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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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 人が減り、それに伴い商店や病院が減り、また人が減り……それを繰り返した町は、加速度的に寂れて行った。
 若い者は職を求めて、この山間の町から離れて都会へ行き、年老いた者は未だ残る未舗装の山道や日々の不便さに音を上げて、名残惜しげにしながらも近隣の老人施設等に移って行った。
 そんな町に、この冬、僕達は越して来た。

「買い物に出るから、この一週間で必要な物は書き出しておいて」母は連絡ノートを寄越してそう言った。毎週土曜日の日課だ。この町では商店は少なく、店の在庫切れは多い。売れないから、どの店も在庫を抱えたがらないのだ。だからちょっと纏まった買い物をしようとすると、近隣の街――と言っても車で片道小一時間も掛かるだろうか――の大型スーパーに行くしかない。車の運転が得意ではない母は、なるべくその機会を少なくしたいらしく、日曜日に一週間分の買い物をする事にしている。
 友達になる様な子供も少ない町に住む僕としては、この週に一度の遠出は是非一緒に行きたい所なのだが……何やかやと用事を作り、母は僕の同行を許してくれない。同じお手伝いをするなら、家の片付けよりも買い物の荷物持ちの方が楽しそうなのに。
 ともあれ、僕にとってはそのノートに欲しい物を書き込むのが、取り敢えずの楽しみではあった。
 でも母曰く、欲しい物じゃなくて必要な物を書きなさい――だからかなぁ。出掛けのチェックで殆ど篩い落とされちゃうんだ。
 今日だって……。

「トモキ、これは駄目よ。スーパーじゃ売ってないもの」
 ともだち、という文字が傍線で消された。塗り潰す様に、何本も何本も、線が引かれる。
「これも駄目ね」
 おとうさん、という文字が同様に消される。
「これは……止めた方がいいわね」暫しの逡巡と、重い溜息。
 どうぶつ、という文字が消された。
「それも売ってないの?」僕は訊いた。ずっと前にテレビで、檻に入っているのを見た覚えがあるのに。
「……」また、逡巡に瞳が揺れた。が、結局母は頭を振った。「止した方がいいわ。お互いの為にね」
 僕にはよく解らない。けど、母が言うのならそうなのだろう。
 続いて、いもうと、かなづち、ないふ……色んな文字が消されて行く。
 何だ、結局残ったのはいつも通り、絵描き帳とクレヨンか。もう一人で絵を描くのも飽きたんだけどな。
 それでも、母の決定は絶対だった。
 僕に家の外に出ないように言い付けて、母は車のハンドルを握った。

 仕方なく、言い付けられた片付けを済ませた僕は、いつもの様に絵描き帳に向かう。後数枚しか、ページはない。道具箱を開けると色々なクレヨンがごっちゃに詰め込んである。どうしても、一箱の中から使い切ってしまう物と、使い残してしまう物が出るのだ。主にその使い残しが、詰め込まれていた。
 がさがさと箱の中を掻き回して、僕は溜息をついた。早く買って来て貰わないと、やっぱりあの色が無い。
 白いページを塗り潰す為の、あの色が……。
 ああ、早く買って来て。
 あの時に見たあの鮮やかな色を、忘れてしまわない内に紙に再現して置きたいんだ。これ迄も何枚も何枚も描いてるのに、どれだけ色を混ぜても巧く行かない。
 あんな綺麗な色を見たのは、あれが初めてだったんだ。
 また、見たいなぁ……。

                    * * *

「トモキは相変わらずよ。やっぱり未だ、外に出せない。出すのは怖いわ」新しいクレヨンの箱を落ち着かない様子で弄りながら、彼女は言った。「あの辺りはもう小さい子供も居ないから、少しだけ気が休まるけれど……」
「そうか……」隣に立った男は沈んだ表情で頷いた。「済まないな。お前に押し付けてしまって」
「仕方ないわ。貴方は仕事を辞める訳にはいかないし、始終あの子を目の届く所に置こうと思ったら、やっぱり私しか……。それより、マナは元気?」
「ああ。頭の傷も癒えた。心の方はもう少し、時間が掛かりそうだが……」
「当然、ね。訳も解らず、お兄ちゃんに殴られたんだもの。命に別状がなかったのが不幸中の幸いだわ」
「……」
 暫し、二人は黙して遠くを見詰めた。
 数週間前、幼い妹を金鎚で殴って怪我を負わせた息子を、それでも二人は手放せなかった。通報すれば取り上げられ、施設に入れられてしまう。そう思ったのだ。
 話を聞けば聞く程に、息子の犯行動機が悪戯や嫉妬ではない事が、そこに潜む赤い色への異常な渇望が見えてきたから。
 その心理が危険なものだと、知ってしまったから。
「じゃ、遅くなると心配だから、買い物を済ませて早く帰るわ」一時の平穏を吹っ切る様にそう言って、彼女はクレヨンの箱を持ってレジに向かった。
 赤い色はどうせ直ぐに無くなるのだろうけれど。

                      ―了―


 皆さん、何色が好きですかー?(^^)

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青が好きぃーーー^^v
こんにちはー^^

(だらだら、書いてたら、長文になったわりに、まったく落ちがつかなくて、面白くも無い米になったので、書き直しました(*^o^*) テレテレ)

では、改めて^^v

(医学的に攻めたら、落ちつけたところで、ヒンシュク物の結末オチになったので、再び書き直し( ̄□ ̄;)ガビィーン)

3度目の正直だ^^v

(初っ端で「海が好きーー!」っと書いたところで、嫌な予感がしたけど。。。予感的中。。。だめだこりゃwww)

うううーーーんんん。。。。。

今日の「お題」は難しいじょーーーー(T_T) ウルウル
nukunuku URL 2010/12/15(Wed)00:33:48 編集
Re:青が好きぃーーー^^v
「お題」ですか(^^;)
取り敢えず、結論は『青が好きぃーーー』という事で(笑)
巽(たつみ)【2010/12/15 22:06】
無題
どもども!
将来有望な通り魔になりそうっすねw
秋葉原に歩行者天国が復活するみたいだし、ちょっと送り込んでみます?(爆)
ちなみに好きな色はピンクですww
猫バカ1番 URL 2010/12/15(Wed)23:09:08 編集
Re:無題
取り敢えず厳戒態勢で(^^;)
巽(たつみ)【2010/12/17 21:39】
無題
子供よりも母親が怖い。。。
早ければ早いほど更生できると思うのに

私はピンクと紫が好き~☆
でも着る服は大抵黒かグレーだなぁw
moon URL 2010/12/19(Sun)22:54:29 編集
Re:無題
取り敢えずなかった事として、隔離してしまう……ある意味、解決からは遠ざかってますよね。このお母さん(・・;)

服は黒orグレーでシックに、でもネイルはピンクとか紫でワンポイント、とかいいですよね^^
大人だけど可愛く、みたいな感じで♪
巽(たつみ)【2010/12/19 23:24】
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