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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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 以前、夜霧こと夜原霧枝先生が三年の貴田月夜と他の女子に話した事があったのかも知れない。
 それで点描で描き出された絵画の様に精緻な刺繍技法が存在しなかったか、月夜が調べて呼び掛けたのだろう。それを作ろう、と。
 それで一斉に他の女子に緊張された訳だ。
 でも、月夜はこの刺繍へと、彼女なりの感謝のイメージを託したい様だ。

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 昨日夜霧――夜原霧枝先生――が、クリスマスローズでのガーデニングを予定したかったのに、と同僚の先生に零しているのを聞いたのは日直日誌を取りに行った知多勇輝だった。残念そうだったその様子から、どうやら断念した様だった、と。
 夜霧の家はマンションの一室だから、精々ベランダでの小規模なガーデニングだろう。
 それにしても検索して見た限りではそれ程大きな植物ではないみたいだけど? サイズ的には鉢植えで充分みたいだ。これならベランダでもそれなりに並べられるだろう。
 なのに何故断念したんだろう――美術の授業中、指先に絆創膏の数枚張られた手で扱い難そうにペンを握っている夜霧を見ながら、僕は首を傾げていた。
 

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 京は夜霧が持ってきた学園内外の資料を尻目に、それでも先生に気を遣ったのか、それは後で閲覧したいですね、と言った。
 それと言うのも翌日に控えた体育祭の準備で京は、頭も身体もあちこちに点在したいという程急がしかったのだ。
 然も今日は雨。でも、日暮れへ向けて回復するという予報が出ている。
 体育祭の実施日が明日になるか、延期されるか、僕みたいに競技に出るだけの生徒はまぁ、いいんだけど、実行委員会はそうも行かないらしい。天候が回復してもグラウンドの状態がどうか――この学園のグラウンドは、水捌けはいい方だとは思うんだけど。
 いつも以上に眉間の皺が深くなっている京に、僕はなるべく近付かない事にしていた。
 
 僕達が生まれるよりずっと前の東京オリンピックの開会式の行なわれた十月十日が、それを記念して体育の日に指定されていたのは過去の事。今は十月の第二月曜日――人によっては三連休になる。この学園でも、その方が父兄が集まり易いだろうと、その体育の日を体育祭と定めていた。
 尤も、カレンダー通りの休みが取れる人ばかりでもないと思うけど。それでも長い寮生活の最中、親が来てくれる数少ない日の一つではあった。
 うちは多分、来ないだろうけど。 

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 京は店主の仕事をしなかったよ――怪訝そうな表情で、クラスメートにそう言われたのは学園祭の模擬店の交代に行った時だった。ソースの香ばしい匂いが漂うたこ焼き店。その「店主」に納まったのが僕の双子の兄、京だった。いつもは周りを引っ張って――と言うより発破を掛けて急かすタイプの京が、何故か大人しかったのだと言う。まぁ、煩くなくて助かったけど、という一言は一応口止めされた。
 そして京は僕より前の交代で、どこかに行った切りだと。
「そら、気になるな」言ったのは僕と同じ時間帯受け持ちの間宮栗栖。「あの京がこういうイベントでサボりやなんて」
 イベントに限らず、サボりなんてしない質なんだけど――朝、一緒に寮を出た時だっていつもと変わりなかったし。
「何か変わった事でもあった?」僕はクラスメートに訊いた。「最初からそんなだった?」
「いや……。確か開店して暫くして、新聞部が取材に来たんだ。まぁ、この辺りの店一帯を、だけど。そう言えばそれからかも……」
「新聞部なぁ……。そこに何かありそうやな」交代が終わったら行ってみたいな、と呟く栗栖。「祥、どないする?」
 それで僕は栗栖と一緒で新聞部を訪問したい、と答えた。

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 今日、夜霧こと夜原霧枝先生は新聞部が通常の味気ない新聞記事みたいなものではなく、独自の紙面を開発したいので美術教師としてデザイン面で教授して欲しいと請われたらしい。
 そうなると夜霧としては自分でも満足する仕事をしたい様だ。
 でも、新聞部の副部長、通称キャラメルと共に、部の経営に関して、部長から釘を差された。キャラメル――勿論渾名だ。本名は不破りえ。高等部の二年生だ。彼女の打つメールには絵文字キャラが満載だそうで、それゆえ付いた渾名らしい。
 何しろ、そういったデコレーションが得意なキャラメルに加えて、気分が絵に出る夜霧だ。どんな紙面になる事か、彼でなくても心配した事だろう。確かに味気ない紙面にはならないだろうと思われるけれど。
 噂を聞いた僕の双子の兄、京も一瞬、眉間に皺を寄せた。意外にも味気ない学園新聞の愛読者なのだ。余り変わってしまうのは望まないのだろう。
 しかし、だからと言って容疑者扱いされるのはもっと望まない所だろう。
 二学期早々に生まれ変わった紙面を、と新聞部が夏休み中から張り切って用意した原稿が、その部室から消えていたのだ。

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「流石にガランとしてるね」寮生が一堂に会する食堂を見渡して、僕は言った。「皆帰省してるんだね」
 各部活もこの時期は休みとなり、生徒達も墓参りだ何だと帰って行き、今頃は久し振りの自宅で羽を伸ばしているのだろう。何しろそこには眉間に皺寄せた煩い纏め役は居ない。ま、親戚同士の煩わしさはあるかも知れないけれど、それはまた別の話だ。
「解り切った事をいちいち言うな、祥」ほら、また眉間に皺が寄ってる。「と言うか、お前も帰省してよかったんだぞ? 何で居るんだ?」
「何でって……その言い方は無いだろ?」そりゃあ、僕はこの双子の兄、真田京みたいに寮の纏め役を任されている訳でもないし、夏休み中の学校に特に用事がある訳でもない。そもそも、京にしたって、寮長先生に任せて寮を空けたって何の問題も無いんだ。残っている生徒自体が少ないんだから。
 なのに二人共、然程遠くもない実家に帰省しようとは、言い出さなかった。高校生活最後となる、今年も。
 空いた席が圧倒的に、広大な空間を占める食堂で、僕達はテーブルと温かい料理越しに、そっくりの顔を見合わせていた。

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 今日もこの土地に多い夜霧が出たにも拘らず、亀池は形跡を分析し、その結果から捜査の予定を立案したかったみたいだった。尤も、同室の桃山は呆れ顔だったし、以前の寮内での家で騒ぎもあって、僕達も話半分に聞き流してたんだけど……。
 
 事の起こりは夕方。夕食にと部屋を出る前に確かに締めた筈の彼等の部屋の窓が、僅かに開いていた事だった。桃山は先に食堂に移動していたし、部屋に戻ったのも亀池が先だった。元々相性がよくないと噂されていた二人だから、桃山の方は彼の思い違いだと決め付けている。それが悔しいのもあってか、亀池は懸命に窓に取り付いてるんだけど――序でに何故か僕達も巻き込まれた。
 いや、元々巻き込まれたのは問題の窓と中庭を挟んで向かいの部屋の知多勇輝だったんだけど。そこに、何を騒いでいる、とばかりに割り込んだのが僕の双子の兄の京。特にする事の無かった僕も、興味本意で付いて来てしまった。何だ、自業自得じゃないか。
 それにしても夜中迄掛かって現場検証とやらをしなくてもいいと思うんだけど……。外の視界もよくはないし。先日――公にはされていないし、結局は錯覚で片が付いたけど――窓硝子に浮かんだ顔事件で、早々に部屋を逃げ出した轍を踏むまいとでも言うのか、今回の彼は慎重だった。

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