〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
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昨日は勇輝は閉店する心算だった――なのに、気が変わったのか未だやる心算らしい、と京はぼやいた。
「閉店? いや、それ以前に勇輝が何の店をやってたのさ?」僕は目を丸くして訊いた。僕達の同級生、詰まりは学生である知多勇輝が店など営業出来るものだろうか?
「それがなかなか尻尾を掴ませなくてな」京は眉間に皺を寄せた。「何を売り物にしているのかが解らないんだ。だが、あいつの部屋に出入りしている同級生や下級生からは、某かの見返りを受けているらしい。要するに商売をしている訳だ」
「見返り……ねぇ」僕は首を捻る。「一体どんな? やっぱりお金?」
「これが学生の分際であからさまに金を取っているんだったら問答無用で締め上げてやるんだがな……」些か口惜しげに京は溜息をつく。「学食の定食だったり、自販機のジュースだったり……まぁ、金は掛かってるんだが、実に小額なんだよな。友達同士の奢りと言われたらそれ迄って程度だ。それでも同級生は兎も角、下級生からもってのはやっぱりどこか不自然だろう?」
「確かに……。勇輝は特に部活もやってないし、下級生との接点がどこにあるのかも……」
「だろう?」
それで京は問い詰めたらしい。何故、そんなに皆から奢って貰っているのか、と。京の事だから例によって正面から問い質したのだろう。
勇輝には寮の纏め役は友人の管理迄するのか? と皮肉られたそうだけど、ともあれ、お金の掛かる事でもあるし、断るようにする、とは言っていたらしい――それが京の言う所の閉店、という事らしい。
なのにやる心算らしいという事は、また誰かに何か奢られていたのか……?
「閉店? いや、それ以前に勇輝が何の店をやってたのさ?」僕は目を丸くして訊いた。僕達の同級生、詰まりは学生である知多勇輝が店など営業出来るものだろうか?
「それがなかなか尻尾を掴ませなくてな」京は眉間に皺を寄せた。「何を売り物にしているのかが解らないんだ。だが、あいつの部屋に出入りしている同級生や下級生からは、某かの見返りを受けているらしい。要するに商売をしている訳だ」
「見返り……ねぇ」僕は首を捻る。「一体どんな? やっぱりお金?」
「これが学生の分際であからさまに金を取っているんだったら問答無用で締め上げてやるんだがな……」些か口惜しげに京は溜息をつく。「学食の定食だったり、自販機のジュースだったり……まぁ、金は掛かってるんだが、実に小額なんだよな。友達同士の奢りと言われたらそれ迄って程度だ。それでも同級生は兎も角、下級生からもってのはやっぱりどこか不自然だろう?」
「確かに……。勇輝は特に部活もやってないし、下級生との接点がどこにあるのかも……」
「だろう?」
それで京は問い詰めたらしい。何故、そんなに皆から奢って貰っているのか、と。京の事だから例によって正面から問い質したのだろう。
勇輝には寮の纏め役は友人の管理迄するのか? と皮肉られたそうだけど、ともあれ、お金の掛かる事でもあるし、断るようにする、とは言っていたらしい――それが京の言う所の閉店、という事らしい。
なのにやる心算らしいという事は、また誰かに何か奢られていたのか……?
「その奢っていた方に訊けばいいんじゃないか?」僕は言った。
「俺が訊いてないとでも思うか?」
「いや、ごめん。愚問だった」僕は先を促した。
奢っていた、あるいは大して接点もない筈なのに勇輝の部屋に出入りしていた生徒をとっ捕まえ、京は問い質したらしい。相手の生徒に少々、同情する。
ところが嫌味ったらしいと評判の京の尋問口調にも、彼等は一貫して只の友人同士の奢りだと主張したそうだ。
「本当に只の奢りって事は……」京の眉間の皺が深くなり、横目がじろりと僕を睨む。「ないよね。下級生からなんて僕でも奢って貰おうとは思わないし」
しかし、彼等――仮定としての客――が、もし何らかの利益を得て、その見返りとして勇輝に奢っているのだとして……その利益って何だろう? それが詰まりは京も解らないと言う「売り物」なんだろうけど、客もそれを隠そうとするのは何故だ? 寮内で商売なんて当然禁止だから、京には知られたくないっていうのは勿論あるだろうけど。
「何か……ばれちゃ拙い物じゃないよね?」僕は恐る恐る言った。
京は暫し考えた後に、首を横に振る。
「勇輝はまぁ、真面目とは言い難い所もあるが、違法な事に手を出すような馬鹿じゃあない。精々、寮規に反する程度だ――それも充分、問題だがな」
何だかんだ言いつつも、友人を信用してはいるらしい兄に、僕はほっとした。
「でも、一旦は止めると言ったのをまた直ぐやってるなんて……どういう事なんだろう?」
「余程客の需要があるのか……。全く。新学期も始まって、時期に試験もあると言うのに……」京は愚痴る。
「試験……」僕は呟いた。
と、同時に京も気付いた様で、僕等は顔を見合わせた。
『試験問題か!』
勿論、本当に出題される試験問題ではない。恐らくは去年出された問題を基にした例題だ。当然同じ様な問題が出るとは限らないけれど、各教師の出題傾向位は測れるかも知れない。何より、どこに焦点を置いて勉強すればいいか解らないよりは、ある程度絞れればましというものだ。
だからこそ、見返りは小額なのかも知れない。
下級生には去年僕達が受けた試験を元に、例題を作ったのだろう。
そして同級生には――。
「あいつ、一学年上の彼女が居るからなぁ。傾向位は入手出来るだろうな」京は唸る。
「どうする? 結果的には試験勉強に繋がってる訳だけど……」僕は苦笑した。
やはり、唸る、京。
「それならそれで無償でやればいいじゃあないか!」あ。切れた。
「まぁ、でも問題をコピーしたり、色々手間も掛かってるかも知れないし」僕は宥める。
「コピー代なんてたかが知れてるだろうが」
「枚数にもよると思うけど」
「祥! どっちの味方だ!?」
そんな不毛な会話をしていると、通り掛った栗栖に笑われた。
何が可笑しい、と食って掛かる京に、いつもの柔らかい関西弁で、彼はこう言った。
「勇輝の事やったら、半ば無理に奢られて困ってるみたいやで。世話になった方はなった方で何のお礼も無しやと落ち着かへんみたいやし。形だけでジュース奢って貰うたら皆それを真似出して、断り切れなくなったんやて。どないにかしたりや、纏め役さん」
最初から勇輝と仲のいい栗栖に訊いた方が早かったんじゃあないか、という言葉は京の前では禁句としよう――僕は固く誓った。
そんなに試験勉強がしたければ場所を用意してやるから皆で貸し借りなしにしろ! という京の意向で図書室を借りたらしいが……。
京? 夏休み終了間際の時の轍をまた踏むかい?
―了―
京は懲りるという事を知りません(笑)
「俺が訊いてないとでも思うか?」
「いや、ごめん。愚問だった」僕は先を促した。
奢っていた、あるいは大して接点もない筈なのに勇輝の部屋に出入りしていた生徒をとっ捕まえ、京は問い質したらしい。相手の生徒に少々、同情する。
ところが嫌味ったらしいと評判の京の尋問口調にも、彼等は一貫して只の友人同士の奢りだと主張したそうだ。
「本当に只の奢りって事は……」京の眉間の皺が深くなり、横目がじろりと僕を睨む。「ないよね。下級生からなんて僕でも奢って貰おうとは思わないし」
しかし、彼等――仮定としての客――が、もし何らかの利益を得て、その見返りとして勇輝に奢っているのだとして……その利益って何だろう? それが詰まりは京も解らないと言う「売り物」なんだろうけど、客もそれを隠そうとするのは何故だ? 寮内で商売なんて当然禁止だから、京には知られたくないっていうのは勿論あるだろうけど。
「何か……ばれちゃ拙い物じゃないよね?」僕は恐る恐る言った。
京は暫し考えた後に、首を横に振る。
「勇輝はまぁ、真面目とは言い難い所もあるが、違法な事に手を出すような馬鹿じゃあない。精々、寮規に反する程度だ――それも充分、問題だがな」
何だかんだ言いつつも、友人を信用してはいるらしい兄に、僕はほっとした。
「でも、一旦は止めると言ったのをまた直ぐやってるなんて……どういう事なんだろう?」
「余程客の需要があるのか……。全く。新学期も始まって、時期に試験もあると言うのに……」京は愚痴る。
「試験……」僕は呟いた。
と、同時に京も気付いた様で、僕等は顔を見合わせた。
『試験問題か!』
勿論、本当に出題される試験問題ではない。恐らくは去年出された問題を基にした例題だ。当然同じ様な問題が出るとは限らないけれど、各教師の出題傾向位は測れるかも知れない。何より、どこに焦点を置いて勉強すればいいか解らないよりは、ある程度絞れればましというものだ。
だからこそ、見返りは小額なのかも知れない。
下級生には去年僕達が受けた試験を元に、例題を作ったのだろう。
そして同級生には――。
「あいつ、一学年上の彼女が居るからなぁ。傾向位は入手出来るだろうな」京は唸る。
「どうする? 結果的には試験勉強に繋がってる訳だけど……」僕は苦笑した。
やはり、唸る、京。
「それならそれで無償でやればいいじゃあないか!」あ。切れた。
「まぁ、でも問題をコピーしたり、色々手間も掛かってるかも知れないし」僕は宥める。
「コピー代なんてたかが知れてるだろうが」
「枚数にもよると思うけど」
「祥! どっちの味方だ!?」
そんな不毛な会話をしていると、通り掛った栗栖に笑われた。
何が可笑しい、と食って掛かる京に、いつもの柔らかい関西弁で、彼はこう言った。
「勇輝の事やったら、半ば無理に奢られて困ってるみたいやで。世話になった方はなった方で何のお礼も無しやと落ち着かへんみたいやし。形だけでジュース奢って貰うたら皆それを真似出して、断り切れなくなったんやて。どないにかしたりや、纏め役さん」
最初から勇輝と仲のいい栗栖に訊いた方が早かったんじゃあないか、という言葉は京の前では禁句としよう――僕は固く誓った。
そんなに試験勉強がしたければ場所を用意してやるから皆で貸し借りなしにしろ! という京の意向で図書室を借りたらしいが……。
京? 夏休み終了間際の時の轍をまた踏むかい?
―了―
京は懲りるという事を知りません(笑)
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Re:無題
それは流石に京の勉強会だけじゃ済まなくなるっす!(爆)
Re:おはようございます(^^)
京、身近に居たら大変だと思いますよ~?(^^;)
先生にも構わず突撃質問するし(爆)
先生にも構わず突撃質問するし(爆)
おはよう!
なぁんだ、売っているものは、京の出没情報とか、そんなんだと思った。←どんだけ煙たがられているんだ京(笑)
試験問題とかなら、他の生徒でも入手出来そうだけどなぁ、部活繋がりとか。
あと、勉強のツボなんてのも、勉強出来るヤツだと、かなりの確率で当たるのではないかと。
だって、試験問題って勉強できないヤツにあわせて作るからさぁ。
ねぇ、つきみぃさん、・・・お疲れ様。(笑)
試験問題とかなら、他の生徒でも入手出来そうだけどなぁ、部活繋がりとか。
あと、勉強のツボなんてのも、勉強出来るヤツだと、かなりの確率で当たるのではないかと。
だって、試験問題って勉強できないヤツにあわせて作るからさぁ。
ねぇ、つきみぃさん、・・・お疲れ様。(笑)
Re:おはよう!
京の出没情報!! それも生徒達には切実かも知れん!(爆)
本当、先生も大変ですよね。点は取って貰いたいけど、余りレベルを下げる訳にも行かないし……。
本当、先生も大変ですよね。点は取って貰いたいけど、余りレベルを下げる訳にも行かないし……。
Re:こんばんは
しかし、京が行かない訳はないのです!(爆)
試験勉強~もう少ししとけばよかったと思う頃にはもう遅い(笑)
試験勉強~もう少ししとけばよかったと思う頃にはもう遅い(笑)
Re:こんにちは♪
京、悪い奴じゃないけど、懲りるという事を知りません(笑)