〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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昨日夜霧が、実家に連絡したいなぁ、と呟いていた。
それと言うのも実家には齢九十を越えた祖父がおられ、長年自宅療養を続けてこられたそうだが、いよいよかも知れないという電話を、一昨日の夜に受けたらしい。小さい頃可愛がられたそうで、直ぐにでも会いに行きたそうだったが、実家には苦手な相手も居るらしい。
それで昨日の夜、夜霧が姪――美衣ちゃんというそうだ――と老人宅へ行った時、駐車場への案内を必要としないですと、断ったそうだ。その相手に。
夜霧が苦手とする相手。
気にならない訳がない。しかしそれとなく尋ねる心算だったのに兄貴を同行させたのは、僕のミスだろうか?
「どういう人が苦手なんですか?」今日も直球勝負だぞ、京。
流石に夜霧も苦笑して、それでも話してはくれた。
兄貴を同行させたのは、結果オーライだったかも知れない。
それと言うのも実家には齢九十を越えた祖父がおられ、長年自宅療養を続けてこられたそうだが、いよいよかも知れないという電話を、一昨日の夜に受けたらしい。小さい頃可愛がられたそうで、直ぐにでも会いに行きたそうだったが、実家には苦手な相手も居るらしい。
それで昨日の夜、夜霧が姪――美衣ちゃんというそうだ――と老人宅へ行った時、駐車場への案内を必要としないですと、断ったそうだ。その相手に。
夜霧が苦手とする相手。
気にならない訳がない。しかしそれとなく尋ねる心算だったのに兄貴を同行させたのは、僕のミスだろうか?
「どういう人が苦手なんですか?」今日も直球勝負だぞ、京。
流石に夜霧も苦笑して、それでも話してはくれた。
兄貴を同行させたのは、結果オーライだったかも知れない。
「ご家族の方じゃないんですか? その苦手な人って」
京の言葉にまた苦笑を浮かべ、夜霧は答えた。
「苦手な人って訳じゃあないわ。家族って言えば家族なんでしょうね。血は繋がってないけど。勿論」
僕達は顔を見合わせた。
家族にも色んな形態はある。血の繋がらない親子だって家族だ。けど、勿論って?
「その……どんな所が苦手なんですか?」僕は尋ねた。
「そうね……煩くて、声が大きくて、人の顔を見ると遊んで貰おうと思って飛び付いて来る所とか」
小さい子供だろうか。夜霧の所は二人姉妹で、お姉さんの娘さんが同行した姪御さん――彼女だけだと聞いた覚えがあったんだけど、未だ小さい子供が居たんだろうか。
「後、遊んでると直ぐ涎で服とか汚されちゃう事。どれだけ遊んでもなかなか飽きなくて、こっちがへとへとになっちゃう事。かと言って放って置くとわんわん煩い事」
やっぱり幼児の特徴の様に思える。
只、そんな幼児が駐車場への案内をしようとするだろうか? いや、周りの大人がするのを見て真似をしようとする可能性はある。そして危険だからこそ、夜霧はそれを断るという形で回避した。
辻褄は合う……様な気がした。
「未だ小さい子供さんですか?」京も同じ事を考えていたのだろう。そう尋ねた。
すると夜霧は首を横に振った。
「祖父が連れてきてから……かれこれ十年は経つんじゃないかしら?」
僕達はまた、顔を見合わせた。
十歳以上? となると流石に幼児とは言えない。落ち着きの無い子供というのは存在するけれど、それとも違うだろう。
そうして二人で首を捻っていると、栗栖の笑い声が耳に届いた。
「何だ? 間宮栗栖」噛み付く様に、京が言う。「何が可笑しい」
「や、二人しておんなじ顔して、眉間に皺寄せてはるから……」こちらに来ながらも笑いは止めず栗栖は言った。
僕は慌てて眉間に寄った皺を隠す。ここは似たくないんだってば。
「それにしても先生、お人が悪いなぁ」夜霧に向かって、そんな事を言う。
と、夜霧も悪戯っぽい笑みを浮かべ、答える。
「嘘は言ってないわよ? 何にも」
「どういう事なんだ? 栗栖!」京が割って入る。
「京、最初から会話を思い返してみ?」
そう言われて京も僕も、暫し会話を反芻する。
『ご家族の人じゃないんですか? その苦手な人って』
『苦手な人って訳じゃあないわ。家族って言えば家族なんでしょうね。血は繋がってないけど。勿論』
「京達は苦手な相手の話をしてたんやろう? せやのに、苦手な人ちゅう訳やないと言う。苦手なんが不動の条件やとしたら、夜霧が違う言うたんは『人』っちゅう事になるな」
「な……!」京が声を上げたけど、僕は「しっ!」とそれを押し留めた。
「家族と言えば家族の一員。せやけど血は繋がってない。これも人やなかったら、当然や。ペットは家族やけど、血は繋がってへんもんなぁ」
「ペット……?」僕は拍子の抜けた声を出しながらも、納得していた。
確かにそれなら条件は合う。そして先の特徴から考えられるそのペットは……。
「もしかして、犬?」
「煩い、声が大きい、遊んで貰おう思て飛び付いて来る。遊んどったら涎で汚される。こっちがへとへとになる。何より放って置くとわんわん煩い」指折りそう言って、遂に栗栖は笑い出した。「確かに、嘘は言うてませんね、先生は」
「でしょ?」夜霧も微苦笑を浮かべる。「二人共、人だと思い込んでるものだから。ついあんな言い方しちゃった」
この気分屋教師……!
「まぁ、駐車場の案内を断ったんは二人が想像した様な子供の場合と変わりなかったんでしょう? 犬って人の先導をしたがる所があるけど、車の出入りの多い駐車場は危ないもんなぁ」
「まぁね。苦手は苦手だけど……家族には違いないから」そう言って、夜霧は笑った。
その笑顔に毒気を抜かれて怒鳴れなかった京が、寮に戻ってから職権濫用すれすれの怒鳴り散らし方をしていたのは内緒……にしようがない。
やれやれ。
―了―
メンテ後の投稿は注意! と思っていたのに、うっかりその儘保存をクリックし……いっぺん消えました(T-T)
京の言葉にまた苦笑を浮かべ、夜霧は答えた。
「苦手な人って訳じゃあないわ。家族って言えば家族なんでしょうね。血は繋がってないけど。勿論」
僕達は顔を見合わせた。
家族にも色んな形態はある。血の繋がらない親子だって家族だ。けど、勿論って?
「その……どんな所が苦手なんですか?」僕は尋ねた。
「そうね……煩くて、声が大きくて、人の顔を見ると遊んで貰おうと思って飛び付いて来る所とか」
小さい子供だろうか。夜霧の所は二人姉妹で、お姉さんの娘さんが同行した姪御さん――彼女だけだと聞いた覚えがあったんだけど、未だ小さい子供が居たんだろうか。
「後、遊んでると直ぐ涎で服とか汚されちゃう事。どれだけ遊んでもなかなか飽きなくて、こっちがへとへとになっちゃう事。かと言って放って置くとわんわん煩い事」
やっぱり幼児の特徴の様に思える。
只、そんな幼児が駐車場への案内をしようとするだろうか? いや、周りの大人がするのを見て真似をしようとする可能性はある。そして危険だからこそ、夜霧はそれを断るという形で回避した。
辻褄は合う……様な気がした。
「未だ小さい子供さんですか?」京も同じ事を考えていたのだろう。そう尋ねた。
すると夜霧は首を横に振った。
「祖父が連れてきてから……かれこれ十年は経つんじゃないかしら?」
僕達はまた、顔を見合わせた。
十歳以上? となると流石に幼児とは言えない。落ち着きの無い子供というのは存在するけれど、それとも違うだろう。
そうして二人で首を捻っていると、栗栖の笑い声が耳に届いた。
「何だ? 間宮栗栖」噛み付く様に、京が言う。「何が可笑しい」
「や、二人しておんなじ顔して、眉間に皺寄せてはるから……」こちらに来ながらも笑いは止めず栗栖は言った。
僕は慌てて眉間に寄った皺を隠す。ここは似たくないんだってば。
「それにしても先生、お人が悪いなぁ」夜霧に向かって、そんな事を言う。
と、夜霧も悪戯っぽい笑みを浮かべ、答える。
「嘘は言ってないわよ? 何にも」
「どういう事なんだ? 栗栖!」京が割って入る。
「京、最初から会話を思い返してみ?」
そう言われて京も僕も、暫し会話を反芻する。
『ご家族の人じゃないんですか? その苦手な人って』
『苦手な人って訳じゃあないわ。家族って言えば家族なんでしょうね。血は繋がってないけど。勿論』
「京達は苦手な相手の話をしてたんやろう? せやのに、苦手な人ちゅう訳やないと言う。苦手なんが不動の条件やとしたら、夜霧が違う言うたんは『人』っちゅう事になるな」
「な……!」京が声を上げたけど、僕は「しっ!」とそれを押し留めた。
「家族と言えば家族の一員。せやけど血は繋がってない。これも人やなかったら、当然や。ペットは家族やけど、血は繋がってへんもんなぁ」
「ペット……?」僕は拍子の抜けた声を出しながらも、納得していた。
確かにそれなら条件は合う。そして先の特徴から考えられるそのペットは……。
「もしかして、犬?」
「煩い、声が大きい、遊んで貰おう思て飛び付いて来る。遊んどったら涎で汚される。こっちがへとへとになる。何より放って置くとわんわん煩い」指折りそう言って、遂に栗栖は笑い出した。「確かに、嘘は言うてませんね、先生は」
「でしょ?」夜霧も微苦笑を浮かべる。「二人共、人だと思い込んでるものだから。ついあんな言い方しちゃった」
この気分屋教師……!
「まぁ、駐車場の案内を断ったんは二人が想像した様な子供の場合と変わりなかったんでしょう? 犬って人の先導をしたがる所があるけど、車の出入りの多い駐車場は危ないもんなぁ」
「まぁね。苦手は苦手だけど……家族には違いないから」そう言って、夜霧は笑った。
その笑顔に毒気を抜かれて怒鳴れなかった京が、寮に戻ってから職権濫用すれすれの怒鳴り散らし方をしていたのは内緒……にしようがない。
やれやれ。
―了―
メンテ後の投稿は注意! と思っていたのに、うっかりその儘保存をクリックし……いっぺん消えました(T-T)
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この記事にコメントする
こんばんは☆
今回はわかりましたよ~(^^)
夜霧先生はわんこが苦手なんですねぇ。
遊ぶこと自体は嫌いじゃなさそうですけど☆
・
挑戦状の件。
考えてみれば、そうですよね。先生相手に、下手な作品は送れないですよね……
すみませんでしたm(_ _)m
夜霧先生はわんこが苦手なんですねぇ。
遊ぶこと自体は嫌いじゃなさそうですけど☆
・
挑戦状の件。
考えてみれば、そうですよね。先生相手に、下手な作品は送れないですよね……
すみませんでしたm(_ _)m
Re:こんばんは☆
何せ元が猫の夜霧ですからね~(笑)
因みに私もあんまり突撃方のわんこは……(--;)
因みに私もあんまり突撃方のわんこは……(--;)
無題
どもども!
最初の方で犬だと分かったけど…。
何で二人とも気付かなかったのか、そっちの方が面白かったりしてwww
私も同じ事をしました
今日は管理画面に入ろうとすると、やたらとログインエラーになりません?
最初の方で犬だと分かったけど…。
何で二人とも気付かなかったのか、そっちの方が面白かったりしてwww
私も同じ事をしました
![](/emoji/E/196.gif)
今日は管理画面に入ろうとすると、やたらとログインエラーになりません?
Re:無題
今日もコメレスしようと思ったらログインエラー(T-T)
忍者さん、メンテは改善される方向にのみ、お願いします。
前回もあったんで、気を付けようとは思ってたんだけどな~☆
忍者さん、メンテは改善される方向にのみ、お願いします。
前回もあったんで、気を付けようとは思ってたんだけどな~☆
Re:こんばんは
ちぃっ、ヒント出し過ぎたか(笑)
Re:おはようございます♪
消えると頭の中も真っ白になります……(--;)
突撃型わんこは私も遠慮したい。
あ、にゃんこなら可(←おい)
突撃型わんこは私も遠慮したい。
あ、にゃんこなら可(←おい)
こんにちは♪
ありゃ!災難だったねぇ~!
お疲れ様でした。
夜霧先生も人が悪いネェ~!
犬だと教えてあげれば良いのにネ!
それにしても京君、思い込みが激しいのかな?
わんわん煩いで気がつかなきゃねぇ~!
お疲れ様でした。
夜霧先生も人が悪いネェ~!
犬だと教えてあげれば良いのにネ!
それにしても京君、思い込みが激しいのかな?
わんわん煩いで気がつかなきゃねぇ~!
Re:こんにちは♪
も、慌てて思い出しながら打ち込みましたよ。やっぱりコピーは取っとくべきだな(-。-;)
京の思い込みの強さは天下一品です(笑)
京の思い込みの強さは天下一品です(笑)
こんにちは
消えると暫く立ち直れ無いんだよねぇ。
最近は、用心にメモ帳に下書きするようになったけど、メモ帳がエラー起こしたことも・・・。(T_T)
私も犬って分かった。
やっぱり注射、使わなかったかぁ。(笑)
最近は、用心にメモ帳に下書きするようになったけど、メモ帳がエラー起こしたことも・・・。(T_T)
私も犬って分かった。
やっぱり注射、使わなかったかぁ。(笑)
Re:こんにちは
注射禁止(笑)
消える→頭真っ白→我に返る→慌てて思い出して打つ!
更にメモにコピーして再投稿……して、またエラー(爆)
何度かログインし直しましたよ。やれやれ。やっぱりコピーは大事だわ。
消える→頭真っ白→我に返る→慌てて思い出して打つ!
更にメモにコピーして再投稿……して、またエラー(爆)
何度かログインし直しましたよ。やれやれ。やっぱりコピーは大事だわ。
Re:こんばんは![](/emoji/D/439.gif)
![](/emoji/D/439.gif)
栗栖は高校生なのでお給料が払えません(笑)
てか、将来何になる気なんだろ、彼等(笑)
てか、将来何になる気なんだろ、彼等(笑)
あらぁ~
消えてしまったなんて、ご苦労様です(>_<)
私も時々・・・ もう書く気なくなってしまうけど、流石巽さん^^
私なんて書いたとしても、内容半分に変わってるし。
この勘違いは、私もすぐに分かっちゃいました!
私も時々・・・ もう書く気なくなってしまうけど、流石巽さん^^
私なんて書いたとしても、内容半分に変わってるし。
この勘違いは、私もすぐに分かっちゃいました!
Re:あらぁ~
今回のは流石にバレバレでしたね(^^;)
や~もう、アレは頭真っ白になりますよね!
や~もう、アレは頭真っ白になりますよね!
わんわん
遊んでもらおうと思って飛びついてくるところ、で「おお、これはわんこだな~」と思いました。
小学1年のときに、近所で放し飼いにされてたシェパードに追っかけられて以来、子犬とかチワワみたいなのでも飛びついてこられるのはおっかないです>トラウマ。
それにしても、みぃにゃんの所為で「みい」のつく名前が増えてるような気がする今日このごろ。。。
小学1年のときに、近所で放し飼いにされてたシェパードに追っかけられて以来、子犬とかチワワみたいなのでも飛びついてこられるのはおっかないです>トラウマ。
それにしても、みぃにゃんの所為で「みい」のつく名前が増えてるような気がする今日このごろ。。。
Re:わんわん
確かにみぃにゃん、登場率最近赤丸急上昇!(^^;)
シェパードの放し飼いは怖いよねぇ。幾ら躾けてあっても、小さい女の子から見たら……。飼い主、しっかり責任持って飼え~!
シェパードの放し飼いは怖いよねぇ。幾ら躾けてあっても、小さい女の子から見たら……。飼い主、しっかり責任持って飼え~!
おはよう!
シェパードといえば、私も経験が。
高校の時、朝、登校路の途中に駐車場(庭?)みたいなところに3匹ぐらい放し飼いになっていて、走り回っているの。
一応、金網の塀があるんだけど、高さが2メートルぐらいしかなくて、シェパードだと勢いつければ飛び越えられそうな感じで、恐いの何の。(^_^;)
高校の時、朝、登校路の途中に駐車場(庭?)みたいなところに3匹ぐらい放し飼いになっていて、走り回っているの。
一応、金網の塀があるんだけど、高さが2メートルぐらいしかなくて、シェパードだと勢いつければ飛び越えられそうな感じで、恐いの何の。(^_^;)
Re:おはよう!
シェパードだと、2m位は飛び越えちゃいそうですね。
やっぱり大型犬は怖いなぁ。
やっぱり大型犬は怖いなぁ。