〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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今日は誰との関係を悪化させるとしようかな。
そうしたらあの人は黙考してくれるかな。
静かに、僕の事だけを……。
「優亜(ゆうあ)! どうしていつもお友達と喧嘩ばかりするの!」母の叱責の声に、七歳の少女は身を竦めた。しかし直ぐに、強い視線で母の目を見返し、言う。
「お友達じゃないもん! 今日だって一緒に遊んでたけど、直ぐに私の事仲間外れにして……! だから帰ってって言ったのよ。なのに『何怒ってんの?』って私の事、馬鹿にして……!」
娘の激昂振りにおろおろしていた母親だったが、その小さな肩を両手で押さえ、諭す様に、声を掛けた。
「落ち着いて、優亜。お友達は誰も貴女の事を仲間外れになんてしてないわ。私だって遊ぶ様子は見ていたもの」
カウンターで仕切られたリビングダイニング。おやつやジュースを用意しながらも、母親は子供達の様子をちゃんと見ていた。七歳ともなれば知恵もあるとは言え、子供の事。はしゃぎ始めるとソファから飛び降りたりは日常茶飯事。
それに、時折だが娘が原因で喧嘩になる事が、あった。今日の様に。
だが、優亜も余所の子も、怪我をするような事があってはいけない――彼女は責任感の強い女性だった。
その彼女の目から見ても、今日の娘達は仲良く遊び、笑っていた筈だった。
ところが不意に、娘が怒り出したのだった。何の前触れすらもなく。
そうしたらあの人は黙考してくれるかな。
静かに、僕の事だけを……。
「優亜(ゆうあ)! どうしていつもお友達と喧嘩ばかりするの!」母の叱責の声に、七歳の少女は身を竦めた。しかし直ぐに、強い視線で母の目を見返し、言う。
「お友達じゃないもん! 今日だって一緒に遊んでたけど、直ぐに私の事仲間外れにして……! だから帰ってって言ったのよ。なのに『何怒ってんの?』って私の事、馬鹿にして……!」
娘の激昂振りにおろおろしていた母親だったが、その小さな肩を両手で押さえ、諭す様に、声を掛けた。
「落ち着いて、優亜。お友達は誰も貴女の事を仲間外れになんてしてないわ。私だって遊ぶ様子は見ていたもの」
カウンターで仕切られたリビングダイニング。おやつやジュースを用意しながらも、母親は子供達の様子をちゃんと見ていた。七歳ともなれば知恵もあるとは言え、子供の事。はしゃぎ始めるとソファから飛び降りたりは日常茶飯事。
それに、時折だが娘が原因で喧嘩になる事が、あった。今日の様に。
だが、優亜も余所の子も、怪我をするような事があってはいけない――彼女は責任感の強い女性だった。
その彼女の目から見ても、今日の娘達は仲良く遊び、笑っていた筈だった。
ところが不意に、娘が怒り出したのだった。何の前触れすらもなく。
手近にあった玩具を投げ付け、甲高い声を上げ始めた娘を、彼女は慌てて止めた。暴れる彼女を押さえ付け、抱き締める。そうして落ち着かせてから、双方に話を聞いたのだが、それがどうも食い違う。
優亜は仲間外れにされたと言い、友達はそんな事はしていないと返す。
そして娘達を見ていた彼女にも、友達の言い分が正しい事が解っていた。娘は直前迄、楽しそうに彼女等と笑い、話していたのだから。
兎に角すっかり白けてしまった場はお開きとなり、彼女は車で子供達を家迄送り届けた。娘にはその間自室で反省するように命じて。
だが、帰って来て話を聞いた彼女にぶつけられたのは、先の反駁の言葉だった。
「優亜、嘘をつかないで答えなさい。本当は何があったの? 怒り出す前、貴女は新しい玩具をお友達に見せていて、マナちゃん達が羨ましがるのを見て喜んでいたじゃない。誰も貴女を仲間外れにしていないし、勿論馬鹿にもしていないわ」
だが、優亜は首どころか全身を振り、否定の意を表した。母の手も振り払われてしまう。
「誰も私に話し掛けてなかったもん! 周りで騒いでたけど……私じゃなかったもん!」大きな目にうっすらと涙さえ溜めて、優亜は喚いた。「いつもそうだもん。皆と遊んでるといつの間にか一人で……皆私に話してるんじゃないし、私の声も聞いてないんだもん」
「そんな事無いわよ……」娘の肩を、背中をそっと抱き、母親は宥める。
周囲との認識に差があるというのは、この子には脳か精神に何らかの障害でもあるのかも知れない――そんな思いは表情に出さぬ儘。
確かに優亜はあの時皆の中心に居たのに。
皆が優亜に話し掛けていたのに。
彼女は一人だったと言う。
それともこれは話の中心が自分自身ではなく、玩具にあった事への不満の、彼女流の言い回しなのか?
泣きじゃくり始めた優亜の背をぽんぽんと叩きながら、そっと溜め息をついた。
やはり子育ては難しい。それも一人となると、比較する相手も居ない。これが、この年頃の子供にはよくある癇癪の類だと判れば、少しでも気が軽くなろうものを。
あの子が居てくれたら――彼女はそっと、今は亡き子供の事を思った。優亜の双子の兄、優太。共に生まれ出る筈だったのに、生れ落ちた時にはもう息をしていなかった。
その優太の分も、優亜を慈しんできた心算だったのに……。
泣き疲れた優亜をベッドに運び、寝かし付けると、彼女はこの家で唯一の和室である仏間に向かった。
優太の為の、小さな仏壇があった。
「優太……お兄ちゃんの貴方が居てくれたらねぇ……」優亜も孤独感を感じる様な事もあるまいと、そしてあの子ももっと素直になってくれるのではないかと、彼女は願った。無いものねだり――もし居たとしてもどうなるかは解らない、それは承知した上での、それは儚い夢の様なものだった。
線香の煙を燻らせ、位牌を見詰めた儘、彼女はじっと、亡き息子を思った。
優亜が問題を起こす度の、静かな時間。後ろ向きだという自覚はあっても、心の平安を取り戻す為の、大事な時間と、彼女の中では化していた。
そう――その儘僕だけを思って。
優亜じゃない、優太を。
その為に、優亜の心を追い払って一人にして――代わりに他の子達と話をして、遊んで――あの子に問題を起こさせてるんだから。
ねぇ、ママ……ずっと、静かに僕だけを……。
―了―
む。一緒に成長してたとしても、黙考は難し過ぎるよなー、と思いつつ書いてみた。
因みに今回の元は……
「きょうは巽と悪化しようかな。
巽は黙考してくれるかな。」
という月夜の無茶振りでした(--;)
優亜は仲間外れにされたと言い、友達はそんな事はしていないと返す。
そして娘達を見ていた彼女にも、友達の言い分が正しい事が解っていた。娘は直前迄、楽しそうに彼女等と笑い、話していたのだから。
兎に角すっかり白けてしまった場はお開きとなり、彼女は車で子供達を家迄送り届けた。娘にはその間自室で反省するように命じて。
だが、帰って来て話を聞いた彼女にぶつけられたのは、先の反駁の言葉だった。
「優亜、嘘をつかないで答えなさい。本当は何があったの? 怒り出す前、貴女は新しい玩具をお友達に見せていて、マナちゃん達が羨ましがるのを見て喜んでいたじゃない。誰も貴女を仲間外れにしていないし、勿論馬鹿にもしていないわ」
だが、優亜は首どころか全身を振り、否定の意を表した。母の手も振り払われてしまう。
「誰も私に話し掛けてなかったもん! 周りで騒いでたけど……私じゃなかったもん!」大きな目にうっすらと涙さえ溜めて、優亜は喚いた。「いつもそうだもん。皆と遊んでるといつの間にか一人で……皆私に話してるんじゃないし、私の声も聞いてないんだもん」
「そんな事無いわよ……」娘の肩を、背中をそっと抱き、母親は宥める。
周囲との認識に差があるというのは、この子には脳か精神に何らかの障害でもあるのかも知れない――そんな思いは表情に出さぬ儘。
確かに優亜はあの時皆の中心に居たのに。
皆が優亜に話し掛けていたのに。
彼女は一人だったと言う。
それともこれは話の中心が自分自身ではなく、玩具にあった事への不満の、彼女流の言い回しなのか?
泣きじゃくり始めた優亜の背をぽんぽんと叩きながら、そっと溜め息をついた。
やはり子育ては難しい。それも一人となると、比較する相手も居ない。これが、この年頃の子供にはよくある癇癪の類だと判れば、少しでも気が軽くなろうものを。
あの子が居てくれたら――彼女はそっと、今は亡き子供の事を思った。優亜の双子の兄、優太。共に生まれ出る筈だったのに、生れ落ちた時にはもう息をしていなかった。
その優太の分も、優亜を慈しんできた心算だったのに……。
泣き疲れた優亜をベッドに運び、寝かし付けると、彼女はこの家で唯一の和室である仏間に向かった。
優太の為の、小さな仏壇があった。
「優太……お兄ちゃんの貴方が居てくれたらねぇ……」優亜も孤独感を感じる様な事もあるまいと、そしてあの子ももっと素直になってくれるのではないかと、彼女は願った。無いものねだり――もし居たとしてもどうなるかは解らない、それは承知した上での、それは儚い夢の様なものだった。
線香の煙を燻らせ、位牌を見詰めた儘、彼女はじっと、亡き息子を思った。
優亜が問題を起こす度の、静かな時間。後ろ向きだという自覚はあっても、心の平安を取り戻す為の、大事な時間と、彼女の中では化していた。
そう――その儘僕だけを思って。
優亜じゃない、優太を。
その為に、優亜の心を追い払って一人にして――代わりに他の子達と話をして、遊んで――あの子に問題を起こさせてるんだから。
ねぇ、ママ……ずっと、静かに僕だけを……。
―了―
む。一緒に成長してたとしても、黙考は難し過ぎるよなー、と思いつつ書いてみた。
因みに今回の元は……
「きょうは巽と悪化しようかな。
巽は黙考してくれるかな。」
という月夜の無茶振りでした(--;)
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こんばんは♪
う~~ん!死んだ子への思いの強さが原因なのかなぁ~?
それとも・・・・その子のこの世へ出たいという思いの強さゆえ?
そう言えば、昔占ってもらったらね、私が生まれた後に母が流産してしまったんだけど、その時の男の子が、ものすごくこの世に生まれたがっていて、いろいろ災いを生じているから、霊をなだめる為に何かした方が良いみたいなこと言われたの!何をやれって言われたか忘れてしまったけどね、まぁ~いろいろあるよネ!
それとも・・・・その子のこの世へ出たいという思いの強さゆえ?
そう言えば、昔占ってもらったらね、私が生まれた後に母が流産してしまったんだけど、その時の男の子が、ものすごくこの世に生まれたがっていて、いろいろ災いを生じているから、霊をなだめる為に何かした方が良いみたいなこと言われたの!何をやれって言われたか忘れてしまったけどね、まぁ~いろいろあるよネ!
Re:こんばんは♪
どっちかと言うと今回は死んだ子供の方の執念ですね。
然も母親を独占したいという……。
ほえ~。占いでそんな事を……。
本当に色々ありますねぇ(--;)
然も母親を独占したいという……。
ほえ~。占いでそんな事を……。
本当に色々ありますねぇ(--;)
Re:こんばんは
今日は暑かったし!^^
優亜ちゃんは確かに気の毒。お兄ちゃんに意識を切り離されてる間、独りな訳で……。然も解って貰えない。
やっぱりお祓い?
優亜ちゃんは確かに気の毒。お兄ちゃんに意識を切り離されてる間、独りな訳で……。然も解って貰えない。
やっぱりお祓い?
Re:オイラも…
ブログペットの投稿、訳解りませんからねぇ(苦笑)
それをネタにしようという私も訳解りませんが(笑)
リアル感が伝わりましたか! 有難うございます(^^)
それをネタにしようという私も訳解りませんが(笑)
リアル感が伝わりましたか! 有難うございます(^^)
Re:う~ん
想いと言っていいのか執念と言っていいのか(^^;)
独占欲が強かったりもしますね、このお兄ちゃん。
死んだ者は美化される傾向があるし、このお母さんが忘れる筈もないんですけどね。
独占欲が強かったりもしますね、このお兄ちゃん。
死んだ者は美化される傾向があるし、このお母さんが忘れる筈もないんですけどね。
Re:おはよう!
やっぱり双子とは言え、兄弟ですからねぇ。
寧ろ、同じ時に生まれ、同じ様に育ち……それでも隣の芝生は青く見える。母への愛、兄弟愛が悪い方に転がってしまうと却ってその想いは強くなる……かも知れない☆
御祓いだー☆
寧ろ、同じ時に生まれ、同じ様に育ち……それでも隣の芝生は青く見える。母への愛、兄弟愛が悪い方に転がってしまうと却ってその想いは強くなる……かも知れない☆
御祓いだー☆
Re:こんにちは
どうでしょうねぇ?
そもそも思ってもいない事って、なかなか気付けませんからねぇ。
優亜ちゃんがもっと巧く表現出来るようになれば……それでも先ずはカウンセリングだろうなぁ。そんで原因が医学的には解らなくて更に悩んで仏壇に向かう……う~ん、優太の思う壺(--;)
そもそも思ってもいない事って、なかなか気付けませんからねぇ。
優亜ちゃんがもっと巧く表現出来るようになれば……それでも先ずはカウンセリングだろうなぁ。そんで原因が医学的には解らなくて更に悩んで仏壇に向かう……う~ん、優太の思う壺(--;)
Re:無題
誰よりも近しいだけに、何か不思議なものがある様な感じがしますよね。双子さん☆
無題
こ・こわいよ~!!
体感温度が下がった。
双子って、いろんな不思議があるそうですよね。
離れ離れに育てられても、
同じ趣味や職業だったりって。
仲のよすぎる双子の片割れが死んじゃうと
もう片割れも死んじゃうとか。
はたから見てると、双子の女の子とかって
可愛いんですけどね~。
今日、巽さんが夢に出てきました。
はっきりと巽さんだとわかりました。
車の運転、気を付けてくださいねー
あと、手足も大切にしてくださいね。
薄気味悪いこと言っちゃってすみません。
でも、どうしても心配になっちゃって。
一応書いときました。
体感温度が下がった。
双子って、いろんな不思議があるそうですよね。
離れ離れに育てられても、
同じ趣味や職業だったりって。
仲のよすぎる双子の片割れが死んじゃうと
もう片割れも死んじゃうとか。
はたから見てると、双子の女の子とかって
可愛いんですけどね~。
今日、巽さんが夢に出てきました。
はっきりと巽さんだとわかりました。
車の運転、気を付けてくださいねー
あと、手足も大切にしてくださいね。
薄気味悪いこと言っちゃってすみません。
でも、どうしても心配になっちゃって。
一応書いときました。
Re:無題
体感温度……そこ迄怖がって頂けましたか(^^;)
双子、やっぱり不思議な感じがしますよね~。
夢……何があったんでしょう? と、兎に角気を付けます(^^;)
それにしてもこれで三度目位かな、ネット友達(勿論、お互い顔知らない)の夢に出て来たって言われたのは(苦笑)
なのに皆私だと解ったらしい……これもまた不思議なり~☆
双子、やっぱり不思議な感じがしますよね~。
夢……何があったんでしょう? と、兎に角気を付けます(^^;)
それにしてもこれで三度目位かな、ネット友達(勿論、お互い顔知らない)の夢に出て来たって言われたのは(苦笑)
なのに皆私だと解ったらしい……これもまた不思議なり~☆
Re:無題
良介君に説得して貰いますか(苦笑)
二人揃って生まれてたら……どうなってたんでしょうねぇ。
それでもやっぱり母を独占しようとしたかも。
二人揃って生まれてたら……どうなってたんでしょうねぇ。
それでもやっぱり母を独占しようとしたかも。
Re:こんばんは
お母さん、子供達の様子は見てるけど、現実は見てなかったね。
でも、実際子供の言葉って伝わり難い事が多いかも……。
そして失ったものは美化される★
でも、実際子供の言葉って伝わり難い事が多いかも……。
そして失ったものは美化される★