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窓の外を見ると、日差し溢れた農園が広がっていた。
濃い緑が等間隔に整列し、朝の陽を存分に浴びている。
遠くの方には、早くも立ち働く人達の姿が見える。
少し懐かしい感じがする。けれど、多分、それは私の記憶じゃあない。私の記憶の中にあったとしても、きっとテレビか何かで間接的に見知っただけの事。あの景色の中に、私自身が居た訳じゃない。
それでも懐かしいのは……私の中に眠る祖先の記憶か、それとも集合的無意識という奴か。
兎に角、此処は私の場所じゃあない。
視界のブラックアウトと共に、私は窓から意識を逸らした。
昼間、窓を見ると外には見渡す限りの海原が広がっていた。
青い海面で煌く照り返しが、眩しい。
ここ数日の猛暑の所為だろう、人の姿が思いの他、多い。
私は海には入った事がない。淡水のプールより身体が軽いと聞くけれど、どんな感じなのだろう?
でも、今更それを確かめる為に海に行く気にはならない。
やはり、此処も私の場所じゃあないのだ。
再び、視界は黒く染まった。
夕方の窓外は、、山体に、周囲に纏った雲に、茜色の夕陽の照り映える光景が見事だった。
黄金に輝く落日の、最後の一欠片がその陰に沈んで行く。
麓の家々からは温かい湯気が立ち上り、夕餉の支度が進んでいる事を、帰り来る人達に教えている。
それでも、その中に私の帰りを待ってくれている家は無い。
やはり此処も、私の場所じゃあない。
「じゃあ、一体何処なんです?」傍らに立った車掌が、困惑顔で、そう尋ねた。
私は黙って、自分の場所を思い浮かべた。
灰色のビル街。猛スピードで擦れ違って行く雑多な人々。排気ガスに煤けて元気のない街路樹。
電気が無ければ一瞬で瓦解しそうな、脆弱ながらも貪欲な社会。
そして互いの帰りを待つと言うには程遠い、会話なき家。
それでも、こうしてありありと思い浮かべると、何故か落ち着くのだった。
やはり――少なくとも今は――そこが自分の場所なのだと。
歳を取ったら、また変わるかも知れない。けれど今は、やはりそこが落ち着く。
「解りました」車掌は言い、頭を垂れると前方の車両に向かって行った。
自分が何処からこの列車に乗っていたのか、実は定かな記憶はない。
只、ちょっと、日常に疲れていたのは事実だ。この儘でいいのか、不安を覚えてもいた。
それでも、私は結局、今に帰る事にした。
窓から見た、ほんの一部ながらも、私は私の居場所を再確認出来た様だ。
いずれ素晴らしい景色だったが、今はあの街が懐かしい。
帰ろう。そして言おう。
「やはりうちが一番だ」と。
―了―
旅行の締めはやはりこの台詞でしょう(笑)
でも、帰宅するとほっとする~☆
巽さんって、すごいです!
前々から、何か話題とかきっかけがあると、「あ、小説になってる w(°0°)w ホッホー」とか、思ってましたが、こんなに次々と小説になっていくなんて。。。
まるで魔法のようだ
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家にたどり着いたときの安堵感といったら、無かったです。。。いや、あったんだけど^^;;;w
いきて帰ってこれて、よかった(T_T) ウルウル
ではではー^^;/
や、nukunukuさんの行動力の方が凄いです!
AA可愛い(*^-^*)
ま、その場合も乗り越した分は精算するのが規則なのだろうけど、この鉄道はやさしいのだと決め付け(笑)
そうですね、我が家が一番ですね!