〈2007年9月16日開設〉
これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。
尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。
絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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ノートを団扇(うちわ)代わりに、蒸し暑さに集中力の殆どを失くした俺は黒板から窓の外へと、視線を移動させた。
外は雨。昨日から降り続く、鬱陶しい雨だ。
四階から見下ろすグラウンドには広い水溜まりが広がり、塀の向こうの道路を車が水飛沫を立てて走っている。傘の花はそれを漸(ようよ)う避ける様にして道の端を進んでいる。こんな日に外出、ご苦労様。
尤も、俺もこの時限が終わったら帰途に着くんだけど。雨、止みそうにないなぁ。然も遠雷の響きが徐々に近付いて来る様だった。
と、薄暗い灰色に沈んだ視界の端を、場違いにカラフルな色がふわりと横切った。
風船?――それを認めたと同時に、頭上から教師の雷が降ってきた。
降り続く雨に逆らう様に上昇し続ける風船。それは幾つも幾つも現れては、風に運ばれて消えて行った。
赤、黄色、青……一個が消えると次がいつの間にか現れているのに気付く。
何処から?――俺は教師の目を盗みながら、風船の出所を探す。歴史年表なんて後から暗記しても追い付く。それよりも風船はいつ過ぎ去ってしまわないとも限らないんだ。
外は雨。昨日から降り続く、鬱陶しい雨だ。
四階から見下ろすグラウンドには広い水溜まりが広がり、塀の向こうの道路を車が水飛沫を立てて走っている。傘の花はそれを漸(ようよ)う避ける様にして道の端を進んでいる。こんな日に外出、ご苦労様。
尤も、俺もこの時限が終わったら帰途に着くんだけど。雨、止みそうにないなぁ。然も遠雷の響きが徐々に近付いて来る様だった。
と、薄暗い灰色に沈んだ視界の端を、場違いにカラフルな色がふわりと横切った。
風船?――それを認めたと同時に、頭上から教師の雷が降ってきた。
降り続く雨に逆らう様に上昇し続ける風船。それは幾つも幾つも現れては、風に運ばれて消えて行った。
赤、黄色、青……一個が消えると次がいつの間にか現れているのに気付く。
何処から?――俺は教師の目を盗みながら、風船の出所を探す。歴史年表なんて後から暗記しても追い付く。それよりも風船はいつ過ぎ去ってしまわないとも限らないんだ。
校庭の隅に立つ一本の大木。確か桜だったと思うが、緑に覆われた今では春の特別な樹とは違って見える。
その葉陰から、白い風船が浮かび上がってきた。
誰か居るのだろうか――可能な限り覗き込んでみるが、そこに人の姿も、新たな風船の色も無い。なのに白い風船が消える頃には、もう赤い風船が浮かんで来るのだ。より深い葉陰に隠れているんだろうか。
一体誰が? それもこんな雨の中。
そして、俺の他に誰も気付かないのか? 二階には同じ向きに窓の開いた職員室もあるのに。
再度俺限定の雷が落ちた直後、終業ベルが鳴り、俺は終礼を勝手にキャンセルする事にして教室を駆け出した。
桜の樹の下には、誰の姿も無かった。なのに未だ、樹上からは風船が雨に打たれながらも飛び立ち続ける。
樹の下に入り、手で目の上に傘を作りながら俺は見上げた。
と、そこに何かが居る事に気付き、俺は目を眇めてそれをよく見ようとした。
それが何かを見て取ったのとほぼ同時、頭上で凄まじい光と音が炸裂し、雨の中、俺は吹っ飛ばされた。
余りに一瞬で、そして余りに強烈で把握し切れなかった傷みと熱――比喩じゃない、本当の雷に打ちのめされて。
それでも結局、俺は運が良かったんだと思う。
救急車で運ばれ、病院で運良く蘇生し、どうにか回復して数週間振りの登校。その日に見たあの桜の樹は、半分に裂けていて危険だったからとかで、既に切り株だけの姿に成り果てていた。
級友達に悪運の強さをからかわれ、突然のエスケープを不思議がられながらも、俺はあの日見たものの事は胸にしまって置こうと思った。
桜の樹の上で風船を次々と飛ばしていた、黒焦げの人影。
結局風船を見た者は俺の他におらず……俺はアレに誘われたのだろうか?
それ以来、雨の日には窓の外は、見ない。
―了―
蒸し暑い~★集中力落ちる~★
授業中の余所見はご注意!(・`ω´・)
その葉陰から、白い風船が浮かび上がってきた。
誰か居るのだろうか――可能な限り覗き込んでみるが、そこに人の姿も、新たな風船の色も無い。なのに白い風船が消える頃には、もう赤い風船が浮かんで来るのだ。より深い葉陰に隠れているんだろうか。
一体誰が? それもこんな雨の中。
そして、俺の他に誰も気付かないのか? 二階には同じ向きに窓の開いた職員室もあるのに。
再度俺限定の雷が落ちた直後、終業ベルが鳴り、俺は終礼を勝手にキャンセルする事にして教室を駆け出した。
桜の樹の下には、誰の姿も無かった。なのに未だ、樹上からは風船が雨に打たれながらも飛び立ち続ける。
樹の下に入り、手で目の上に傘を作りながら俺は見上げた。
と、そこに何かが居る事に気付き、俺は目を眇めてそれをよく見ようとした。
それが何かを見て取ったのとほぼ同時、頭上で凄まじい光と音が炸裂し、雨の中、俺は吹っ飛ばされた。
余りに一瞬で、そして余りに強烈で把握し切れなかった傷みと熱――比喩じゃない、本当の雷に打ちのめされて。
それでも結局、俺は運が良かったんだと思う。
救急車で運ばれ、病院で運良く蘇生し、どうにか回復して数週間振りの登校。その日に見たあの桜の樹は、半分に裂けていて危険だったからとかで、既に切り株だけの姿に成り果てていた。
級友達に悪運の強さをからかわれ、突然のエスケープを不思議がられながらも、俺はあの日見たものの事は胸にしまって置こうと思った。
桜の樹の上で風船を次々と飛ばしていた、黒焦げの人影。
結局風船を見た者は俺の他におらず……俺はアレに誘われたのだろうか?
それ以来、雨の日には窓の外は、見ない。
―了―
蒸し暑い~★集中力落ちる~★
授業中の余所見はご注意!(・`ω´・)
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Re:余所見
余所見位なら可愛い方?(^^;)
何と無く奇妙な話風味にしてみました。
何と無く奇妙な話風味にしてみました。
Re:こんばんは♪
何だったんでしょうねぇ、黒焦げだし(^^;)
取り敢えず余所見は厳禁で(笑)
取り敢えず余所見は厳禁で(笑)
こんばんはー
桜の木が、落雷の訪れを予見して、風船に自分の子孫の苗木を託したのかなー?なんて思ったけど、ラストを見る限り違うのかー
風船を飛ばしてた奴は、主人公の命を狙う者…得体のしれない存在なのかな?
今日、そちらは落雷は多かったのね?
風船を飛ばしてた奴は、主人公の命を狙う者…得体のしれない存在なのかな?
今日、そちらは落雷は多かったのね?
Re:こんばんはー
じめーっと蒸し暑かったけど、雷は無かったですよー(^^)
桜が苗木を……それもファンタジーでいいなぁ。蒲公英みたい。そう簡単には根付かなさそうだけど、桜は。
桜が苗木を……それもファンタジーでいいなぁ。蒲公英みたい。そう簡単には根付かなさそうだけど、桜は。
Re: ふ~む。
自分にだけしか見えないものは……やっぱり何か怪しいモノ?
然も黒焦げですからね~★
然も黒焦げですからね~★
Re:おはよう!
誘われた様ですねぇ。
樹が誘ったのかあの黒焦げのモノが誘ったのか……ふふふ。
やはり雷が近付いてる時には高い樹の傍には寄らない、という事で!
樹が誘ったのかあの黒焦げのモノが誘ったのか……ふふふ。
やはり雷が近付いてる時には高い樹の傍には寄らない、という事で!
Re:こんにちは
でも、警告だったら、最初っから飛ばさなければ彼は雨の中、あの樹の傍に行こうとはしなかった訳で……。好奇心は何とやら、かにゃ?
Re:こんにちはっ
雷、こっちの方は鳴ってませんでした~。
でも、明け方だったら熟睡してて気付かなかった可能性も大(笑)
雷の時は建物から出ないのが一番!?
後、車の中も完全に締め切ってると結構安全だって言いますね^^
でも、明け方だったら熟睡してて気付かなかった可能性も大(笑)
雷の時は建物から出ないのが一番!?
後、車の中も完全に締め切ってると結構安全だって言いますね^^
Re:こんばんは
有難うございます。
朝から雨は降っていましたが、家の辺りは平野部な所為か幸い、大丈夫でした。山間部とかだとやっぱり地盤が緩んで怖いですけど(--;)
でも、川が近いから要注意なんですけどね。
朝から雨は降っていましたが、家の辺りは平野部な所為か幸い、大丈夫でした。山間部とかだとやっぱり地盤が緩んで怖いですけど(--;)
でも、川が近いから要注意なんですけどね。
Re:無題
雨の日に風船飛ばしてる時点で何か怪しいかと……(^^;)
雨の日、お好きですか? 猫さん達も家でまったりしてそうですものね♪
雨の日、お好きですか? 猫さん達も家でまったりしてそうですものね♪
Re:無題
確かに強運かも!(笑)
雷は基本的に高い所、金属性の物等に落ち易いという話ですが、水分の多い人間にも結構落ち易い……らしいです★
落ちた所から放散するのにも要注意★
雷は基本的に高い所、金属性の物等に落ち易いという話ですが、水分の多い人間にも結構落ち易い……らしいです★
落ちた所から放散するのにも要注意★