〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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σ(・_・)は(^・×・^)である。
なまえは……あ。まずい。ぱぱだ。
こら、待ちなさい。ミトン。勝手にパパの携帯(いや、本当はZのなんですがね)悪戯して。
いや、娘が失礼しました。改めまして、Z家の同居猫、フィドルです。にゃん。
そうそう、報告が未だでした。モールとの間に三つ子が生まれましてねぇ。これがまた私似で可愛いの何の……って親バカが出る処でした。失礼。
現在一ヶ月で――Zの奴が二匹を里子に出しちまったんですよぉ! まぁ、近所なんで毎日見に行ってますがね。私は。
それで今居るのが先程の娘、ミトン一匹。一番私似で、スフィンクスの血が入っているとは思えない程、黒斑の毛もふわふわ、つやつやで、目も綺麗なブルーでそれはもう……ってまた親バカが!
度々失礼を……。
さてさてそんなミトンですが、これが好奇心旺盛でしてねぇ。こんな本を持ち出して来たんですよぉ。
『五十円玉二十枚の謎』
ある書店に毎週土曜日の夕刻、両替を頼む中年男が現れる。それも必ず五十円玉二十枚を千円札に。店員のお嬢さんはこれが余程気になる様でした。
そしてうちの愛娘も。
ぱぱ、どうしてぇ? ――なんてあどけない表情で見上げられたら「これはちょっと……」なんて言えません。
しかし、これは……。
私の脳裏に一つの仮説が浮かびました。
こんな話が……。
なまえは……あ。まずい。ぱぱだ。
こら、待ちなさい。ミトン。勝手にパパの携帯(いや、本当はZのなんですがね)悪戯して。
いや、娘が失礼しました。改めまして、Z家の同居猫、フィドルです。にゃん。
そうそう、報告が未だでした。モールとの間に三つ子が生まれましてねぇ。これがまた私似で可愛いの何の……って親バカが出る処でした。失礼。
現在一ヶ月で――Zの奴が二匹を里子に出しちまったんですよぉ! まぁ、近所なんで毎日見に行ってますがね。私は。
それで今居るのが先程の娘、ミトン一匹。一番私似で、スフィンクスの血が入っているとは思えない程、黒斑の毛もふわふわ、つやつやで、目も綺麗なブルーでそれはもう……ってまた親バカが!
度々失礼を……。
さてさてそんなミトンですが、これが好奇心旺盛でしてねぇ。こんな本を持ち出して来たんですよぉ。
『五十円玉二十枚の謎』
ある書店に毎週土曜日の夕刻、両替を頼む中年男が現れる。それも必ず五十円玉二十枚を千円札に。店員のお嬢さんはこれが余程気になる様でした。
そしてうちの愛娘も。
ぱぱ、どうしてぇ? ――なんてあどけない表情で見上げられたら「これはちょっと……」なんて言えません。
しかし、これは……。
私の脳裏に一つの仮説が浮かびました。
こんな話が……。
と、ここで皆様に質問ですが、五円玉や五十円玉といった穴の開いた硬貨を糸や紐で繋いで造った置物、ご覧になった事はありますか? 鳥やら魚やら……。所謂縁起物の類なのか、亀だったり梟だったりもしますが。
フクロウ=不苦労なんて奴ですねぇ。
あれ、なかなか見事なものですが、硬貨がどれ位必要なものなんでしょうね?
鳥の羽にしても魚の鱗にしても、何十枚かずつしっかり繋げて形にしては、本体に更に繋ぎ止めていく。根気の要る作業ですな。
それを羽一枚、鱗一枚ずつと言えどもちょろまかしている奴が居るとしたら許せませんな。例えその一枚が五十円玉二十枚――千円でも!
恐らく中年男はこれを趣味にしている御老人――偏見ですが金と暇の余った御老人の家に出入りする者でしょう。
あるいは今で言う軽度の認知症の御老人だったのかも知れませんねぇ。男はその面倒を、毎週土曜日だけ、見ていた。
雇われたのか、身内で順番に見ていて土曜が彼の担当だったのか。
え? ちょろまかしたのではなく、そのお礼に小遣いとして貰ったのではないかって?
態々造った置物から羽なり鱗なりを剥がしてですか? 外す手間も両替する手間もあるのに?
それ位なら私なら千円札上げますよ。勿論、持ってませんけど。猫ですから。にゃん。
それに中年男は慌てて両替してました。疚しさってものがあったんでしょうかね。一応。
しかし……私は正面で期待する様な眼で私を見ている娘を見遣りました。薄蒼いキトゥン・ブルーから私に似た澄んだブルーになったばかりの瞳。
…………。
暫し悩んだ後、私は一つ、作り話を思い付きました。
* * * * *
ある手品師がおりました。彼は未だ見習いでしたが、優しい男で、ある貧乏な孤児院に毎週土曜日に手品を見せに行っていました。
本当は無料で見せて上げたかったのですが……彼は未だ見習いの身。
お師匠さんに「芸は只で見せるもんじゃない」と言われたら、逆らえませんでした。
孤児院の先生方も只では悪い、と聞きません。
それでも男は一人百円でと約束を取り付けました。破格値ですね。
只、子供達は二十人居ましたが、お師匠さんには十人と言いました。そして、先生達には一人五十円、と。
百円×十人で千円。
五十円×二十人でも千円。
男はそうして毎週毎週子供達を楽しませては、千円分の硬貨を貰って帰るのでした。
但し――子供達はいつも彼の帰り際に、一人ずつ五十円玉を笑顔と共に渡してくれるのですが――この儘では、お師匠さんに怪しまれてしまいます。
「何でいつも五十円玉二十枚なんだ?」と。
普通なら五十円玉二枚で払う子が居たとしてもそれが全員って事は無いでしょうからねぇ。
でも男は先生達に纏めて千円くれるようには言いませんでした。
子供達がきゅっと握り締めていた五十円玉。それを一人一人、渡してくれる時の笑顔が何よりの報酬でしたから。
だから男は帰りに――帰りだって大急ぎです。師匠の舞台の助手も務めなければなりませんから――駅前の本屋で千円札に両替します。
そしてお師匠さんにはそれを渡すのです。
でも……お師匠さんはそのお金をどうしていたのでしょうか? そして、本当に気付いていなかったのでしょうか?
クリスマスに孤児院に届けられたお師匠さんのマジックショーの招待券とプレゼントは……きっちり、二十人分、ありましたけれどね。
* * * * *
ミトンは無邪気に私も手品見たい~などとZにせがみに行きました。無論、Zの奴には通じやしませんが。
それでも、みゃあみゃあ甘えた声で懐くミトンを愛しげに撫でては、御飯かな、玩具かな、とZは話し掛けてます。同居人バカめ。
しかし……。
ミトンも私達の娘。いずれは私の導き出した答えや、あるいはもっと別の解を見付けるでしょうが、今は未だ……と。
こんな夢物語を語って聞かせるなんて、私もやっぱり、充分、親バカでしょうか?
―了―
フクロウ=不苦労なんて奴ですねぇ。
あれ、なかなか見事なものですが、硬貨がどれ位必要なものなんでしょうね?
鳥の羽にしても魚の鱗にしても、何十枚かずつしっかり繋げて形にしては、本体に更に繋ぎ止めていく。根気の要る作業ですな。
それを羽一枚、鱗一枚ずつと言えどもちょろまかしている奴が居るとしたら許せませんな。例えその一枚が五十円玉二十枚――千円でも!
恐らく中年男はこれを趣味にしている御老人――偏見ですが金と暇の余った御老人の家に出入りする者でしょう。
あるいは今で言う軽度の認知症の御老人だったのかも知れませんねぇ。男はその面倒を、毎週土曜日だけ、見ていた。
雇われたのか、身内で順番に見ていて土曜が彼の担当だったのか。
え? ちょろまかしたのではなく、そのお礼に小遣いとして貰ったのではないかって?
態々造った置物から羽なり鱗なりを剥がしてですか? 外す手間も両替する手間もあるのに?
それ位なら私なら千円札上げますよ。勿論、持ってませんけど。猫ですから。にゃん。
それに中年男は慌てて両替してました。疚しさってものがあったんでしょうかね。一応。
しかし……私は正面で期待する様な眼で私を見ている娘を見遣りました。薄蒼いキトゥン・ブルーから私に似た澄んだブルーになったばかりの瞳。
…………。
暫し悩んだ後、私は一つ、作り話を思い付きました。
* * * * *
ある手品師がおりました。彼は未だ見習いでしたが、優しい男で、ある貧乏な孤児院に毎週土曜日に手品を見せに行っていました。
本当は無料で見せて上げたかったのですが……彼は未だ見習いの身。
お師匠さんに「芸は只で見せるもんじゃない」と言われたら、逆らえませんでした。
孤児院の先生方も只では悪い、と聞きません。
それでも男は一人百円でと約束を取り付けました。破格値ですね。
只、子供達は二十人居ましたが、お師匠さんには十人と言いました。そして、先生達には一人五十円、と。
百円×十人で千円。
五十円×二十人でも千円。
男はそうして毎週毎週子供達を楽しませては、千円分の硬貨を貰って帰るのでした。
但し――子供達はいつも彼の帰り際に、一人ずつ五十円玉を笑顔と共に渡してくれるのですが――この儘では、お師匠さんに怪しまれてしまいます。
「何でいつも五十円玉二十枚なんだ?」と。
普通なら五十円玉二枚で払う子が居たとしてもそれが全員って事は無いでしょうからねぇ。
でも男は先生達に纏めて千円くれるようには言いませんでした。
子供達がきゅっと握り締めていた五十円玉。それを一人一人、渡してくれる時の笑顔が何よりの報酬でしたから。
だから男は帰りに――帰りだって大急ぎです。師匠の舞台の助手も務めなければなりませんから――駅前の本屋で千円札に両替します。
そしてお師匠さんにはそれを渡すのです。
でも……お師匠さんはそのお金をどうしていたのでしょうか? そして、本当に気付いていなかったのでしょうか?
クリスマスに孤児院に届けられたお師匠さんのマジックショーの招待券とプレゼントは……きっちり、二十人分、ありましたけれどね。
* * * * *
ミトンは無邪気に私も手品見たい~などとZにせがみに行きました。無論、Zの奴には通じやしませんが。
それでも、みゃあみゃあ甘えた声で懐くミトンを愛しげに撫でては、御飯かな、玩具かな、とZは話し掛けてます。同居人バカめ。
しかし……。
ミトンも私達の娘。いずれは私の導き出した答えや、あるいはもっと別の解を見付けるでしょうが、今は未だ……と。
こんな夢物語を語って聞かせるなんて、私もやっぱり、充分、親バカでしょうか?
―了―
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