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「やっぱり繋がらないわ……」溜息をついて、亮子は受話器を置いた。「どうなってるのかしら? 誰も出ないなんて」
問い掛けの視線に、しかし私も首を傾げるしかなかった。
面倒な宿題は皆で協力してさっさと済ませ、冬休みをのんびり過ごそう――毎年取り沙汰されながらも、一度も実行に移されなかった計画を遂に決行すべく、この日私達は亮子の部屋に集まる事にしたのだけれど……。
約束の時間を五分過ぎ、十分過ぎても集まったのは部屋の主である亮子と、隣に住む幼馴染でもある私だけ。遅れるという連絡もない儘、誰も現れない。
もしかしたら皆揃って日時を間違えてでもいるのかと、亮子が電話を掛けてみるものの、それにも誰も応えない。いや、それ以前に繋がらないと言う。
「ピー、ピーって、音がするだけなの。故障かしら? あ、だから向こうからも連絡がこないのかな?」
「でも、それなら携帯にでも掛けてくるか、メールするかしそうなものだけど」と、私。「本当に故障? 私の携帯に掛けてみてよ」
頷いて、固定電話のダイヤルを回す、亮子。
彼女の家は古風と言うか何と言うか……高校生の娘が携帯持っていないのも、家の電話がダイヤル式なのも、今時そうそうお目に掛かれる光景じゃないと思うわ。
そんな事を思っている私の手の中で、マナーモードにしていた携帯が震えた。着信。表示は山中亮子。
「故障じゃないみたいね」私はフラップを開けて表示を見せた。「少なくとも、この家の電話の故障じゃあない」
「でも……それじゃあ、皆の電話が一斉に故障したって言うの? その方が余程あり得ないでしょ」
確かに。
今日約束していたのは私達の他に三人。その三人共が遅刻して、然もその三人の電話が一斉に故障するなんて……。
「何かあったのかしら……?」亮子は不安げに眉根を寄せた。
私も、やはり不安だった。事故でもあったのか、と。三人の家は山一つ向こう。長いトンネルを通って来なければならないのだ。
「三人の家には? もし、携帯が大規模な通話障害とかあったとしても、家電とは仕組みが違うから……。もう出たのかどうかだけでも確認出来るでしょ」
頷いて、普段掛ける事のない三人の家の固定電話の番号を名簿で確認して掛ける亮子。
よく考えたら、亮子って携帯も、メモリー機能の付いた新型の固定電話も使ってないんだ。でも、皆の携帯の番号はちゃんと覚えてる――私は多分、携帯のアドレスに登録してなかったら、誰にも掛けられないよ。機器の記録容量が増えた分、人間の記憶容量が減ってるんじゃないかしら。
そんな他愛もない事を考えている内に、亮子は口を開いた。不安げに、私を見詰めて。
「繋がったけど……おかしな事を言ってるの。美香子」
「美香子ぉ!? 本人、家に居るの?」私は目を丸くした。「何よ、日時間違ってたの? 真逆、本当に三人が三人とも?」
「それが……」蒼い顔で、受話器を私に差し出す。
「もしもし?」怪訝な思いで受話器を耳に当てた私は、向こうから聞こえてくる怯えた様な声に、息を飲んだ。
〈あの……私達、三人で一緒に行こうって待ち合わせして……でも、バスに乗ったらその街一帯、迂回されちゃって……。立ち入り禁止で……! 携帯もその辺では繋がらなくって、仕方なく家に戻ってニュース見たら……〉
私は勢いよく振り返って、テレビの電源を入れた。勉強の邪魔になるからと、ずっと消していたのだ。
けれど、電源は入ったものの、ノイズだらけで映らない。
私は美香子の言葉を待った。
〈局地的な磁気異常で、機器類が全滅……。人体にも影響が出そうだって……。麻奈、亮子、無事なの?〉
大丈夫なのかどうか、俄かには判断出来なかった。
だって……そんな事が起こっているなら、どうして私達は普通にしていられるの? テレビは映らないけれど、部屋の電気は点いているし、私の携帯は無事だった。
私達の住む街で、そんな事が起こっているなら……私達は今、何処に居るの?
茫然とする私の手の中で、受話器は沈黙した。
恐る恐る窓の外を見た亮子がひっ! と息を詰めた。
私達は――宿題をしなくてよくなったのかも知れない……。
―了―
繋がらない……のは、管理画面ー!!
やっと入れたけど……無事投稿出来るか!?
今時、携帯持ってない高校生って、どれだけ居るんだろうか?