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ハロウィンのシーズンになると、僕は家に籠もりがちになる。
様々な仮装を施した子供達が陽が落ちた後も堂々と歩き回っていて、騒々しい上にこちらは仕事にならないからだ。全く……子供はさっさと、クローゼットのお化けに怯えながら、ベッドに潜り込んでいればいいものを。
今夜はハロウィン本番だから尚の事、夕方から街は賑わっている。
勿論、僕は街に出ない心算だ。
ところが……。
「とりっくおあとりーとー!」たどたどしい発音で決まり文句を言いながら、僕の家のドアを叩いたのは、小さな小さな魔女だった。ローブを着ていると言うよりは埋もれているんじゃないかという様な有様だ。やはり大きな三角帽子の下から覗くのはくりっとした円らな瞳。小さな鼻の周りに散る雀斑は、寧ろ愛嬌だろう。
他に子供の姿は無く、僕はこんな小さな子供を一人で歩かせる良識のなさに憤慨した。
「えと、とりっくおあとりーとー!」僕が反応しないからか、彼女は今一度、それを繰り返した。「お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞー! ……だよね?」
うんうん、文句は間違ってない。只間違っているのは、こんな街外れにひっそりと籠もっている様な奴の所に、小さな子供が一人で来るもんじゃない、いや、行かせるもんじゃないという事だ。
「君一人かい?」僕は尋ねた。「一緒に回ってくれる子は居なかったのかい? お母さん達は?」
「えと、ママ達は忙しいんだって。来る子供達を驚かすんだって」
つくづく良識のない親だな。
「お友達もね、驚かす方が楽しいんだって。でも、あたしはお菓子が欲しかったの」
「そうか。んん、残念だが、うちにはお菓子は無いな。もっとこう、ハロウィンらしい飾り付けをしてある家を訪ねた方がいいんじゃないかな?」
ちっこい魔女は可愛らしく小首を傾げた。
「えと……お兄ちゃん、ハロウィンっぽいよ?」
「……いや、これは……地だから」言葉に困りつつ、僕は苦笑する。「ほら、街の方迄送ってあげるから」
こくり、と頷いてちび魔女は地面に擦らんばかりにバスケットを振り回しつつ、踵を返した。
街には様々なモンスターが闊歩していた。
吸血鬼、狼男、フランケン……ベタな奴等だ。変わり所で宇宙人。あれ、モンスターか?
街迄行けば人が居る。見回っている大人達も居るのだから、送り届けさえすればいいだろう。僕はそう高を括っていたのだが、ちび魔女はここ迄繋いできた僕の手を放そうとしない。あんな街外れの家を訪ねて来た癖に、街中の如何にも子供大歓迎! って飾り付けの家のドアを叩くのに躊躇するなんて、本当に子供は解らない。
結局僕は彼女の手を引いて、バスケットがクッキーやキャンディーで一杯になる迄、街を歩き回る羽目となってしまった。僕達が訪ねると、家の住人達はこぞって仮装を褒め、お菓子を弾んでくれた。
……思ったより、楽しいかも知れない。ハロウィン。
そんなこんなで夜も更け、僕はうつらうつらし出した魔女に、家に帰るよう促した。そろそろ、魔法の夜も終わりだ、と。
「えと、お兄ちゃん、今夜はありがとね」にっこり笑って、ちび魔女はバスケットから一握りのお菓子を――小さな手での精一杯の一握りは、キャンディーとクッキーが一個ずつだったけれど――僕に差し出した。「えと、お土産!」
お土産じゃなくてお裾分けだろうと訂正しつつも、僕は礼を言ってそれを受け取った。
「家は何処なんだい? もう遅いし、送るよ」
「大丈夫なの。呼んだら来てくれるの」
なるほど、こんな小さな子供でも携帯とやらを持っている時代なのか。僕がそう感心していると、やにわにちび魔女はポケットから取り出した笛を吹き鳴らした。
は?――呆然とする間もなく、上空から何かが近付く気配。振り仰いで見れば、古式ゆかしき正装を、箒に乗った、魔女。彼女は地に降り立つと、僕に一礼してちび魔女を前に乗せ、再び空中に浮かんだ。
……仮装じゃなかったんだ。
まぁ、それは……僕も同じだけど。
道理で彼女の親や友達も付いて来ない訳だ。魔女なんてちっこく見えても子供とは限らない。尤も、精神年齢は外見に比例するんじゃないかと、僕は常々思っているけど。
「ありがとねー! カボチャ頭のお兄ちゃーん!」そう言って遠ざかって行く魔女達を見送って、僕は帰途に着いた。
さて、僕も仮装の振りをして……子供達でも驚かそうかな?
―了―
やっぱりやってしまう、ハロウィンネタ(笑)
本物が紛れ込んでたら面白いのにな~(?)
七五三……はどうするべ?(^^;)
なにしろ、堂々と縁も所縁も面識も無い他人の家に訪問出来るんだから。
実際、日本人の留学生が銃殺されたなんて話もあるしね。
最早、他人との関わりが薄れて、核家族化が進み、ご近所に住んでいる人の素性が分からなくなってきてる現代では、規制すべきイベントなのかもね。
実際、日本では、無理に定着して欲しくはないイベントではあるな。
実際、勝手知った仲間内なら兎も角、他人の家を回るのは色々と厄介事の元かな、という気もしますね。それこそ、どんな人が居るかも解らないし。
でも、お菓子を欲しがるのは人間に近い妖かな? 魔女とか。
狼男君だと……。
家の人「まぁ、可愛らしい狼男さんだ事。はい、お菓子」
狼「お菓子より生肉の方が……あ、いや、ごにょごにょ……」
(笑)
イベント面ばかりが表に出ていて、元々の意味が解り難いお祭ではありますよね。それはクリスマスなんかも同じかぁ(笑)