〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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歩いていたら、道を教えてほしい、と呼び止められた。尋ねてきたくせに、なぜか目的地を言うのをためらっている。
「いや、そろそろ近くの筈なんだけどねぇ」きょろきょろと忙しなく周囲を見回しながら、そのおじさんは言った。中肉中背の、これと言って特徴の無いサラリーマン風の男の人。こんな昼間の住宅街では余り見ないタイプだ。
「だから、何処を探してるの? おじさん」僕は少し焦れて言った。同級生の家に遊びに行く所なんだから、時間を取らせないで欲しいなぁ。折角、塾の休みが重なった数少ない日なんだからさ。「この辺の家?」
「いや、家じゃなくて……」と、やっぱり歯切れが悪い。
こんな住宅街の近くで、家じゃない所って? 隠れ家的お店、とかだったら僕みたいな小学生に訊いても知らないよ? しまったなぁ。この辺詳しくないからって顔しとけばよかったかも。
それとも、実はこのおじさんは一見普通のサラリーマン風の悪人で、今時、小学生を誘拐しようなんて考えているのじゃないだろうか。だから人目につかない所に案内させようとして、場所を考えてるんじゃ……。僕はポケットの中の携帯電話を握り締め、首から下げた防犯ブザーを態と目に付くようにしながら弄ぶ。備えはしてあるって見せるだけでも防犯にはなるって聞いたから。
けど、おじさんはそれにも気付かない様子で、頻りと辺りを見回してる。本当に只、道を訊きたいだけなのか? なら、何ではっきり言わないんだろう?
「いや、ごめん」おじさんは済まなさそうに言った。「その……驚かしてはいけないと思ってねぇ。私の探しているのは……その、私が死んだ場所なんだ」
「は?」驚くよりも呆れてしまった。思わず、相手の革靴を見下ろしてしまう。足、あるじゃないか。何と無く引き摺ってはいるけど。
僕は憤然として踵を返した。今時の小学生をそんな冗談でからかって、時間を取らせるなんて!
「あ! 待ってくれないか!」足を引き摺り、おじさんは追い掛けて来る。「冗談じゃないんだよ。私はこの近くで交通事故に遭って……。何か……せめて花束でも供えてる様な所、知らないかなぁ?」
……そう言えば、そこの角の電信柱の所に、未だ新しい花束やタバコがひっそりと……。一箇月以上前に事故があったって聞いた事はある。
僕はもう一度だけ足を止めて、おじさんを頭から足迄、まじまじと見詰めてから、問題の角を指差した。そっちを振り返り、おじさんは涙混じりの笑みを浮かべた。
「生前は家庭を顧みなかったのに……私の好きなタバコや花を覚えていてくれたんだ……」そう嬉しそうに呟いて、おじさんは消えて行った。
僕はその笑顔に、パパやママの好きな物を、覚えていて上げようと思った。
―了―
どうも私の頭の中で道を尋ねてくるのは変な人(?)が多い様です(^^;)
「だから、何処を探してるの? おじさん」僕は少し焦れて言った。同級生の家に遊びに行く所なんだから、時間を取らせないで欲しいなぁ。折角、塾の休みが重なった数少ない日なんだからさ。「この辺の家?」
「いや、家じゃなくて……」と、やっぱり歯切れが悪い。
こんな住宅街の近くで、家じゃない所って? 隠れ家的お店、とかだったら僕みたいな小学生に訊いても知らないよ? しまったなぁ。この辺詳しくないからって顔しとけばよかったかも。
それとも、実はこのおじさんは一見普通のサラリーマン風の悪人で、今時、小学生を誘拐しようなんて考えているのじゃないだろうか。だから人目につかない所に案内させようとして、場所を考えてるんじゃ……。僕はポケットの中の携帯電話を握り締め、首から下げた防犯ブザーを態と目に付くようにしながら弄ぶ。備えはしてあるって見せるだけでも防犯にはなるって聞いたから。
けど、おじさんはそれにも気付かない様子で、頻りと辺りを見回してる。本当に只、道を訊きたいだけなのか? なら、何ではっきり言わないんだろう?
「いや、ごめん」おじさんは済まなさそうに言った。「その……驚かしてはいけないと思ってねぇ。私の探しているのは……その、私が死んだ場所なんだ」
「は?」驚くよりも呆れてしまった。思わず、相手の革靴を見下ろしてしまう。足、あるじゃないか。何と無く引き摺ってはいるけど。
僕は憤然として踵を返した。今時の小学生をそんな冗談でからかって、時間を取らせるなんて!
「あ! 待ってくれないか!」足を引き摺り、おじさんは追い掛けて来る。「冗談じゃないんだよ。私はこの近くで交通事故に遭って……。何か……せめて花束でも供えてる様な所、知らないかなぁ?」
……そう言えば、そこの角の電信柱の所に、未だ新しい花束やタバコがひっそりと……。一箇月以上前に事故があったって聞いた事はある。
僕はもう一度だけ足を止めて、おじさんを頭から足迄、まじまじと見詰めてから、問題の角を指差した。そっちを振り返り、おじさんは涙混じりの笑みを浮かべた。
「生前は家庭を顧みなかったのに……私の好きなタバコや花を覚えていてくれたんだ……」そう嬉しそうに呟いて、おじさんは消えて行った。
僕はその笑顔に、パパやママの好きな物を、覚えていて上げようと思った。
―了―
どうも私の頭の中で道を尋ねてくるのは変な人(?)が多い様です(^^;)
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Re:こんばんは
一応幽霊さんという事で(笑)
いっそコメディに持って行った方がよかったかな(^^;)
いっそコメディに持って行った方がよかったかな(^^;)
この出だしだと
困った幽霊や妖物になってしまうのは何故?(笑)
おじさん成仏出来て良かったね~
今回、捻りはともかくとして、纏まり過ぎてるような気がします。
私の好きな物は本以外だと鳥の唐揚げだよー。マイルドセブンもよろしくね~!あ、後アイスコーヒーも!!
おじさん成仏出来て良かったね~
今回、捻りはともかくとして、纏まり過ぎてるような気がします。
私の好きな物は本以外だと鳥の唐揚げだよー。マイルドセブンもよろしくね~!あ、後アイスコーヒーも!!
Re:この出だしだと
何故でしょう?(笑)
鳥の唐揚げは私も好きだよー。後、レモンティー(アイス)と、チョコとたこ焼きー♪(苦笑)
鳥の唐揚げは私も好きだよー。後、レモンティー(アイス)と、チョコとたこ焼きー♪(苦笑)
Re:無題
先ず昼日中から出歩く時点で非常識(笑)
あ。某図書館のは朝から出るなぁ。私が非常識?(笑)
あ。某図書館のは朝から出るなぁ。私が非常識?(笑)
Re:無題
やっぱり私の(?)幽霊は非常識なのか!?(爆)
幽霊の方が人間臭くなるのは何故だろう……生きてる人物の方が怖い役になりがち(^^;)
幽霊の方が人間臭くなるのは何故だろう……生きてる人物の方が怖い役になりがち(^^;)
Re:さっき
おお! 夜霧がそんなまともな事をっ!(感涙)
改めてお誕生日、おめでとうございま~す!\(^▽^)/
かめちゃん、エッシーって……?(^^;)
改めてお誕生日、おめでとうございま~す!\(^▽^)/
かめちゃん、エッシーって……?(^^;)
Re:無題
有難うございます(^^)
なかなかコンパクトに纏めようとすると纏まり切らない所がありますね(^^;)
なかなかコンパクトに纏めようとすると纏まり切らない所がありますね(^^;)
Re:こんにちは♪
考えたら幽霊に追っ掛けられてるな、小学生(笑)
その割に余り怖くない(^^;)
おじさんは家族との間に距離を感じていた様です。
その割に余り怖くない(^^;)
おじさんは家族との間に距離を感じていた様です。
Re:こんにちはっ
どんな体験かな~?(わくわく)
尋ねられたら……取り敢えず教えて上げれば消える……かも?
何にも供えられてなかったらどうしよう……(・・;)
尋ねられたら……取り敢えず教えて上げれば消える……かも?
何にも供えられてなかったらどうしよう……(・・;)
Re:moon様
私はいいよ~^^
夜霧も日記に書いてたねー♪
moonさん、おめでと~♪
夜霧も日記に書いてたねー♪
moonさん、おめでと~♪
Re:切ないね~
眼鏡、眼鏡……(+_+;)
それで迷ってあの世に行けなかったり(笑)
私も気を付けよう(^^;)
それで迷ってあの世に行けなかったり(笑)
私も気を付けよう(^^;)
Re:冬猫さまへ
いえいえ♪
姐さん、住所(ブログ)作ってないから、存分に窓口にしちゃって下さい。
姐さん、住所(ブログ)作ってないから、存分に窓口にしちゃって下さい。