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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「今日は、全学年一緒のリレーとかの準備作業をしたんですか?――って、忙しい時に取材に来て、見れば解る様な事を訊くなよ、新聞部は!」
「だけど、副部長のキャラメルは一通りではあるけど、献身的に手伝いもしていたよ。まぁ、体育祭なんて偶のイベントだし、新聞部の取材もしようがないよ」僕は例によって眉間に皺を寄せている京を宥める。
 キャラメル、というのは勿論渾名だ。本名は不破りえ。何でも、キャラクターを用いたデコレーションメールを多用する為に、付いた渾名だとか。
「それに見れば解る事って言ったって、僕達がやってたのは鉢巻やバトンの色と本数の確認だとか、順位の旗の確認だとか、その他諸々の雑事だったし。新聞部だっていい加減な事を書く訳には行かないんだからさ」
「見て解るだろうが。色の数は六色。これは各学年のクラスの数だし、本数も六本。これは三学年の男女一人ずつが走るんだから当然だ。そして旗も当然、六本。それに、あれもある。これで更に何を訊く事がある?」
 僕はそっと溜息をつく。確かにそうなんだけど、新聞部も推測で書けないだろう、兄貴よ。
 全学年一緒のリレー競技――正式には「クラス対抗学年リレー」――は一年から三年の同じクラスを括って組分けしたものだ。京が言った様に各学年が六クラスで構成されるわが校では各学年男女一人ずつ、詰まり六人のチームが六組、構成される。
 因みに他の競技はと言えば、同じリレーでも走る人数が違ったりするし、鉢巻なんかも別に用意される。
 そして何より、この競技だけに用意される物があった。
「そう言えば、京、あれって何でこの競技にだけ必要なんだっけ?」僕はふと、首を傾げた。「普通のリレーには使わないのに」
 京はそんな事も解らんのかとばかりに、ふんと鼻を鳴らすと、それでも一応説明してくれる気にはなった様だった。

「そもそも、クラス対抗学年リレーの一チームの構成は?」
「各学年の男女一人ずつ」いきなりの問い掛けに内心首を傾げつつも、僕は答える。
「走る順番は?」
「一年女子、男子、二年女子、男子、それから三年女子、男子……って決まってるんだよね?」
 京はこっくりと頷く。
「一年から三年が体育祭の為だけに俄かチームを組む訳だが、同級生でも――特に男子なんぞ――掌に汗をかきまくる奴も居るのに、受け渡しする相手が上級生だったら、更に緊張するじゃないか。お陰で受け渡しの際にバトンの落下が相次いだらしい。それでは競技がスムーズに行かないから……という事だそうだ」京はまた、鼻を鳴らす。「その程度で緊張するとは、小心者が多かったんだな。当時の生徒は」
 いやいや、確かに京はそんな事じゃあ緊張しないだろうけれど――と内心で突っ込みながら、僕は問題の物を見遣る。
 一般的に目にするのは主に野球のマウンドだろうか、白い袋に包まれた松脂から作られたロジンバッグを。

 ところでキャラメル、準備を手伝ってくれながらやけにこればかり手にしていた様な……。
 その理由が推し量れる程には、僕の観察眼は鋭くはなかったし――追求したいと思う程、野暮でもない心算だ。

                      ―了―

 短めに行くよ~(--;)
 眠い眠いzzz

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『夜霧の馬鹿! 気分屋! 気紛れ! 自習とか言ってサボってどっか行くな! 何で教室に居ないんだよ!? 教育委員会に訴えるぞ!』

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 京はその時の事を脳裏にメモしたのだろうか?
 それでいて――頼まれた通りに――夜霧にも伝える事はせず、放課後の美術室で独り、手に怪我をしながらも創作を続けようとする友人の手当てもしようとはしなかった様だ。
 夜霧への連絡事項を持って美術準備室に向かった儘、なかなか戻って来ない京を捜して、美術室に行った時、京は只呆然と、机や床に散った血痕を拭き取る友人の背を見詰めていた。
 因みに美術部の顧問の夜霧こと夜原霧枝先生は部員がそんな事になっているとは露知らぬのか、準備室にさえ居なかった。
 結局、僕が半ば無理矢理彼を保健室へと引っ張って行った。大事な手に怪我をして、今無理をして化膿でもしたら、後々大変事になる、と。絵が描けなくなってもいいのかと、不本意ながらも脅す様な事迄言って。
 彼は不承不承という面持ちながらも保険医の手当てを受け、それでも懲りずに美術室へと戻って行った。僕は溜息をついてその背中を見送った。幸い思った程深い傷でもなく、県内の秋の芸術祭も近いから、力が入っているのは解るけど……。
 それよりも、と僕は矛先を転じた。

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 昨日は勇輝は閉店する心算だった――なのに、気が変わったのか未だやる心算らしい、と京はぼやいた。
「閉店? いや、それ以前に勇輝が何の店をやってたのさ?」僕は目を丸くして訊いた。僕達の同級生、詰まりは学生である知多勇輝が店など営業出来るものだろうか?
「それがなかなか尻尾を掴ませなくてな」京は眉間に皺を寄せた。「何を売り物にしているのかが解らないんだ。だが、あいつの部屋に出入りしている同級生や下級生からは、某かの見返りを受けているらしい。要するに商売をしている訳だ」
「見返り……ねぇ」僕は首を捻る。「一体どんな? やっぱりお金?」
「これが学生の分際であからさまに金を取っているんだったら問答無用で締め上げてやるんだがな……」些か口惜しげに京は溜息をつく。「学食の定食だったり、自販機のジュースだったり……まぁ、金は掛かってるんだが、実に小額なんだよな。友達同士の奢りと言われたらそれ迄って程度だ。それでも同級生は兎も角、下級生からもってのはやっぱりどこか不自然だろう?」
「確かに……。勇輝は特に部活もやってないし、下級生との接点がどこにあるのかも……」
「だろう?」
 それで京は問い詰めたらしい。何故、そんなに皆から奢って貰っているのか、と。京の事だから例によって正面から問い質したのだろう。
 勇輝には寮の纏め役は友人の管理迄するのか? と皮肉られたそうだけど、ともあれ、お金の掛かる事でもあるし、断るようにする、とは言っていたらしい――それが京の言う所の閉店、という事らしい。
 なのにやる心算らしいという事は、また誰かに何か奢られていたのか……?

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 夜霧は、通称キャラメル――新聞部の不破りえ――の記事であの施設への妄想染みた噂を払拭する心算だったのだろうか?
 あの施設、と言うのは演劇部の生徒達が夏休み中にボランティアとして訪問した介護施設だった。普段外出する事も少ない入居者の気慰みにでもなればと、ミニ喜劇を披露しに行ったのだ。
 勿論、それ以外でも、家族や職員が世話するのを手伝う心算だったらしい。だが、それはきっぱりと断られた。拒絶、と言っていい程にきっぱりと。善意を否定された様でいい気分ではなかったと、部員の一人が言っていた。口には出さないものの、同調する者も居た様だ。
 それで想像したのだろうか? 
 あの施設には何か外部には見せられない、影の部分があるのではないか、などと。

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 京はきゃらめる――キャラクターをあしらったデコレーションメールを多用する、不破りえ――が世話役として口利きをすればよかったのだろうか?
 それで新聞部が、あの先生が作ったみたいな告知文を掲載すればよかった?
 僕は新聞部に些かの同情を抱きながらも、いつもにも増して不機嫌な顔をした兄貴を宥めに掛かった。

「京、掲載を断られたからってそう怒るなよ。新聞部にも新聞部なりのポリシーとかあるんだからさ」
「ポリシー? 『一個人の主観、主義を元とした告知等は掲載しない』って奴か?」京が唸る。噛み付かれそうでちょっと怖い。いや、勿論例えだけれど。
 校内の新聞とは言え、いや、それだからこそ、どんな事があっても公平を規するべきだ――それが新聞部の伝統的な主張だった。どんな内容であれ、一生徒の告知に記事欄を貸す事はならない、と。
 勿論、部員が書いた記事においてもその公平さを遵守すべきと定められているらしい。
 が――京はふんと鼻を鳴らして、言った。
「部員であれ、一個人の主観の絡まない記事などあるものか。そもそも主観無くして記事なんぞ書ける訳がないだろう。自分なりの目で見て、自分なりに感じた事を、自分なりの言葉で書くんだからな」
「それはまぁ……そうだけど。告知とは違うんじゃないかな。主張をしてる訳じゃあないし」
「マスコミが書く物も含めて、新聞に載ってる事は全て公平に書かれた、個人の主張は一切含まない事実だとでも?」嫌味ったらしく、京が哂う。
 流石に僕だって、そうは思っていない。
 

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 京は、奮闘する筈だった――のだが、昼過ぎには寮のロビーでソファに腰掛けてぼーっとしているのを見付けて、僕は首を傾げた。
「あれ? 京、何してんの? 図書室で宿題未達成者用の勉強会やるって張り切ってなかったっけ?」僕は尋ねた。
「別に張り切ってる訳じゃない」不機嫌そうに眉間に皺を寄せ、我が双子の兄は言った。「この時期に夏休みの宿題を終えていない者が居るなんて、寮の纏め役としての責任が……」
「そこ迄責任負う事じゃないと思うよ?」僕は溜め息をつきつつ向かいの椅子に座り、京の言葉を遮った。「そりゃ、宿題はちゃんとやるものだけど、未だ日にちもあるし……。やらなかった生徒が居たとしても、京が怒られる筋合いのものじゃないだろう?」
「それはそうだが……」眉間の皺が深くなる。「何か、指導力不足を問われている様で気に食わん」
 兄貴よ、そんなの、先生が気にする事だよ。僕は流石に内心、呆れる。
 寮の纏め役と言ったって大した権限がある訳じゃない。強制的に宿題をさせられる訳でもないし、要らぬ世話と突っ撥ねられたらそれ迄だ。
 それでも今日は勉強会をすると言って数日前からこのロビーの掲示板に告知もしてあったのだけれど……。

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