〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
Admin
Link
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
京は、両親の来訪を目前にしながらも特別な対策をしなかった。進路相談の為とは言え、僕達の両親がこの学園を訪れるなど、珍しい事だった。だから僕としてはかなり緊張していたのだけれど。
それで学園近くの雑貨屋、亀池屋で何か気の利いた物でも用意しようとして、店長を質問攻めにし――好奇心も程々に、とか注意された。
それで偶々店内に居た夜霧――夜原霧枝先生――は、僕を一瞥したけれど……何も言わなかったのは何でだろう?
それで学園近くの雑貨屋、亀池屋で何か気の利いた物でも用意しようとして、店長を質問攻めにし――好奇心も程々に、とか注意された。
それで偶々店内に居た夜霧――夜原霧枝先生――は、僕を一瞥したけれど……何も言わなかったのは何でだろう?
「係わり合いになりたくなかったんじゃないか?」寮に戻った僕の話を聞いた京は、呆れ顔で言った。「余所の生徒です――とか」
「あの店に行くのはここの生徒位だよ。山の中だし」
「当たり前だ。言葉の綾って奴だ」双子の兄貴は小馬鹿にした様に、鼻を鳴らす。「大体、何だってそんな注意を受ける程、しつこく訊いて回ってたんだ? あそこに売ってる物なんて、たかが知れてる。拘る程の物も無いだろう」
「いや、やっぱ材質とか、丈夫さとか……」
「……何を探してたんだ?」
「いや、お揃いの万年筆でもと思ったんだけど……。いい物は高いね」僕は苦笑する。結局、僕はシンプルながらちょっとお洒落なボールペンを、プレゼント用にと包んで貰った。「京が少し出してくれれば、もうちょっといい物も選べたのに……」
恨み言めかした冗談に、京は肩を竦めた。
「だから、特別な事なんてしなくていいって言っただろう?」
そう。店に行く前に、一応京にも相談はしたのだ。どこかで何か買って置かないかって。結局、京はこんな調子だし、僕も他に思い付かなくて、亀池屋で探す事になったんだけど。
「偶に会うんだからさ、何かこう……。何かしたかったんだよ」僕はちょっと、肩を落とす。「子供っぽいかも知れないけど……」
「……ま、偶にはな」嘯いて、京は途中迄読んでいた本へと視線を戻した。
それにしても、夜霧は何故何も言わなかったんだろう?――落ち着くと、結局僕の思考はそこへと戻って行った。
気分屋で思った事は直ぐに顔と口に出す夜霧の事、自分の生徒が注意を受けている場面になど遭遇したら、一緒になって怒るか、少なくとも何があったのか質しに来るだろう……何にせよ、一瞥だけで済むとは思えないのだけれど。
それとも本当に京の言う様に、係わり合いを避けられたのか?――真逆。良くも悪くも、計算なんてしないのが、夜霧だ。
そしてもう一人、ある意味計算なんて気にしないのが、うちの兄貴だった。
「気になるんなら訊いてみればいいじゃないか」きっぱりとそう言ってくれる。
「いや、それも何か……蒸し返すみたいで……」僕は苦笑いする。小言を言われている場面など、先生がスルーしてくれたのはある意味有難い事だし。
「なら、気にするな」煮え切らない奴だ、と言いたげに眉間に皺を寄せ、京は言う。「ごちゃごちゃ言うから、俺迄気になってきたじゃないか。訊くからな」
「ええっ!」
慌てて止める間もあらばこそ、京は携帯を取り出すと、短縮ボタンを――登録してるのかよ。夜霧の番号を!
呆れている間にも二人のやり取りはあっさりと済み、京は携帯を閉じて、ふぅ、と態とらしく溜め息をついた。
「何の事はない。お前がやけに真剣に贈り物を探しているから、女子にでもプレゼントするのかと思って――まぁ、自分が関わっては話が大きくなるだろうと、敢えて黙ってたそうだ。武士の情け、だとさ」
「女子に……!? そんな相手居ないし……!」僕は唖然とする。「……って、夜霧、うちの両親が来るのは当然知ってるよね? 担任なんだから!」
「そこが夜霧の天然ボケだな」京は妙に納得した様子で、一人頷いている。「両親への贈り物だって言ったら『何だ、それなら情け不要だったわね』だとさ」
夜霧の誤解は、この場合、有難かったのかも知れない。
僕は溜め息をついて幸運に感謝し――しかし、面談の際に彼女が今回の事を思い出さないで欲しいと、天に祈ったのだった。
―了―
京……夜霧直通かい(^^;)
まぁ、クラス委員でもあるしー。
「あの店に行くのはここの生徒位だよ。山の中だし」
「当たり前だ。言葉の綾って奴だ」双子の兄貴は小馬鹿にした様に、鼻を鳴らす。「大体、何だってそんな注意を受ける程、しつこく訊いて回ってたんだ? あそこに売ってる物なんて、たかが知れてる。拘る程の物も無いだろう」
「いや、やっぱ材質とか、丈夫さとか……」
「……何を探してたんだ?」
「いや、お揃いの万年筆でもと思ったんだけど……。いい物は高いね」僕は苦笑する。結局、僕はシンプルながらちょっとお洒落なボールペンを、プレゼント用にと包んで貰った。「京が少し出してくれれば、もうちょっといい物も選べたのに……」
恨み言めかした冗談に、京は肩を竦めた。
「だから、特別な事なんてしなくていいって言っただろう?」
そう。店に行く前に、一応京にも相談はしたのだ。どこかで何か買って置かないかって。結局、京はこんな調子だし、僕も他に思い付かなくて、亀池屋で探す事になったんだけど。
「偶に会うんだからさ、何かこう……。何かしたかったんだよ」僕はちょっと、肩を落とす。「子供っぽいかも知れないけど……」
「……ま、偶にはな」嘯いて、京は途中迄読んでいた本へと視線を戻した。
それにしても、夜霧は何故何も言わなかったんだろう?――落ち着くと、結局僕の思考はそこへと戻って行った。
気分屋で思った事は直ぐに顔と口に出す夜霧の事、自分の生徒が注意を受けている場面になど遭遇したら、一緒になって怒るか、少なくとも何があったのか質しに来るだろう……何にせよ、一瞥だけで済むとは思えないのだけれど。
それとも本当に京の言う様に、係わり合いを避けられたのか?――真逆。良くも悪くも、計算なんてしないのが、夜霧だ。
そしてもう一人、ある意味計算なんて気にしないのが、うちの兄貴だった。
「気になるんなら訊いてみればいいじゃないか」きっぱりとそう言ってくれる。
「いや、それも何か……蒸し返すみたいで……」僕は苦笑いする。小言を言われている場面など、先生がスルーしてくれたのはある意味有難い事だし。
「なら、気にするな」煮え切らない奴だ、と言いたげに眉間に皺を寄せ、京は言う。「ごちゃごちゃ言うから、俺迄気になってきたじゃないか。訊くからな」
「ええっ!」
慌てて止める間もあらばこそ、京は携帯を取り出すと、短縮ボタンを――登録してるのかよ。夜霧の番号を!
呆れている間にも二人のやり取りはあっさりと済み、京は携帯を閉じて、ふぅ、と態とらしく溜め息をついた。
「何の事はない。お前がやけに真剣に贈り物を探しているから、女子にでもプレゼントするのかと思って――まぁ、自分が関わっては話が大きくなるだろうと、敢えて黙ってたそうだ。武士の情け、だとさ」
「女子に……!? そんな相手居ないし……!」僕は唖然とする。「……って、夜霧、うちの両親が来るのは当然知ってるよね? 担任なんだから!」
「そこが夜霧の天然ボケだな」京は妙に納得した様子で、一人頷いている。「両親への贈り物だって言ったら『何だ、それなら情け不要だったわね』だとさ」
夜霧の誤解は、この場合、有難かったのかも知れない。
僕は溜め息をついて幸運に感謝し――しかし、面談の際に彼女が今回の事を思い出さないで欲しいと、天に祈ったのだった。
―了―
京……夜霧直通かい(^^;)
まぁ、クラス委員でもあるしー。
PR
この記事にコメントする
Re:質問するの?
するよ~。
もうガンガンするよ☆
もうガンガンするよ☆
Re:こんにちは
夜霧先生と京、似たもの同士っすからね~(笑)
大きなトラブル希望っすか!(^^;)
大きなトラブル希望っすか!(^^;)
Re:こんばんわぁ~
滅多に会えない所為もあって、祥君、ちょっと気負い気味です(笑)
夜霧先生、気を利かせつつ……天然ボケ(^^;)
夜霧先生、気を利かせつつ……天然ボケ(^^;)
Re:こんばんは♪
はっ∑( ̄□ ̄;)
対策しなかった京の立場は……(笑)
まぁ、京の場合は成績や日頃の行いで返せばいいやっていう考えですが。
対策しなかった京の立場は……(笑)
まぁ、京の場合は成績や日頃の行いで返せばいいやっていう考えですが。