〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
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初めての店に入るのには、ちょっと勇気がいる。況して、その扉にこんなことが書いてあったなら。
『田辺昇太様貸切り御予約』
「何……?」僕は眉を顰めた。それは僕の名前だった。が、無論僕のした予約ではない。
しかし確かに指定はこの喫茶店だった。日時も今日、時間は今から五分後だ。手紙は指示通りに処分したものの、文面は一字一句間違い無しにこの頭に入っている。
僕は意を決してドアノブに手を掛けた。施錠されていたなら悪い冗談だったと思って帰ってやる――その思いに反して、ノブは軽く回り、僕は帰る口実を失った。
カラン……ドアの動きに連れて軽やかなベルの音が響いた。しかし迎える声は無く、人の姿も無かった。やはり休み? なら何故鍵が掛かっていないんだ?
店内は灯は点いているものの薄暗く、空調は効いていないのかどこか澱んだ空気。
居心地の悪い店内に、僕の足音のみ響く。
僕は予め指定されていた一番奥、窓際の席――『予約席』のプレートがあった――に着いて待つ。店員も居ない、珈琲の一つも出ない店で何をしているんだろう、と自嘲する。しかし、待たねばならない理由がある。
昨日妹経由で僕に届いた手紙には、僕が密かに自作した爆弾とノートを預かったという事、バラされたくなかったら今日この場所へとの指示が書かれていた。急ぎ隠し場所の廃工場へ走った僕は手紙が真実だと悟った。妹は知らない男から預かったとだけ言った。
指定の時間が過ぎた事を、僕は腕時計で確認した。しかし誰も現れる気配は無い。からかわれたのか? だが現実に爆弾を押さえられている以上、不安から逃れる術は無い。
苛立ちを紛らわせようと、通り向こうの電気屋の店先に並んだテレビを眺める。と、見覚えのある建物が映った――僕の学校?
次の瞬間、校舎が爆破された。
「なっ……!」椅子を蹴って立ち上がったものの、僕は一歩も動けなかった。
あれは真逆僕の作った爆弾なのか? しかし何故……? いや……確かに学校は僕の仮想の標的の一つだった。ノートにもそう書いた。無論、ストレス発散の為の悪い冗談だ。爆弾の威力だってもっと小規模な筈。
どうしよう――頭にはその言葉しか無い。もし本当に僕が作ったもので、それがバレたとしたら……僕が捕まるのか? そんな!
「使う気なんて無かったんだ!」無人の店内で、僕は不安に耐え切れず喚いていた。「作ってみるだけ、想像するだけだったのに!」
「本当ね?」店の奥から現れたのは我が妹。
「お前……」茫然としつつ、手紙が彼女の狂言だと知った。爆弾も彼女の仕業だと。
「あれは映画部作成のVTRを流してって頼んだの。良かったわ。兄さんが本当に使う気だったら、その椅子に仕掛けた例の爆弾のスイッチを押す処だったわ」妹は笑った。
―了―
一応九月のお題から。去年のだけど(^^;
お店は色々考えられますね。そこに何が書いてあるか……それも様々。
今回のは簡単な話になり過ぎた気がします☆
「何……?」僕は眉を顰めた。それは僕の名前だった。が、無論僕のした予約ではない。
しかし確かに指定はこの喫茶店だった。日時も今日、時間は今から五分後だ。手紙は指示通りに処分したものの、文面は一字一句間違い無しにこの頭に入っている。
僕は意を決してドアノブに手を掛けた。施錠されていたなら悪い冗談だったと思って帰ってやる――その思いに反して、ノブは軽く回り、僕は帰る口実を失った。
カラン……ドアの動きに連れて軽やかなベルの音が響いた。しかし迎える声は無く、人の姿も無かった。やはり休み? なら何故鍵が掛かっていないんだ?
店内は灯は点いているものの薄暗く、空調は効いていないのかどこか澱んだ空気。
居心地の悪い店内に、僕の足音のみ響く。
僕は予め指定されていた一番奥、窓際の席――『予約席』のプレートがあった――に着いて待つ。店員も居ない、珈琲の一つも出ない店で何をしているんだろう、と自嘲する。しかし、待たねばならない理由がある。
昨日妹経由で僕に届いた手紙には、僕が密かに自作した爆弾とノートを預かったという事、バラされたくなかったら今日この場所へとの指示が書かれていた。急ぎ隠し場所の廃工場へ走った僕は手紙が真実だと悟った。妹は知らない男から預かったとだけ言った。
指定の時間が過ぎた事を、僕は腕時計で確認した。しかし誰も現れる気配は無い。からかわれたのか? だが現実に爆弾を押さえられている以上、不安から逃れる術は無い。
苛立ちを紛らわせようと、通り向こうの電気屋の店先に並んだテレビを眺める。と、見覚えのある建物が映った――僕の学校?
次の瞬間、校舎が爆破された。
「なっ……!」椅子を蹴って立ち上がったものの、僕は一歩も動けなかった。
あれは真逆僕の作った爆弾なのか? しかし何故……? いや……確かに学校は僕の仮想の標的の一つだった。ノートにもそう書いた。無論、ストレス発散の為の悪い冗談だ。爆弾の威力だってもっと小規模な筈。
どうしよう――頭にはその言葉しか無い。もし本当に僕が作ったもので、それがバレたとしたら……僕が捕まるのか? そんな!
「使う気なんて無かったんだ!」無人の店内で、僕は不安に耐え切れず喚いていた。「作ってみるだけ、想像するだけだったのに!」
「本当ね?」店の奥から現れたのは我が妹。
「お前……」茫然としつつ、手紙が彼女の狂言だと知った。爆弾も彼女の仕業だと。
「あれは映画部作成のVTRを流してって頼んだの。良かったわ。兄さんが本当に使う気だったら、その椅子に仕掛けた例の爆弾のスイッチを押す処だったわ」妹は笑った。
―了―
一応九月のお題から。去年のだけど(^^;
お店は色々考えられますね。そこに何が書いてあるか……それも様々。
今回のは簡単な話になり過ぎた気がします☆
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Re:無題
有難うございます(^^)
爆弾……(^^;)
使う気は無いけど何か作れたらかっこいい♪ みたいに思う時期ってある様な……。特に男子は好きかも?
爆弾……(^^;)
使う気は無いけど何か作れたらかっこいい♪ みたいに思う時期ってある様な……。特に男子は好きかも?