〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「昨日入った堤と、放送すればよかったんじゃないのか? そんなに文句言うならさ」そう言葉を投げ捨てながら、部屋から出て来たのは知多勇輝だった。珍しい事もあるもんだ、と僕は目を丸くする。
それと言うのも彼が出て来たのは放送部の部室。実は席は置いてあるらしいのだけれど、実質幽霊部員の彼が、部活に出ていたのもさる事ながら、彼があんな言い方をする事も滅多に無いからだ。
と、その彼を追って出て来た生徒を見て、僕は更に目を丸くする。
我が双子の兄、真田京だった。因みに彼は放送部ではない。
一方、出て来た二人も僕と鉢合わせして、目を瞬かせていた。
「何か、あったのかい?」成り行きで、僕はそう尋ねていた。
「お前、今日の昼の校内放送、聞いてなかったのか?」眉間に皺を刻んで言ったのは、京だった。尤も、出食わした時点で皺はあったので、きっと僕の所為ではない……多分。
「聞いてたよ」僕は答えた。「休みに備えての注意事項があるからって、京も参加してたんだよね?」
男子寮の纏め役たる京だが、そこ迄する必要があるのかなと、首を傾げながら聞いていたものだった。確かに休みに入れば、実家に帰る生徒も居るし、開放的な気分になるものだけれど。
まぁ、内容的には全てお決まりの文句だった。
休みだからと言って気を緩めるな、に始まって、小学生じゃないんだからそこ迄……といった事迄。
そう言えば今日のメインを勤めた放送部員は――あの声は勇輝だったのか。
しかし、一体何に文句をつけたんだ? 京は。
兎に角落ち着いて話を……と、僕達は学食に移動した。既に放課後。人影は疎らだった。
因みに勇輝が言っていた堤というのは、何を思ったかこの時期に入部希望してきた下級生だそうだ。勿論、未だ放送を任せられる訳もなく、昼休みは放送室の片隅で先輩達の仕事を見学していたそうだ。
「それで、京は何に文句付けてるのさ?」自販機で買った珈琲で喉を湿らせて、僕は改めて尋ねた。
「話を切られたんだ」さも不服そうに、京はそう宣った。「未だ話の途中だったのに」
「それは、放送時間とかあるんだから……」僕は苦笑する。「そうそう長い話をされても困ると思うよ? 放送部も」
「その時間を工面するのも放送部の仕事だろうが。僕が今日出る事は前々から決まっていたし、予め原稿は提出してあったんだからな」
「勇輝の言い分は?」苦笑しながらも、僕は勇輝に話を振った。
それに対する勇輝の答えは素っ気無いものだった。
別に、と。
「別にって……」
「実際話の分量と時間が合わなかっただけだ。かなり細かい事迄あったからなぁ。要らん世話じゃないかって位」
「何を!?」いきり立つ京は紅茶の紙コップを握り潰しそうになっている。僕は慌てて宥める。
「勇輝……。確かに小学生レベルじゃないかって注意もあるにはあったけどさ……」
「何を!?」あ、矛先がこっちに来た。けど、無視。
「要らない世話レベルでも守れないのが偶に居るから、京も口を酸っぱくしてるんだと思うよ? 兄貴だから言うんじゃないけどさ」
「……」勇輝は黙してしまった。
僕達も思わず黙って顔を見合わせてしまう。こういう時の勇輝には何かしら、秘して置きたい事がある、というのが僕達の共通見解だったけど――それが何なのか、それは全く解らなかった。
やがて下校時間となり、寮に移動して、僕と京は相変わらず互いに首を捻っていた。
「何だろう? 京の話はいつもの注意事項だし、別に勇輝個人に関したものでもなかったし……。時間を言い訳に切らなきゃならない様なものでもないよなぁ。余程これは余分だと思ったのかな」
「俺の話に切っていい余分なんか無いぞ」
京、何でそんな自信満々なんだ……?
「内容的には本当に小学生の休みの栞並。まぁ、小学生と違うのは、男女交際に関して位か――学生の本分たる学業を優先せよ、か。この辺で話を切られたんだっけ」京らしい、と僕は苦笑する。「あ、もしかして勇輝はそれが気に入らなかったのかな? ほら、もう卒業生だけど、確か彼女が居た筈……」
「そんな私事で、俺の放送を遮ったと……」京、目が据わってるよ。そんな目で僕を見ないでくれ。
「勇輝がそないな事、するやろうか?」妙に自然に割り込んだのは、柔らかい関西弁。慌てて戸口を振り返ると、隣室の間宮栗栖が立っていた。「声、掛けてんけどな。何や話に夢中みたいやな」
「……何処から聞いていた?」そんな栗栖を睨み付けながらも、京は訊いた。尤も、京の栗栖に対する姿勢は基本、攻撃的だから、話を聞かれた所為かどうかは判然としない。
「小学生の栞並……の辺りからや。せやからもうちょっと前から話して貰えると助かるんやけど」
何で俺がお前の助けにならにゃならん、と言う京の唸りを無視して、僕はこの件に関して見聞きした事を話して聞かせた。尤も栗栖だって昼間の放送は聞いているから、その内容は省く。
「なるほどなぁ」やがて出たのは、苦笑交じりのそんな言葉だった。
「一つ訊くけど、京がこの時期に校内放送に加わるんは結構皆知ってたんか?」
「知ってたと思う。休み前の風物詩みたいなものだし」
「なるほど……それで、その休み直前に入部して来た堤さんとやら――可愛い子やった?」そう栗栖が訊いたのは、京に対してだった。
「な、何を言い出すんだ、いきなり!」僅かに顔に朱が差しているのは怒りの所為なのか、それとも……? いや、そもそも――。
「可愛い子って……堤って下級生、女子だったのか?」僕も、京に訊く。部室内には立ち入っていないし、この中で直接堤に会っているのは京だけだ。
「男子だと言った覚えは無い」肯定するなら素直に肯定して欲しい。「容姿に関しては主観の問題が大きいので言及を拒否する」
栗栖は肩を竦めた。ま、ええけど、と言いつつ話を続ける。
「その彼女がこんな時期に放送部に入ったんは何でやと思う? どう考えても部活を始める時期やないやろう」
「何か、部活以外の目的があった……?」僕は首を傾げる。「真逆と思うけど……京の放送があるのを聞き付けて――京に会いに?」
京は意外にも女子に人気がある――らしい。甚だ不思議だ。
「これを機会に近付きたい、位はあったんかも知れへんけど、京の話はそれを否定する様なもんやった。当然、彼女はがっかりするやろうな。せやから勇輝は時間を言い訳に切った……」
「それは幾ら何でも、考え過ぎじゃないかな」僕は苦笑した。「確かにその時、放送室内には堤さんも居たそうだけど」
第一、勇輝に果たして彼女を応援する様な心算があったのかどうか?
「無かったとも思われへんな。部室から出て来た時、勇輝はこう言うてたんやろう?――堤と放送すればよかったんじゃないのか、って。放送部の部員なんて他に何ぼでも居てるのに、何でよりによって入ったばっかりの堤やったんや? 状況証拠やけど、彼女を意識してたんやないかな」
勇輝の事だから彼女から相談を受けて、部に連れて来たのかも知れない。だからこそ、幽霊部員の彼が出席し、見学として彼女を連れて、今日の放送を勤めたのかも……。そしてだからこそ、時間的な問題――それだけだと言い張っているのかも知れない。
彼女が告げるのであれば兎も角、自分の口から言う事ではないと黙して。
「どうする? 京」にやり、と口元が歪むのが自分でも解る。
尤も、京の答えは解っていたけれど。
「小学生の栞並の注意をした本人がそれを破れるか。範を示すのが俺の仕事だ!」
そう言うと思った――僕と栗栖は顔を見合わせて、互いに肩を竦めた。
―了―
京は意地っ張り♪
因みに勇輝が言っていた堤というのは、何を思ったかこの時期に入部希望してきた下級生だそうだ。勿論、未だ放送を任せられる訳もなく、昼休みは放送室の片隅で先輩達の仕事を見学していたそうだ。
「それで、京は何に文句付けてるのさ?」自販機で買った珈琲で喉を湿らせて、僕は改めて尋ねた。
「話を切られたんだ」さも不服そうに、京はそう宣った。「未だ話の途中だったのに」
「それは、放送時間とかあるんだから……」僕は苦笑する。「そうそう長い話をされても困ると思うよ? 放送部も」
「その時間を工面するのも放送部の仕事だろうが。僕が今日出る事は前々から決まっていたし、予め原稿は提出してあったんだからな」
「勇輝の言い分は?」苦笑しながらも、僕は勇輝に話を振った。
それに対する勇輝の答えは素っ気無いものだった。
別に、と。
「別にって……」
「実際話の分量と時間が合わなかっただけだ。かなり細かい事迄あったからなぁ。要らん世話じゃないかって位」
「何を!?」いきり立つ京は紅茶の紙コップを握り潰しそうになっている。僕は慌てて宥める。
「勇輝……。確かに小学生レベルじゃないかって注意もあるにはあったけどさ……」
「何を!?」あ、矛先がこっちに来た。けど、無視。
「要らない世話レベルでも守れないのが偶に居るから、京も口を酸っぱくしてるんだと思うよ? 兄貴だから言うんじゃないけどさ」
「……」勇輝は黙してしまった。
僕達も思わず黙って顔を見合わせてしまう。こういう時の勇輝には何かしら、秘して置きたい事がある、というのが僕達の共通見解だったけど――それが何なのか、それは全く解らなかった。
やがて下校時間となり、寮に移動して、僕と京は相変わらず互いに首を捻っていた。
「何だろう? 京の話はいつもの注意事項だし、別に勇輝個人に関したものでもなかったし……。時間を言い訳に切らなきゃならない様なものでもないよなぁ。余程これは余分だと思ったのかな」
「俺の話に切っていい余分なんか無いぞ」
京、何でそんな自信満々なんだ……?
「内容的には本当に小学生の休みの栞並。まぁ、小学生と違うのは、男女交際に関して位か――学生の本分たる学業を優先せよ、か。この辺で話を切られたんだっけ」京らしい、と僕は苦笑する。「あ、もしかして勇輝はそれが気に入らなかったのかな? ほら、もう卒業生だけど、確か彼女が居た筈……」
「そんな私事で、俺の放送を遮ったと……」京、目が据わってるよ。そんな目で僕を見ないでくれ。
「勇輝がそないな事、するやろうか?」妙に自然に割り込んだのは、柔らかい関西弁。慌てて戸口を振り返ると、隣室の間宮栗栖が立っていた。「声、掛けてんけどな。何や話に夢中みたいやな」
「……何処から聞いていた?」そんな栗栖を睨み付けながらも、京は訊いた。尤も、京の栗栖に対する姿勢は基本、攻撃的だから、話を聞かれた所為かどうかは判然としない。
「小学生の栞並……の辺りからや。せやからもうちょっと前から話して貰えると助かるんやけど」
何で俺がお前の助けにならにゃならん、と言う京の唸りを無視して、僕はこの件に関して見聞きした事を話して聞かせた。尤も栗栖だって昼間の放送は聞いているから、その内容は省く。
「なるほどなぁ」やがて出たのは、苦笑交じりのそんな言葉だった。
「一つ訊くけど、京がこの時期に校内放送に加わるんは結構皆知ってたんか?」
「知ってたと思う。休み前の風物詩みたいなものだし」
「なるほど……それで、その休み直前に入部して来た堤さんとやら――可愛い子やった?」そう栗栖が訊いたのは、京に対してだった。
「な、何を言い出すんだ、いきなり!」僅かに顔に朱が差しているのは怒りの所為なのか、それとも……? いや、そもそも――。
「可愛い子って……堤って下級生、女子だったのか?」僕も、京に訊く。部室内には立ち入っていないし、この中で直接堤に会っているのは京だけだ。
「男子だと言った覚えは無い」肯定するなら素直に肯定して欲しい。「容姿に関しては主観の問題が大きいので言及を拒否する」
栗栖は肩を竦めた。ま、ええけど、と言いつつ話を続ける。
「その彼女がこんな時期に放送部に入ったんは何でやと思う? どう考えても部活を始める時期やないやろう」
「何か、部活以外の目的があった……?」僕は首を傾げる。「真逆と思うけど……京の放送があるのを聞き付けて――京に会いに?」
京は意外にも女子に人気がある――らしい。甚だ不思議だ。
「これを機会に近付きたい、位はあったんかも知れへんけど、京の話はそれを否定する様なもんやった。当然、彼女はがっかりするやろうな。せやから勇輝は時間を言い訳に切った……」
「それは幾ら何でも、考え過ぎじゃないかな」僕は苦笑した。「確かにその時、放送室内には堤さんも居たそうだけど」
第一、勇輝に果たして彼女を応援する様な心算があったのかどうか?
「無かったとも思われへんな。部室から出て来た時、勇輝はこう言うてたんやろう?――堤と放送すればよかったんじゃないのか、って。放送部の部員なんて他に何ぼでも居てるのに、何でよりによって入ったばっかりの堤やったんや? 状況証拠やけど、彼女を意識してたんやないかな」
勇輝の事だから彼女から相談を受けて、部に連れて来たのかも知れない。だからこそ、幽霊部員の彼が出席し、見学として彼女を連れて、今日の放送を勤めたのかも……。そしてだからこそ、時間的な問題――それだけだと言い張っているのかも知れない。
彼女が告げるのであれば兎も角、自分の口から言う事ではないと黙して。
「どうする? 京」にやり、と口元が歪むのが自分でも解る。
尤も、京の答えは解っていたけれど。
「小学生の栞並の注意をした本人がそれを破れるか。範を示すのが俺の仕事だ!」
そう言うと思った――僕と栗栖は顔を見合わせて、互いに肩を竦めた。
―了―
京は意地っ張り♪
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Re:無題
意地っ張りです(笑)
そうそう、真里ちゃんと陽芽ちゃんお膝に乗せた猫バカさんみたいに鼻の下を……ねぇ(笑)
そうそう、真里ちゃんと陽芽ちゃんお膝に乗せた猫バカさんみたいに鼻の下を……ねぇ(笑)
(^u^)プププ♪
京君ってばぁ~意地張っちゃってぇ~!
もっと素直にならなあかん!
下級生の女の子に好意を持たれているのにネ!
それも可愛い子みたいだし!
照れくさいのかな?
(゜▼゜*)ウヒヒヒ♪
もっと素直にならなあかん!
下級生の女の子に好意を持たれているのにネ!
それも可愛い子みたいだし!
照れくさいのかな?
(゜▼゜*)ウヒヒヒ♪
Re:(^u^)プププ♪
素直になったら京じゃない!(爆)
そんな気がする今日この頃です(^m^)
そんな気がする今日この頃です(^m^)
こんにちは
堤って名前の新登場人物にするんだったら、巽のままでもよかったんじゃない?
ストーリー展開上、さほど重要な役でもないみたいだし。
作っちゃった以上、今後、登場機会が増えるだろうし。(爆)
今から、人物設定しておいた方が良いと思うよ。(笑)
う~ん、今回のストーリーに関しては、私は京の気持ちは、よく分かる。
京、背中で泣いてるぜ。(笑)
ストーリー展開上、さほど重要な役でもないみたいだし。
作っちゃった以上、今後、登場機会が増えるだろうし。(爆)
今から、人物設定しておいた方が良いと思うよ。(笑)
う~ん、今回のストーリーに関しては、私は京の気持ちは、よく分かる。
京、背中で泣いてるぜ。(笑)
Re:こんにちは
堤さん、登場機会増えるかどうかは謎(^^;)
や、万一増えた時に、何かやり難いじゃない、巽だと☆
京……素直になれない奴(笑)
や、万一増えた時に、何かやり難いじゃない、巽だと☆
京……素直になれない奴(笑)
Re:きょう夜霧は、参
おおう! 今日はコメント長いな!
相変わらず意味解らんけど!
相変わらず意味解らんけど!
Re:こんばんは
確かに(笑)
天然入ってますからね~、京は。
はっきり言われないと気付かない可能性、大ですな。
天然入ってますからね~、京は。
はっきり言われないと気付かない可能性、大ですな。
Re:こんばんは!
京、からかい甲斐があるだろうな~(笑)
Re:こんばんわ
はっきり言われないと気付かない、でもはっきり言われると大慌て。そんな奴です、京は(笑)
にやり。
にやり。