顔に。
ポチは見た事もない程怒っている様子で、忠良を睨み据えていた。今にも飛び掛らんばかりに――いや、それは実際に忠良に向かって飛び掛かってきた。
自分が思う以上に動かなくなっていた身体と、纏わり付く雪に逃げる事も叶わぬ儘、忠良はその場に蹲り、意識を失った。
「おい! 忠良! 目ぇ覚ませ! 忠良!」頬をぴしゃぴしゃと叩かれる感触とその声に、忠良は意識を取り戻した。
うっすら開いた視線の先には父と祖父、そしてポチの姿。
思わず身を硬くしたが、ポチは穏やかな顔の、いつも通りのポチだった。心配そうに鼻を鳴らしつつ、彼の顔を覗き込んでいる。
「全く……心配したぞ」忠良を抱き上げながら、父が言った。「来年から来ない、なんて癇癪起こしたかと思えば家を出て行っちまって。こんな雪の中、迷子になったらどうする心算だったんだ。ポチが見付けてくれたからいい様なものの」
「ポチが?」巧く動かない口で、何とかそう問う。
「ああ、お前を捜しに出ようとしていたら、いきなり首輪を繋いでる縄を引き千切らんばかりに暴れ出して……もしかしたらと連れて来たら、お前を見付けてくれたという訳だ」
「歳の所為か、此処数箇月、足を引き摺ってて散歩に出るのさえ億劫そうにしてたものだがなぁ」祖父がポチを撫でる。「お前も忠良が心配だったんだなぁ? ポチ」
返事なのか偶然なのか、ポチが威勢良く、一声吠えた。
その声に安堵を感じた忠良の意識は、再び、今度は安らかな眠りへと引き寄せられていく。
と、その前にと視線を回した周囲には、何処にも先程の石地蔵は無かった。
「お父さん、この辺にお地蔵様、無かった? 犬の顔してるの……」
「犬の顔?」父は怪訝な面持ちで訊き返した。「そんなお地蔵様、無いよ。それにこの辺りは――すっかり雪に埋まってはいるけど――畑のど真ん中だ。犬の顔じゃなくても、無いよ」
「おかしいな……」眠りに引き込まれながら、忠良は呟いた。「ポチの顔……してたんだよ、本当に……」
それはきっと行っちゃいけない所に行かないよう、ポチが止めてくれてたんだよ――祖父の声が優しく響いた。お地蔵さんは子供の護りだ。だから、そのお力をお借りしたのかも知れないなぁ。
結局翌年も、忠良は田舎にやって来た。
ポチに会いに。
―了―
寒い~(--;)
昔 飼ってた犬(チコ)を思い出した
母にしかられた時、泣きながら 気持ちを聞いてもらってた。その度にチコは 心配そうな顔して 慰めてくれたっけ
言葉は通じない筈なのに、何処かしら感情が通じている様な……♪
考える事は何歳でも――無謀に他ならなくとも――出来るので、どうなんだろう? 寧ろ年齢が上がると、自分に出来る事出来ない事の計算が先に立つんじゃないかと。
猫……雪中行軍する猫さんも某所に居ますが、普通はこんな雪の中、出歩かないでしょうしねぇ(^^;)
根性と言うか無謀と言うか(^^;)
小学校高学年位迄行くと、逆に計算が先立つんじゃないかと思ったのですよ。少々無謀な事を考えても「これは無理!」って自分で駄目出ししちゃう様な。
と言うか、高学年迄行ったら一人で留守番位出来るよね☆
すると3~4年生位かなぁ? 妥当なのは?
だから、交差点の飛び出し禁止などは繰り返し言わないとダメだって、テレビで聞いたことがある。
生まれ月にも拠るだろうけど、冬だから満年齢で考えれば良いかな?
小2だと8歳かぁ。
小学4~5年生ぐらいまでは、それほど判断力は無いんじゃないかなと思うけど・・・。
4年生ぐらいが良い感じかな?
う~む、かつて子供だった筈なのに、子供の判断力がどんなもんだか、思い出せないよ(--;)
幼稚園時代でやたら穿った考え方してた私って一体……☆