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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「窓を閉めて」尖った声に、知理(ちさと)は慌てて窓を閉めに走った。それによって、丸で空気を圧縮するかの様に響いていた蝉の大音声が遮断され、室内の一同はほっと息をついた。
 声を発した本人、思歩(しほ)は耳を、いや頭を覆っていた手を離し、窓を忌まわしげに見据えている。いや、実際にその目を向けているのは、そのすり硝子の先の、虫だろう。忌まわしい記憶と結び付く、虫。その声を聞くと感情を抑えられなくなる、と思歩は言う。
 だから夏には窓なんて開けられない。
 けれどそうすると今度は別の子が騒ぎ出す。
「暑ぅい! エアコンつけてよぉ!」情子(せいこ)が甘ったれた声を出す。
 はいはい、と知理がリモコンを手に取り、電子音を鳴らす。
 夏の一日の、いつものやり取り。

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 灯がちらつく……。
 私は幾度変えても直ぐに駄目になる蛍光灯に、小さく悪態をつきながら、廊下の突き当たりの物置に予備の蛍光灯を取りに向かった。この部屋に越して来てから二箇月、既に買い置きするのが当たり前になっている。余りに頻繁なので配線設備そのものに欠陥があるんじゃないかと、管理人を通じて点検して貰ったけれど、それは無駄に終わった。設備には何の問題も無いと業者に保証されれば、私としてはそれを信じる他無い。
 2LDKの部屋を頑張って借りたのはいいけれど、ルームシェアをする筈だった友達は実家で問題があってなかなか出て来られない。彼女は平謝りしつつ、本来折半する筈だった家賃の半分を送ってきたけれど、それは本当に来てからでいいと、私は送り返した。勿論、二人で払う心算だった家賃、私一人できつい事はきついんだけど……彼女だって大変なんだもの。数箇月の辛抱。そう思って私はバイトの時間を増やした。
 それにしてもこの蛍光灯の消費率は家計にも打撃だわ。

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「お前なんて、橋の下で拾って来た子だよ!」
 母は怒るとよくそう悪態をついた。友達に訊くと、皆、多かれ少なかれ似た様な事を言われているらしい。
 でも、何で定番は「橋の下」なんだろう?
 高校生にもなってそんな事をぼやいていると、同級生の一人が言った。
「橋は川を挟んだ土地の境に架けられたものだろう? ましてや昔は川で地域が区切られていたから、まさに村や町といった家族的共同体と外部との境。そんな橋の下から拾ったものは何処のものとも知れない、村のものでもなければ、隣の村のものでもない。詰まりは……得体の知れないものだ」
「何だよ、じゃ、俺は得体の知れないものかよ」流石に顔を顰めて口を挟む。
「まあまあ」奴は苦笑を浮かべて俺を宥める。「僕もよく言われてるから……。でもさ……そんな得体の知れないものなら、何をやらかしても不思議じゃないよね?」
 不意に沈んだ奴の口調。
 そこで俺が気付いてやればよかったのだろうか。
 翌日、奴が家族を殺し、降りしきる雨を避ける為なのか、町で一番寂れた橋の下で、暗く響く歌を口ずさんでいる所を発見されるよりも前に……。

 雨雨降れ降れ 母さんが 蛇の目でお迎え嬉しいな
 ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん

 奴は何処のお母さんを待っているのだろう? 

                      ―了―
 
 真夜中に何書いてるんだ、私☆
 携帯で書いたから記号が変かも? 後で直します。 直した(笑)

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 古来より、橋は異界との境と伝えられる――ならば、その下は?

「やっぱり、あったあった」俺は浮かれた声で呟く。
 目の前にはぽっかりと開いた暗渠。足元にはちょろちょろと心許ない水の流れが、かつての川の名残りを匂わせている。頭上には苔に覆われた石造りのトンネル――いや、アーチを描く橋だった。
 かつては石橋だったものが、土砂に埋もれ、年月に埋もれ、地上に一部を出すだけとなっていたり、トンネルの一部に流用されていたりする事がある。かつて川だった場所、今は寂れた村との境の場所を探せば、時折、見付かる。
 それを探すのが、目下の俺の趣味だった。会社の休みともなれば、自転車を駆って各地の道を巡る。車じゃあ、足元なんてのんびり見ちゃいられない。自転車が丁度良かった。
 道と共に生命線だったそれが廃れ行き、忘れ行かれる様に、某かの哀れさを感じたのかも知れない。あるいは時の流れの無情さか。
 そして今日も、俺は一つの「橋」を見付けた。

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 記憶に今も残るのは、花火が鮮やかで綺麗な晩だった。
 私と彼は橋の欄干にぴったりと並んで凭れ、次々に打ち上げられる花火に見入っていた。幸いにも見物客は多くなく、私達は冴え冴えした夜空に繰り広げられる夢の様な色彩に存分に浸っていた。ぎゅっと握った手が、お互いの体温を、存在を、教えてくれて――それが嬉しかった。

 そして今晩も、私達はあの時の様に橋に並んで、夜空を見上げた。尤も、私は団扇の端から、彼の笑顔を窺う事が多かったけれど。浴衣のアサガオ模様に合わせた大き目の巾着の紐を、ぎゅっと握り締めながら。
 なのに、花火大会が終わり、帰る頃には私は一人だった。
 はぐれた訳じゃあない。人出は多かったけれど、彼はその中でも群を抜いて長身だったから。
 喧嘩別れした訳でもない。彼はいつも穏やかに笑って、私の我が儘を聞いてくれたから。
 でも、一つだけ、聞いてくれない――聞けない事があった。
 
 もう一度、あの一段と鮮やかな冬の花火を二人で見たい。
 懐かしいのは冬の冴えた空気の下の色彩と、二人のぬくもり。
 けれどそれはもう叶わない――私は河原に降り、巾着から紙製の流し灯篭を取り出し、初盆となる彼の為に火を灯し、思い出の川にそっと流した。
 あの日の花火の残り火の様にその灯は流れて行き、私はそれが見えなくなる迄、お盆にしか逢う事の出来ない彼を思い、川面を見詰めた。
 また来年――そう呟いて。

                      ―了―

 やっぱり幽霊、怖くねー!!(爆)
 今日は頭痛がするので早く寝よう(--;)

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 一、二、三、四、五……未だ音はしない。
 稲光が閃いてから雷鳴がする迄、その間の秒数に大気中での平均的な音速――約三四〇メートルを掛ける。
 そんな計算をして気を紛らわせると同時に、未だ雷雲の本体迄遠い、と安心していたのだけれど、カウントは徐々に短く――近くなっていく。
 私は帰路を急いだ。辺りは真新しい家やマンションが立ち並ぶ住宅街。午後四時という、夏としては十二分に明るい時刻だったが、垂れ込めた雨雲の為に周囲は暗い。私のマンションはこの住宅街のほぼ中心に位置していた。駅からの距離は結構、ある。
 一、二、三、四、五――そこ迄数えて、地を這う様に響く雷鳴に身を竦めた。
 硬直が解けると共に、私は半ば小走りになっていた。
 私は雷が怖かった。
 誰だって怖い? そうだろう。けれど――私は決して、追い付かれてはいけないのだ。雷に。

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 湖の上を渡る風は、心持ちひんやりとして、心地よかった。
 更にボートの緩やかな揺れが、眠気を誘う。だが、早朝の今なら兎も角、夏の昼日中迄この遮る物の無いボートの上で寝入りでもしたら、天高く昇った太陽にこんがり焼かれてしまう。
 第一、こんな湖で眠ったら、絶対に――悪夢に苛まれる。
 此処には彼女が眠っているのだから。

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