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夜霧――夜原霧枝先生――が貴田月夜と組む羽目になった学園主催の販売会……要するにフリーマーケットはもう終了したかも――。
それでも今回ばかりは、関係ありはしなかった。僕は自分のクラスの催しが終わると、急いで販売会場へと向かった。
それで二人が休息に行った事を聞かされた。
「何か、君から電話があったからって待ってたのに、なかなか来ないからって、不機嫌そうに行っちゃったよ?」留守番の先生が心配そうにそう囁く。「で? 何を探してたんだい?――見当たらないなぁ。もう売っちゃったのかな、夜霧先生」
「そうですか」僕は肩を落とした。「でも、さっさと休息へ行っちゃうなんて……。言い訳位はしたいです」
「ああ、それなら……屋台の方へ行くって言ってたから、捜してみたら?」
そう言う先生にぺこりと頭を下げて、僕は駆け出した。
この週末、我が学園ではチャリティー関連の催しが行われていた。感覚的にはちょっと大規模な文化祭といった所か。一般に開放して英語劇やら研究発表やらを行っていたのだ。
只、如何せん、この学園は山の中。勿論父兄には予め知らされているが、一般の人がちょっと立ち寄るには立地条件はよくない。そこで生徒が作った物等を並べた販売会場及び屋台は山麓の街の広場を借り受けていた。学園と会場間の移動にはマイクロバスも使われていたけれど、それは殆どお客様用。僕は自転車で――安全な速度と法規を守りつつも――急いで降りて来たのだった。
「あ! 真田弟、今頃来たの?」焼きそばの屋台に居るのを見付け、駆け寄った僕に開口一番、夜霧はそう言った。一緒に居た筈の月夜は別の店に行ったのか、取り敢えず姿は見えない。
「これでも出し物終わってから、急いで来たんですよ」大きく息をつきながら、僕は思わず脱力する。「もう売れちゃいましたか?」
少なくとも売り場には無かった。それでも一縷の望みを掛けて――と言うか、諦め悪く、僕はそう尋ねた。
丸で焦らすかの様に屋台で五千円札を出してのんびり焼きそばを買った後に、やっと振り返って夜霧は言った。
「ええ。売っちゃったわよ」
そしてがっくりと肩を落とす僕の視線を誘導する様に、立てた人差し指をすっと、横にスライドさせた。
「あっちの……真田兄に」
そこでは僕の双子の兄、京が月夜と共にたこ焼きの屋台に並んでいた。
「いつの間に来たんだよ、京?」僕の頬が膨れているのは、決して熱いたこ焼きを慌てて食べてしまった所為だけじゃあない。「同じクラスで、出し物が終わる迄一緒に居たじゃないか。何で先に来てるんだよ?」
「それは勿論――」京は何を当たり前の事をと言いたげな顔で宣った。「バスで来たんじゃないか」
「あれは一般のお客さん用だから、生徒は自粛するように……って、言ってたのは何処の誰だっけ?」
「その一般のお客様――正確にはお婆さんが場所が解らなくて困っておられたから、一緒に乗ってお教えしようと……。やはり日頃の行いの差だな、祥」言って、京はにやりと笑う。「お年寄りには親切にして置くもんだ」
ぐ……と僕は言葉に詰まる。
元はと言えば、僕が京の失敗作を出品用と一緒に出してしまった所為なんだけど……。そして人一倍、失敗を人に見られたくない、この見栄っ張りの兄貴に怒鳴られた所為なんだけど……。
僕はぐったりと、広場に設置された丸テーブルに突っ伏した。
「こら、寝るな。未だ午後の部があるんだぞ?」こんこんと、京が僕の頭をノックする。
僕の休息時間は、こうして潰れたのだった。
―了―
お疲れさ~ん(^^;)
特に主役ではない様な……? 寧ろ影薄い……?(爆)
京は……こういう奴だよね~(笑)