〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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京と月夜は夜霧と美化特別強化委員会を組織する筈だったみたいだ。
勿論、美化委員は元からある。ところが最近校内の風紀の乱れが目立つと、風紀委員会の三年生、貴田月夜(きだ・つくよ)が熱心に言い出し、それに男子寮の纏め役の京と、夜霧こと夜原霧枝先生が同調してしまったのだ。
かくして、風紀と美化を兼ね備えた、そしてより強力な組織が我が学園に作られようとしていた。
この二つを一緒にしたのは風紀の乱れや清掃の不徹底は根っこが同じものとされたからだそうだ。詰まりは生徒それぞれの怠慢。気の緩み。
理屈は解るけど……牽引役がこの三人という事に、僕は不安を抱いた。
勿論、美化委員は元からある。ところが最近校内の風紀の乱れが目立つと、風紀委員会の三年生、貴田月夜(きだ・つくよ)が熱心に言い出し、それに男子寮の纏め役の京と、夜霧こと夜原霧枝先生が同調してしまったのだ。
かくして、風紀と美化を兼ね備えた、そしてより強力な組織が我が学園に作られようとしていた。
この二つを一緒にしたのは風紀の乱れや清掃の不徹底は根っこが同じものとされたからだそうだ。詰まりは生徒それぞれの怠慢。気の緩み。
理屈は解るけど……牽引役がこの三人という事に、僕は不安を抱いた。
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今日夜霧は、気分で叱責する癖を直したかったのだろうか。
尤も、それは余り巧く行っていなかった様に、僕には思われたけれど。何せ、笑顔を作りながらも頬やこめかみがひくついていたから。口に出る迄後一歩、といった所だ。
夜霧――夜原霧枝(やはら・きりえ)という今年の担任女性教師を、いつしか僕達はそう呼ぶ様になっていた。年齢ははっきり言って定かでない。色白で、若くは見えるんだけど……結構長く此処に居るらしい。取り敢えず、正面切ってそれを尋ねる無謀な人間は居ない。
元々気分屋の彼女の機嫌を損ねれば、いつ迄でもねっとり纏わり付く夜霧の様な叱責を食らう事になる。それは生徒全員が知る所だった。
勿論、僕、真田祥も。
その晩、男子寮を囲む夜霧は濃く、勇輝本人がその責任を転嫁される事を望んだ。
僕は驚き、そしてまた釈然としなかったけれど。
僕達の住まう高等部の学生寮を含む学園の敷地は、地形の所為なのか夜には霧が発生し易く、周囲を霧除けのネットが取り巻いている。ポリエステル製の目の細かいネットで霧の水分を絡め取ってしまうのだ。
だから普段はこんなに濃い霧に囲まれる事は無い。
かなり丈夫なそのネットに、大きな穴が開けられているのが発見されたのは夕方の事だった。その所為で、夜半から発生した大規模な霧に、対応出来なかったのだ。
ネットは幾重にも重なっていて、それは学生寮側から何者かの手によって切られたものだと、判明したらしい。
そして、勇輝が名乗り出たのだった。
僕は驚き、そしてまた釈然としなかったけれど。
僕達の住まう高等部の学生寮を含む学園の敷地は、地形の所為なのか夜には霧が発生し易く、周囲を霧除けのネットが取り巻いている。ポリエステル製の目の細かいネットで霧の水分を絡め取ってしまうのだ。
だから普段はこんなに濃い霧に囲まれる事は無い。
かなり丈夫なそのネットに、大きな穴が開けられているのが発見されたのは夕方の事だった。その所為で、夜半から発生した大規模な霧に、対応出来なかったのだ。
ネットは幾重にも重なっていて、それは学生寮側から何者かの手によって切られたものだと、判明したらしい。
そして、勇輝が名乗り出たのだった。
今日、勇輝はクリーニング店にも報告しなかった。
だけど、ホールでは如何にも野球部の選手っぽい生徒達が捜索隊を再編してなかったかな?
彼等の主将が失くしたと言う、写真を探して。
「勇輝、それは多分間違いなく、彼等が探している物だよ」指先で写真をぴらぴらと弄んでいる彼に、僕は言った。「クリーニング店から君の所に返って来た洗濯物に紛れ込んでたんだから、君の所為じゃないし……『紛れ込んでたよ』の一言でいいじゃないか」
知多勇輝はふい、と物も言わず席を立ってしまった。写真を届けるでもなく、自室に引き篭もってしまう。
おいおい――僕は溜め息をついた。
「何だ? これは?」いつも以上に不機嫌そうに顔を顰め、僕の双子の兄、京は、観葉植物の陰に隠れる様に貼られていたその紙切れを破らんばかりに壁から引き剥がした。「意味不明じゃないか!」
一読して更に眉間の皺を深める京の横から覗き込み、やはり僕も眉根を寄せる。確かに、意味不明だ。
寒い、バッグを覗いている幽霊とは――どうかしたら雪が一押しいう訳じゃ入った私好みの自称霊媒師の帰り道、竦めながらアスファルトだけど♪
昨日迄になって私は言って私尋ねたらしい!
「丸で子供の作文か変な猫が適当に打ったみたいじゃないか!」そんな物が高等部の学生寮のロビーに張り出してあるなんてとんでもない、とばかりに京はそれを握り潰そうとした。いつも怒りっぽいけど、今日は一段と機嫌が悪い。
それと言うのも学校で起こった事件の所為だった。
一読して更に眉間の皺を深める京の横から覗き込み、やはり僕も眉根を寄せる。確かに、意味不明だ。
寒い、バッグを覗いている幽霊とは――どうかしたら雪が一押しいう訳じゃ入った私好みの自称霊媒師の帰り道、竦めながらアスファルトだけど♪
昨日迄になって私は言って私尋ねたらしい!
「丸で子供の作文か変な猫が適当に打ったみたいじゃないか!」そんな物が高等部の学生寮のロビーに張り出してあるなんてとんでもない、とばかりに京はそれを握り潰そうとした。いつも怒りっぽいけど、今日は一段と機嫌が悪い。
それと言うのも学校で起こった事件の所為だった。
「今日はエープリル・フールだからって、祥も喧嘩の振りする心算だったのか?」
「でも、エープリル・フールとか、弓田先生も推奨しなかったよ」
「だから怒られてるんだろ? 兄貴に」
そんな外野のひそひそ声が、妙に耳につく。因みに弓田先生というのは世界史の教師だ。ちらり、と視線を動かすと正面から怒鳴られた。
「祥! 何処を見ている!?」この寮の纏め役であり、僕の双子の兄でもある真田京は、寮の平穏を守る事に余念が無い。例え実の弟に対しても、厳しい態度で臨むのだった。
「ちょっとふざけようと思っただけだって……」僕は流石にうんざりして言う。「本当に喧嘩なんかする訳無いじゃないか」
「当たり前だ」相変わらず、断言する奴だ。「俺が居る所で喧嘩など許さん」
何者だよ。この兄貴。
とは言え、こんな兄貴だから引っ掛け甲斐があると思って、うっかりターゲットに選んでしまったのが運の尽き。おまけに喧嘩は当然一人では出来ない。詰まり相方が居た訳だが――奴の逃げ足は早かった。
勇輝の奴め。
「でも、エープリル・フールとか、弓田先生も推奨しなかったよ」
「だから怒られてるんだろ? 兄貴に」
そんな外野のひそひそ声が、妙に耳につく。因みに弓田先生というのは世界史の教師だ。ちらり、と視線を動かすと正面から怒鳴られた。
「祥! 何処を見ている!?」この寮の纏め役であり、僕の双子の兄でもある真田京は、寮の平穏を守る事に余念が無い。例え実の弟に対しても、厳しい態度で臨むのだった。
「ちょっとふざけようと思っただけだって……」僕は流石にうんざりして言う。「本当に喧嘩なんかする訳無いじゃないか」
「当たり前だ」相変わらず、断言する奴だ。「俺が居る所で喧嘩など許さん」
何者だよ。この兄貴。
とは言え、こんな兄貴だから引っ掛け甲斐があると思って、うっかりターゲットに選んでしまったのが運の尽き。おまけに喧嘩は当然一人では出来ない。詰まり相方が居た訳だが――奴の逃げ足は早かった。
勇輝の奴め。
京は、寮長に一報したかったみたい。
でも、栗栖に理由と一緒に登場されて、それは出来なくなった。
「どうして君達は無断で夜間外出したのかな?」嫌味な口調、と陰で囁かれている儘の口振りで、京は尋問をしていた。「大田君、宮原君」
此処は寮内の談話室。彼の前では二人の下級生が身を小さくしている。言いたい事はあるみたいだけど、京の尋問は結構、容赦無い。
真田京は二年生ながら、この高等部の寮で纏め役をしている。だから規則を守らなかった生徒に厳しいのは仕方ないんだけど……。
「京、夜間外出って言っても日付が変わる前には帰って来たんだしさ、寮長には内緒って事に出来ないかなぁ」僕は見兼ねて口添えする。
「甘い!」僕迄一喝された。「日付が変わる前だからどうだって言うんだ? 門限は九時! それから何時間だろうと、それを破った事に変わりは無い!」
「それはそうだけど……」僕は気圧されて、向きを変える。「二人もちゃんと理由を説明しなよ。理由によっては京だって……」
「考えを変える事は無い!」先に断言しやがった。優しく聞き出そうという心遣いが解らないのか。親の顔が見たいよ。いや、見飽きてるけど。何せ京は僕の双子の兄だ。
僕が不毛な溜め息をついている最中に、栗栖は現れたのだった。
でも、栗栖に理由と一緒に登場されて、それは出来なくなった。
「どうして君達は無断で夜間外出したのかな?」嫌味な口調、と陰で囁かれている儘の口振りで、京は尋問をしていた。「大田君、宮原君」
此処は寮内の談話室。彼の前では二人の下級生が身を小さくしている。言いたい事はあるみたいだけど、京の尋問は結構、容赦無い。
真田京は二年生ながら、この高等部の寮で纏め役をしている。だから規則を守らなかった生徒に厳しいのは仕方ないんだけど……。
「京、夜間外出って言っても日付が変わる前には帰って来たんだしさ、寮長には内緒って事に出来ないかなぁ」僕は見兼ねて口添えする。
「甘い!」僕迄一喝された。「日付が変わる前だからどうだって言うんだ? 門限は九時! それから何時間だろうと、それを破った事に変わりは無い!」
「それはそうだけど……」僕は気圧されて、向きを変える。「二人もちゃんと理由を説明しなよ。理由によっては京だって……」
「考えを変える事は無い!」先に断言しやがった。優しく聞き出そうという心遣いが解らないのか。親の顔が見たいよ。いや、見飽きてるけど。何せ京は僕の双子の兄だ。
僕が不毛な溜め息をついている最中に、栗栖は現れたのだった。