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〈2007年9月16日開設〉 これ迄の小説等、纏めてみたいかと思います。主にミステリー系です。 尚、文責・著作権は、巽にあります。無断転載等はお断り致します(する程のものも無いですが)。 絵師様が描いて下さった絵に関しましても、著作権はそれぞれの絵師様に帰属します。無断転載は禁止です。
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 ご無沙汰しております。Z家の同居猫、フィドルです。にゃん。
 年末とやらはZがどたばたと――今更しても大差無さそうな――大掃除とやらを始め、私は掃除機と戦う日々でした。いや、強敵でした。
 それが終わって妙にまったりした時間が到来したのですが……何処からともなく響く鐘の音、矢鱈派手な歌番組とやらを眺めるZ。私も何度か経験した事がある、平和な年末という奴ですなぁ。
 ところが、今年は私には家族があります。
 ワイフのモールと娘のミトン。息子達はそれぞれの家庭で年越しを迎えているのでしょう。
 暖かい炬燵に毛布、実に平和です。
 ところが、翌日の事でした。
 Zの元にあの動物の絵が書かれた葉書とやらが大量に舞い込んだのは。

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 ご無沙汰してます。Z家の同居猫その三、ミトンです。にゃん。
 いきなりですが……のびーっ! あ、すっきりした。
 最近、ぱぱはパトロール、ままはボランティアで、ミトン暇なの。だから弟の所でも行こうと思うんだけど……どっちに行こうかな。
 実は考える迄も無く、あたしの足は喫茶「らんぽ」に向かってるんだけどね。何せ〈しらは〉の所にはホットカーペットが入ってる! 店先に居る事の多い夜護郎の所なんてついでよついで。
 
 しらはがいつもの様に二階の窓を開けてくれる。入るなり、あたしはとろけた。ホットカーペットってどうしてこんなに暖かいのぉ? ま、原理なんてどうでもいいんだけど。
「相変わらず暢気だな、ミトンは」呆れ声で言ったのは、しらはじゃあなかった。ふと見ると、部屋の中にもう一匹の弟、夜護郎が居た。黒い締まった身体におでこの白斑。箱作ってはいるけど、あたし程にはとろけてない……。
「何だ、夜護郎、居たの」ちょっとだけ居住まいを正しながら、あたしは言った。「珍しいわね。美夜ちゃんの方はいいの?」
「美夜は子供会で、近所の子供達と一緒にクリスマス会とやらの準備だそうだ」
 ところがそこでおかしな事があったんだって言う。
「おかしな事って?」好奇心に眼が輝くのを毛繕いの振りで誤魔化して、あたしは訊いた。
 

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 どうもご無沙汰しております。Z家の同居猫、フィドルです。にゃん。
 いや、人間ってのはどうして、カレンダーが残り一枚になっただけであんなに気忙しくなるんでしょうね? 
 この間から打ち合わせだ何だと電話が引っ切り無しに鳴るものですから……ほら、またワイフのモールが以前に仕込まれた通りに、受話器を外しに行きましたよ。お陰で私達迄落ち付かないったら……。
 
 正確にコール二回。駆け寄り様の見事な猫パンチは最早職人芸の域でしょう。
「また負けた……」慌てて駆け寄りつつ競り負けたZがぼやきながらも落ちた受話器を拾います。もう、落ちても大丈夫な様に、電話台の近辺にはクッションを敷き詰めてありますよ。時にはそれに埋まって長電話なんて事もある様ですから、単にショックアブソーバーなのかどうか判りませんが。
 今回も長話になりそうで、Zはクッションに身を沈めました。因みに私の傍には役目を終えて満足気なモールが戻って来て――私で暖を取っています。スフィンクスの彼女に日本の冬は厳しいのでしょう。寒さは勿論、乾燥し易い分、お手入れに気を遣うのですよ。これが。
 
 やがて電話が終わり――Zは真っ直ぐ私達の所へ来ると、私とミトンに挟まれていたモールをそっと、抱き上げました。妙に、真剣な表情でした。

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「従業員が欲しいな」短く遅い昼食時間を終え、宮下氏はほっと息をついて呟いた。「しかし、こんな小さな店で働いてくれる従業員ってどこに居るかな」

 ご無沙汰しております。Z家の同居猫、フィドルです。にゃん。
 今日は見回り途中で「らんぽ」に寄ってみたのですが……御主人の宮下氏、少々お疲れの御様子ですねぇ。 
 喫茶「らんぽ」は小さな佇まいの店です。
 人間年齢五十代の宮下氏と、二十代の娘さん――かおるさんとおっしゃいましたかねぇ――のたった二人で切り盛りしているそうですが、かおるさんのケーキが評判だとか。
 ところがそれも良し悪しか、彼女が厨房に籠ってしまうと当然店内の手がご主人一人。そこで先の呟きに至った様ですねぇ。
 然も時期はもう直ぐクリスマス。特別注文も入るらしいですよぉ。
 そんな訳でこの日、バイト募集のポスターが「らんぽ」の店頭に貼り出されました。
 

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 ご無沙汰してます。Z家の同居猫その3、ミトンです。にゃん。
 今日見回りを兼ねて弟の〈しらは〉の居る、喫茶「らんぽ」に行って来たんだ。
 ここ暫く寒くなってきたけど、しらはの所は体毛の薄いあの子に合わせて、もうぬっくぬくのホットカーペットが入ってるんだー。だからちょっと一緒にだらけ……もとい、温もって来ようかなぁって思って。

 いつもの様にお店脇の塀を伝って二階の窓へ。
 その序でに何の気無しにお店を覗いたら、あれ? お姉さんが居ないかも。
 あたしの情報網によれば「らんぽ」の御主人は四十歳で脱サラしてここを始めてもう十年。その間に奥さんを亡くしたらしいけど、今二十三歳の娘さんが一人。その娘さんの作るケーキがここの売りなの。勿論御主人の淹れる紅茶も美味しいらしいんだけどね。あたしは猫だから飲んだ事は無い。
 それともう一つ、ここのお店には本が一杯置いてあるのだけど……何だか今日は本棚が寂しいみたい。お客さんに貸し出してるにしては空きが多い様な……。因みに本の在庫はハードカバーから絵本迄、結構幅広い。ミステリーが多いのは……まぁ、店名から推して知るべしだわね。
 その辺を気にしながらも二階の窓をぺしぺし叩くと、いつもの様にしらはが開けてくれた。

 

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 どうもご無沙汰しております。Z家の同居猫、フィドルです。にゃん。
 今夜は何ですか、七夕とかで、とんぼ堂の店先に笹竹をお飾りするのだそうですよ。うちみたいな大人ばかりの家じゃ、とんとご無沙汰ですが、あそこは未だちいちゃい嬢ちゃんが居ますからねぇ。
 そんな訳で、嬢ちゃん、私達にも短冊を持って来ましてね、一緒に飾ろうって言うんですよ。Zは兎も角、私達――私やワイフのモールと娘のミトン――は筆は使えませんからね、ええ、肉球でぺたっと。お願い事は……内緒ですよぉ。
 後、とんぼ堂に貰われて行った夜護郎は勿論、近所の「らんぽ」って喫茶店に行ったしらはにも、肉球スタンプ貰いに回ったそうですよ。まめな嬢ちゃんですな。
 かくして、古本屋の店先に色とりどりの短冊やお飾りを付けた笹竹が用意されたのです。
 どれ、見回りついでに寄ってみましょうかね。モールに留守番を頼んで……と。

 先ずはご近所周り――モール似のしらはの家は二階の窓から失礼……おやぁ? ミトンが来てますよ? 家に居ないと思ったら……。然も何かお呼ばれしている様です。
 七夕ケーキ猫用? ――しらはが私にも勧めてきました。小さな星型のクッキーが散らされたショートケーキ。勿論材料は猫の健康にも優しい、と。なるほど、喫茶らんぽは手作りケーキが売りなんですが、これは今日だけの特別バージョンという訳ですね。これ、ミトン、美味しいからってがっつくんじゃありません。らんぽの人達には私達が来てる事は内緒なんだから……しらはの分が減っちゃいます。いや、しかし、美味い……え? ぱぱも一杯食べてる? 私とした事が……。
 しらははもう食べ終えて、気に入りの揺り籠で丸まっています。
 ミトンと私がごちそうさまを言うと、しらははふと、顔を上げ、そして言いました――ちょっと相談に乗って貰えるかな? と。
 

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 σ(・_・)は(^・×・^)である。名前は……ってこのパターンは前にやったっけ。
 改めまして、Z家の同居猫、ミトンです。にゃん。

 この間の事なんだけど、とんぼ堂って古本屋に引き取られた兄弟、夜護郎がふらっと訪ねて来たのよ。まぁ、ちょっと見ない間になかなか精悍な黒猫――おでこに白斑アリ――になっちゃって。でも、生憎ぱぱもままも病院に健康診断――あ、只の定期健診だからね、ご心配無く――先に六ヶ月の検診受けてたあたしだけがお留守番してたの。
 何だか相談事みたいだったんで、ミトンが聞こうかって訊いたら「いい」って素っ気無いのよ! それで夜護郎の後に引き取られて行ったもう一匹の行き先を教えてくれだって。連れてって上げるって言ったら、教えるだけでいい……って、何ハードボイルド気取ってんのよ、あの子は!
 当然、直々に連れて行って上げたわよ。あたしだって弟の面倒位見たいじゃない。ぶつぶつ……。

 もう一匹の子――この子も弟なの――が引き取られたのはZ家から余り遠くないあるお家。同居人が喫茶店経営してるから丁度よかったみたい――そんな事を話しながら塀の上、屋根の上を歩く間も夜護郎は殆ど黙った儘。んもう!
 あ、丁度よかったって言うのは、あの子がスフィンクスのまま似だったから。厳密には無毛じゃないんだけど、全体的に薄くて柔らかい。その所為かぽわぽわの綿毛みたいで、何かいつ迄も幼く見えるのよね。だからつい構いたくなって、あたしは時々様子を見に行ってるの。本当はしっかりした子なんだけどね。
 名前は今の同居人が付けたんだけど、しらは。
 漢字で書いたら白羽、白波、白刃――そんなイメージなんだって。確かにふわふわの白い毛は羽の様にも波の花の様にも……。眼は綺麗なアイスブルー。
 でもその薄毛の所為なのか、やっぱりままみたいに余りお日様に当たれないんだって。だからしらはの部屋も、ままの部屋と同じ様に紫外線対策ばっちり。余り出られないのは可哀想だけどね。猫ドアも無いし――でも、スライド窓、しらははあっさり開けちゃうの。だからあたし達の出入りは問題無し。同居人は知らないんだけどね。
 小ぢんまりとした喫茶店「らんぽ」――その二階に、しらはは住んでいる。お店の中は窓から覗いた事しか無いんだけどね、落ち着いた感じで、でも喫茶店にしては本が多かったなぁ。流石に夜護郎の所程じゃないけど。
 その日もあたし達は、しらはに二階の窓を開けて貰った。

「いらっしゃい、ミトン」当然だけど猫語で、しらはは言った。「あれ? ……夜護郎?」
 夜護郎を見て目を丸くする。何ヶ月か振りだものね。あたしがちょくちょく話してたから直ぐに判ったみたいだけど。
「珍しいね。何かあったのかな?」あたし達にクッションを勧め、自分はお気に入りの揺り籠に座を占めながら、彼は訊いた。「もしかして、美夜ちゃんの事?」
「何故美夜の事だと……!?」夜護郎は思わず腰を浮かす。
 でもこれは何の事はない。あたしの情報網とお喋りを舐めて貰っては困る。夜護郎の近況を知っていればこれ迄顔も見せなかった彼が来た訳なんて、しらはには簡単な事ね。種を明かすと夜護郎はバツが悪そうにクッションに身を沈め直した。
「美夜が……鍵を盗まれたんだ」夜護郎は不機嫌な顔でそう言った。
 

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