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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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 煙突が無いのにどうやって来たのかな? サンタさん――プレゼントを抱えて嬉しそうに部屋から降りて来て、それでもそう小首を傾げる娘に、下がっていた目尻が微かに引き攣る。
 サンタクロースを信じる純粋さの中にも真実を追究したいという探究心が芽生えたか。思えば今年で六歳。成長しているんだなぁ。そんな親ばかな感慨に浸りながらも、清司はしかし、未だ真実を語るのは早いだろう、と心の内で頭を振っていた。
 パパとママが枕元に置いといたんだよ。そう言うのは簡単だが、娘の夢を壊すのは忍びない。
「さぁ、サンタさんは不思議な人だからね」そう言って笑うに留める。
「そっか」それでも納得してくれたのか、娘――莉夜(りや)はリビングのカーペットの上に座り、プレゼントをどれから開けようかと思案を始めた。クリスマス仕様のラッピングを施された包みは三つ。そろそろ学習に力を入れたいと言う母親と未だ夢のある物でいいじゃないかと言う父親と、意見が分かれて各自一つずつ――おや? 清司は首を傾げた。

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 故郷の景色を睨み据える様に、渡辺は周りを見回してから、美園と警官に促され、足を踏み出した。
 彼女に、これが最後とちょっとした情に駆られて年賀状を出したのは間違いだった。他人の目に触れる事の無い様、封書にし、もし見られても彼女の罪のみに見える様、文面にも配慮したのに。
 完全な別離状の心算だったのに――真逆、美園が昨夏の事件を忘れていたなんて……。そしてそれを思い出させる羽目になったなんて!
 
 彼は幼少時から暮らしたこの町に、余り良い感情を覚えていなかった。本当に田舎の、小さな町。ちょっと何かドジをしでかせば、それが近所中に広まってしまう様な町。都会で問題になっていると聞く無関心さなど、望むべくも無い町。
 幼い頃から赤面症の気があり、何かとからかわれがちだった渡辺には、決して好ましい町ではなかった。美園達友達と居ても、考える事は恥をかかない事――それだけだった。それでも、何人かは陰で笑っているのではないか、そんな疑念が燻り続けていた。

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 美園(みその)はアドレス帳を再度見直した。
 筆不精な彼女が、ほぼ年に唯一、葉書を書く時期――年末だった。
 来年の干支は既に印刷されてある。後はちょっとしたコメントと、宛名を書くだけだ。ペンを持つと引き攣れた手の皮膚が僅かに痛んだ。
 その段になって、彼女は去年迄を鑑みて用意した枚数と、アドレス帳に書かれた人数とに隔たりがある事に気付いた。無論、予備を用意してはいるが、それだけにしては多過ぎる……。

「あ、そうか……」五十音順に最後迄見直して、やっと彼女は自分の単純ミスに気が付いた。アドレス帳を変えたのだ。きっと、去年迄使っていた物から書き写す時に、漏れた人が居たのだろう。
 幸い、前のアドレス帳は抽斗(ひきだし)にしまい込んであった。ごちゃごちゃと詰まったその底から、彼女はそれを掘り起こした。

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 くるり。
 小さな手が両手で持った円筒を回した。円筒の外には赤いちりめん柄に桃色や花田色の小花、円筒の内には次々と姿を変えるとりどりの色の花が咲いていた。
 くるり。
 また、内の花は様相を変える。
 万華鏡――三角に組んだ鏡とその底の色紙や糸、ビーズ。そんな単純な物の組み合わせなのに、信じられない程の多様な世界を見せてくれる。
 幼い頃の翔子は、縁側に腰掛けてずっとそれに見入っていた。
 飽く事も無く。

 二十三歳になった翔子は今、岐路に立っていた。
 この儘、姿をくらませてしまうか。
 第一発見者として、通報するか。
 自首するか――殺人犯として。

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「昨日ちゃんと装飾した? 旧広間の」
 ベッドで普段着の儘、目を覚ました耕太は彼を覚醒させた原因、二つ年上の陽子の声を脳裏で数回反芻し――その音が言葉になり、寝る直前の記憶と繋がると、慌てて跳ね起きた。不自然な体勢で寝ていた為、その儘バランスを崩して落ちてしまう。
「大丈夫なの?」陽子の心配げな声は果たして彼自身に向けられたものか、彼が仕上げる筈だった仕事に対して向けられたものか。
 それを吟味する間も無く、耕太は立ち上がると陽子の脇を摺り抜けて駆け出した。
「悪い! 後少し!」とだけ言葉を残して。
 呆れた様に腰に手を当てて、陽子はそれを見送った。

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 夜中に車を走らせるのは苦手だった。
 明る過ぎて眼を眩ませる街の彩りも、一本逸れただけでそれらが夢幻の様に遠ざかる暗い道も。
 そして何より、夜中に車を走らせる羽目になる時なんて、碌な事があった例(ためし)が無い。
 
〈さようなら〉

 そんな言葉だけを残して、電話は切れた。その一言だけ。それでも着信履歴から、それが亮子からの電話である事は判るし、何よりあの声だって――どれだけ沈んでいようとも――聞き間違えるもんか。
 それは只俺への別れの言葉と取るには余りに重々しい口振りだった。
 だから俺は慣れない夜の運転へと、車を駆り出したのだ。


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「これ、私の絵じゃないよね?」
 母親にせっつかれて部屋の大掃除にぼちぼちと取り掛かっていた早紀(さき)は、幼い頃のお絵描き帳に交じっていた一枚の画用紙に目を止めた。小さい頃から絵が好きで、高校生になった今でもイラストを描いている彼女。だが、その幼い筆致の絵は、どの時代の彼女のものとも、違っていた。
 小学校低学年位だろうか? 描かれているのは女の子が二人。そして簡略化された家と木。線は拙いものの、色鉛筆で描かれた淡く繊細な色使いで、その年頃としては巧いと言えた。自分の子供の頃のクレヨン画と比べて、早紀は眼を覆いたくなった。
「誰のだろう?」友達の誰かのが交じったのだろう、と彼女は考えた。しかし、こんな絵を描く子は居なかった筈だとも思う。友達の中では自分が一番巧くて、いつだって褒められていたのだから。
 小学校で交じったとも思えない。幼稚園や小学校で描いた絵なら、先ずは教室後ろの壁に張り出すものだ。当然、画鋲か、テープの跡が四隅に残る。現に覚えのある絵には、全てそのどちらかが刻まれていた。しかし、この絵には無い。
 ならば、友達と遊んでいる時に描かれた物?――それが何故ここに、然も今迄解らずにいたのだろうか。
 早紀は首を捻った。
 

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