〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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「いつ迄もそこに居ても身体が冷えるだけだよ?」
「そうそう、こっちにおいで?」
そんな声も耳に入らない様子で、高校の制服姿の千賀子はじっとしゃがみ込んでいた。この秋、亡くした両親が眠る墓の前で。
先祖代々が眠る、最早角の磨り減った墓石は、家を見下ろす高台にあった。そこから家を見守るかの様に。
立ち上がれば反対側には鈍色の冬の海が広がる。吹き上げる風が冷たく、彼女の髪を弄った。
「ほら、そこは寒いだろう?」
「早くこっちにおいで?」
千賀子はそっと、墓石に触れた。冷たく硬い石の感触――両親の温もりは微塵も感じられなかった。
頬に伝う涙だけが、熱かった。
「そこに一人で居る気かい?」
「こっちに来れば皆が包み込んでくれるよ?」
千賀子は家を見下ろし、踵を返して海を眺め――再び、向きを転じた。
高台から、親族達が待つ家に下りる階段へと。
海から聞こえる、新たな死者を待つもの達の「声」を振り切る様に。
―了―
遅くなったので短め更新!(←おい)
冬の海……冷たく暗いイメージがありますな。
「そうそう、こっちにおいで?」
そんな声も耳に入らない様子で、高校の制服姿の千賀子はじっとしゃがみ込んでいた。この秋、亡くした両親が眠る墓の前で。
先祖代々が眠る、最早角の磨り減った墓石は、家を見下ろす高台にあった。そこから家を見守るかの様に。
立ち上がれば反対側には鈍色の冬の海が広がる。吹き上げる風が冷たく、彼女の髪を弄った。
「ほら、そこは寒いだろう?」
「早くこっちにおいで?」
千賀子はそっと、墓石に触れた。冷たく硬い石の感触――両親の温もりは微塵も感じられなかった。
頬に伝う涙だけが、熱かった。
「そこに一人で居る気かい?」
「こっちに来れば皆が包み込んでくれるよ?」
千賀子は家を見下ろし、踵を返して海を眺め――再び、向きを転じた。
高台から、親族達が待つ家に下りる階段へと。
海から聞こえる、新たな死者を待つもの達の「声」を振り切る様に。
―了―
遅くなったので短め更新!(←おい)
冬の海……冷たく暗いイメージがありますな。
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Re:無題
そんな両親は嫌だ~∑( ̄□ ̄゜)
や、それも考えはしたんですけどね(苦笑)
や、それも考えはしたんですけどね(苦笑)
Re:こんばんは
ちゃったのよ。
両親だったらまたちょっと彼女の対応も違うかも知れないけど……。
娘を死に誘う様な両親なら、付いて行かないか。
両親だったらまたちょっと彼女の対応も違うかも知れないけど……。
娘を死に誘う様な両親なら、付いて行かないか。
Re:こんばんは♪
冬の海……特に日本海側って、寒い、暗いイメージが……。
呼んでたのはお坊さんでも親戚の人でもないよ~(笑)
呼んでたのはお坊さんでも親戚の人でもないよ~(笑)
Re:こんばんは
親戚ちゃうよ~。お坊さんもちゃうよ~。
水場には色々集まると言うからねぇ。
水場には色々集まると言うからねぇ。
Re:きょうは月夜と反
訳解らん!
Re:???
両親……ではないです。
そんな両親なら涙は必要ありませんから。
そんな両親なら涙は必要ありませんから。
Re:こんばんは
冬の海……寒い(-。-;)
それでなくても寒いよー、眠いよー。
それでなくても寒いよー、眠いよー。
Re:無題
んにゃ。それは別の理由だったりします。
偶々お墓があの位置だったもので、寂しい彼女に干渉した様なものです。
偶々お墓があの位置だったもので、寂しい彼女に干渉した様なものです。